この記事をまとめると
■旧車オーナーは「オリジナル派」か「カスタム派」で分かれることがある
社長のM3まで惜しみなく公開! 大阪の名門BMW専門店が手がけた「個人車4台」がハイレベルすぎる
■純正パーツを保護するためにあえて社外品にするケースもある
■最近はメーカーなどが復刻パーツなどを再販するケースが増えてきている
オリジナルを取るか利便性を取るか
旧車の世界では「当時、工場からラインオフした状態に近ければ近いほど価値が高い」とみなされます。内外装のコンディションはもちろんのこと「無事故であるか」「当時の塗装のままのノンレストア車両であるかどうか」や「生産時に車体に搭載された”ナンバーマッチングエンジン”かどうか」「取扱説明書や純正工具がそろっているか」も極めて重要なポイントです。
「当時モノ=フルオリジナル」が至高なのはわかるけれど……
明日、現行型マツダ・ロードスターが納車されるとします。ピカピカの新車です。納車時の状態を維持しつつ、手渡された付属品などを捨てずにいれば、20年後にはそれ相応の価値になっている可能性があることを意味します。
しかし、なかなかそういかないのも事実。それだけ「生産時」「納車時」の状態を維持できるクルマが少ないからこそ、数十年後に「奇跡の個体」とみなされ、価値があるとみなされるわけです。クルマである以上、使うことが大前提ですから、「奇跡の個体」はイレギュラーな形で使用(あるいは保管)されたわけです。
探すといろいろある!? やむを得ないカスタム
昭和の時代に作られた旧車を令和の時代に乗るには、多かれ少なかれ「どこまでやせ我慢するか」が求められます。しかし、背に腹はかえられないのも事実。
そこで、可能な限り、できるだけ最小限に抑えたカスタムを行うことになるのです。旧車オーナーを取材していて目に留まったものを含め、いくつかの例を挙げてみました。
ETC
装着率は限りなく100%に近いであろうカスタマイズの筆頭格といえばETC。NEXCO東日本が発表しているデータによると、令和4年11月時点でのETC利用率は93.0%(ETC2.0利用率・30.6%もこの数値に含まれる)に達しています。とくに、左ハンドル仕様の旧車ともなれば、1度この便利さを知ってしまったら元には戻れません。
ETCは必需品ではあるけれど、見えないところに本体を隠しておきたい。そんな旧車オーナーはダッシュボードの奥やグローブボックスの中など、わざわざ見えにくいところに忍ばせているケースも少なくありません。
スマートフォンフォルダ
2021年の時点で、いまや8割の世帯が所有しているというスマートフォン(総務省の統計)。クルマ好きが10人集まったら、ほぼ全員がスマートフォンを使っているとみて間違いないほど、いまやメジャーなアイテムとなりました。
さらに、Google MapやYahoo!カーナビなど、スマートフォンアプリを活用してカーナビ代わりに使っている人も多いはず。パケット通信費と携帯電話の電波が届く範囲であれば、本家カーナビがなくてもこれで充分というくらい使い勝手も良好。ありがたいことに、地図の更新も自動的に行ってくれてしかも無料。便利な世の中になったものです。
これはガラケー時代から続くテーマではありますが「携帯電話を車内のどこに置くか」。それぞれ工夫されていると思われます。なかでも旧車オーナーともなれば「カーナビとして使いたいけれど、スマートフォンフォルダは付けたくない」と考えている人もいます。そこで、マグネットで固定する方式のスマートフォンフォルダを入手するなど、今日も実用と己の美学の狭間で葛藤しているのです。
ドライブレコーダー
煽り運転や当て逃げ、盗難などのトラブル時の映像証拠として認知されつつあるドライブレコーダー。ソニー損保が2022年6月に公開した統計によると、ドライブレコーダーの搭載率は49.3%。この数値はまだまだ伸びそうな気配があります。取材を通じてお会いした旧車オーナーの人たちも「気になるけれど、どうしようか迷っている」というケースが多い印象です。
ETCとは異なり、そもそも存在を隠すことが難しいアイテムでもあります。むしろ「ドライブレコーダーを装置しているぞ!」と周囲に知らせる役目も担っているわけですし……。「運転するときだけシガライターから電源を引っ張ってきて、ちょっとカッコ悪いけれどコードむき出しで使っている」というケースもチラホラ。
ちなみに、筆者の仕事仲間は中古のスマートフォンと市販のクランプを入手して、愛車であるシトロエン2CVに装着。「必要に応じてカメラモードで動画撮影をする”簡易ドライブレコーダー”」として利用しています。ちょっと不便さはありますが、型落ちのスマートフォンを撮影用のカメラと割り切った使い方は、意外と盲点といえるかもしれません。
エアコン
旧車オーナーとクルマにとって苦手な季節といえば夏、猛暑です。周囲のクルマはエアコンをガンガンに効かせて、こちらは窓全開……。一応、市販の小型扇風機もまわしてみるものの、熱風にしかならない(笑)。高温多湿ななかでもエアコンレス(あるいはほとんど効かない)の旧車に乗り、移動しなければならないときは苦行でしかありません。
暑くてもフロントガラスが曇る雨の日でも臆することなく旧車に乗りたい。そういったオーナーのために「汎用のエアコンキット(カークーラーキット)」が存在します。
このキットを装着すればエアコンがガンガンに効くかというと、クルマ側が拒絶反応を示してしまうこともあり……根気強くトラブルシューティングしていくか、徒労に終わってしまうケースもあるようです。
あえて社外品を選んで純正パーツを維持するという方法も
タイヤ
おしゃれは足もとからなんていいますが、これが意外に悩ましい問題。オリジナル志向の旧車オーナーであればなおさらです。……それは「当時モノのサイズのタイヤがない問題」。かつては定番でも、いまや需要が減って絶版になったサイズ、そしてタイヤの銘柄が旧車オーナーにとって悩みどころのひとつです。
もちろん、当時のサイズや銘柄にこだわらなければ、ほかのタイヤで代用できます。しかし、当時の雰囲気を醸し出すには肉厚のタイヤや、独特のトレッドパターンも大事な演出ポイントのひとつ。最近ではタイヤメーカーが復刻させたり、数がまとまると再生産するケースもあるので、オリジナル志向のオーナーにとっては朗報といえそうです。
ヘッドライト
旧車といえば、ヘッドライトが暗い! 現代のLEDやHIDヘッドライトに慣れてしまった身にはなおさらそう感じるものです。夜間やサーキットなどでもガンガン走りたいということで、社外品のハイワッテージバルブや、キセノンヘッドライトに交換する旧車オーナーもいます。
このヘッドライト問題……ほんのわずかな違いではあるのですが、クルマの表情を激変させてしまうことがあります。人もクルマも、目って大事なんですよね。
ダッシュボードカバー
旧車オーナーを悩ます問題のひとつがダッシュボードのヒビ割れ。長年、激しい温度差と紫外線にさらされた結果、経年劣化で割れてしまうのです。ネットオークションなどで当時モノのダッシュボードを入手することもできますが、モデルを問わず需要があるため、また、コンディションの良いダッシュボードが少ないため、コンディションの良いモノは高額取引となってしまっています。
そこで、背に腹はかえられないということで、ダッシュボードに市販のカバーを被せ、少しでも紫外線からの攻撃を避ける必要があります。「あくまでも暫定処置として」。雨の日は乗らないのはもちろん、紫外線が強くなる時期もなるべく乗らない……という旧車オーナーもチラホラ。愛車のことを想うあまり、つい過保護になってしまうんですよね……。
社外シート
純正シート保護のため、あえて社外品のものに交換するオーナーも少なくありません。どれほど丁寧に扱っていたとしても、シート本体の生地と衣類がこすれあうことは避けられません。その結果、破れたり、穴が空いてしまうのです。また、経年劣化に伴い、シートの生地そのものや中身が痛んでしまうこともしばしばあります。
当時モノのシートをリペアするにしても、革や布の生地が手に入らないことが多く、コンディションを維持するなら車体から取り外して保管するのがベストです。ただし、湿気の多い場所に保管するとカビだらけになることもあり、これでは本末転倒です。除湿剤を置いて、適度な湿度を保つことも重要です。
リプロダクション品
メーカー純正のオリジナルがベストなのは知っているけれど、欠品または製造廃止でモノがない。でも、リプロダクション品なら手に入る! ということで代用するケースも少なくありません。いや、リプロダクション品が存在するだけでもありがたい話。それはつまり「需要がある=人気モデル」の証でもあります。
旧車でも、フォルクスワーゲン・ビートルやポルシェ911など、輸入車の一部のモデルは豊富にリプロダクション品が選べる場合もあります。日本車でも、最近では、専門店がリスクを承知で自らリプロダクション品の型を起こし、生産・販売するケースも増えつつあります。この覚悟と企業努力には頭が下がる思いです。
レストモッド
諸説あるようですが「レストア」と「モディファイ」をかけあわせたのが「レストモッド」といわれています。古いクルマをベースに、現代、あるいはベース車の後継モデルなどの部品、デザインテイストなどを盛り込み、独自の解釈で作りあげられた1台です。
内外装をレストモッドしたり、エンジンやトランスミッションなどの機関系を後継モデルなどから流用したり、作り手のセンスとこだわりが問われます。
番外編:EV化
これは究極というか、カスタムというよりも維持・延命させるうえで最後の手段というべきか……。旧車のEV化です。心臓部を内燃機関からバッテリーへと置き換えるのです。日本のみならず、世界各地でこの動きが広がりつつあります。
確かに「ガワ」だけはそのまま。しかし、ボンネットを開けると……。この事実をオーナー自身が「是」と思うかどうか。筆者も1970年製の旧車を所有していますが、個人的にはかなり複雑な心境(お察しください)です。
まとめ:オリジナルでもそれ以外でも現存することが大事
旧車……すなわち絶版車ともいえます。今後、現存する台数が減ることはあっても、増えることはまずありません。コンディションの良い旧車が海外へと流れていくケースも多く、1度、日本を離れた個体が再び帰ってくる可能性は極めて低いといわざるを得ません。
なかにはナンバーを切って、自宅のガレージや庭などで密かに復活の時を待つ旧車もあるでしょう。動体か静態か。オリジナルかそれ以外か。考え方は人それぞれだと思われますが、1台でも多く、後世に残ってくれることを願うばかりです。
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みんなのコメント
使い勝手が悪いところは良くしたい。
フルオリジナルを維持する努力は否定しないけど
それで走るのが苦痛になるなら本末転倒。
まあ気が向かない時は乗らないという選択肢があれば
それが趣味車の理想ですが。
飾っておくだけかお金と時間に糸目をつけないなら
可能かな?