発売から2年で2回の改良を受け「気持ちいい」エンジンに進化
マツダの新世代を担うコンパクトカーとして2019年5月に発売された「マツダ3」。それと同じプラットフォームを用いて、同年10月に発売されたクロスオーバーSUVが「CX-30」だ。この2モデルがもっとも注目されたトピックは、マツダの技術陣が世界で初めてガソリンエンジンでの「圧縮着火」を実用化した「SKYACTIV-X(スカイアクティブ・エックス)」ユニットを与えられたことだ。
【試乗】マツダCX-5を買うならこの瞬間! 最新モデルに乗ったら「圧倒的最良」だった
過ぐる年末年始、「SKYACTIV-X」エンジンを搭載したCX-30の4WD仕様、スタッドレスタイヤ装着車をマツダからお借りして東北地方まで長距離ドライブする機会があった。合計1500kmも走りこんできたので、正直なインプレッションをお届けしよう。
SKYACTIV-X:まったく新しいマツダ渾身の燃焼方式
まず「SKYACTIV-X」エンジンについてごく簡単に説明しておくと、マツダいわく「ディーゼルとガソリンの良いとこどり」。マツダが独自に開発したまったく新しい燃焼方式「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」により、ディーゼルエンジンのような「圧縮着火」をガソリンで実現して燃焼効率をアップ。その結果、ディーゼルの「優れた初期レスポンスと力強いトルク」、ガソリンの「リニアな追従性と高回転までのスムースな伸び」を両立させたというわけだ。もちろん燃費性能の向上やNOx排出量の低減にも効果が大きい。
とはいえ、「X」デビュー直後に「マツダ3」に乗ったときは、上記の説明とは裏腹にアクセル操作へのレスポンスが悪く、もたつき感に当惑したものだ。さすがに改善を求める声が多かったようで、2020年12月の商品改良で「X」の制御プログラムをアップデートし、応答性を改善。すでに「X」搭載車を購入したユーザーにも無償でプログラムを書き換えるサービスが提供されたのだった。
街乗り:飽きのこないデザインで使い勝手も良好
さて、CX-30のサイズは全長4395mm×全幅1795mm×全高1540mm。同じマツダの「CX-3」では手狭だが「CX-5」ほど大きい必要はない、といった、3~4人のファミリーがメインターゲットのクルマだ。兄弟車「マツダ3」の「ファストバック」(ハッチバック)では、後席の乗り降りと頭上空間にやや難があったが、CX-30なら身長173cmの筆者が後席に座っても快適に過ごせる。ラゲッジルームは通常時430Lで、4人で旅行するには必要十分な容量といえる。
「魂動(こどう)」デザインのエクステリアも、ほかの国産車がゴテゴテ余計なラインを増やしがちななか、「引き算の美学」を感じさせてくれて、ボディサイドの優美な造形も好ましい。今回の試乗車のボディカラーは昨年10月に追加された新色「プラチナクォーツメタリック」だったこともあり、自己主張は強くないものの大人の上質感を漂わせる。
この「SKYACTIV-X」エンジン搭載仕様はマイルドハイブリッドを採用していて、発進時の出足は非常になめらか。上述した制御プログラムの改善のおかげで、スーパーの駐車場や住宅街を低速で動くときも違和感なく、周囲の状況確認に集中できる。近年マツダがこだわる自然なペダル位置とともに、不要なストレスを感じないことは、まず第一に安全運転につながる。
ワインディング:あらゆる回転域でレスポンスよく加速
筆者の自宅は小田原市にあり、すぐ近所の箱根~伊豆エリアのワインディングにCX-30を持ちこんでみた。「SKYACTIV-X」のエンジンサウンドは、ディーゼルの「ガラガラ」音に近いがガソリンっぽさもある独特な音。2021年10月の商品改良で吸排気系に手が入り、加速時のエンジンサウンドがさらに強調されている。
走行モードを「スポーツ」に切り替えて高回転域まで回して走ると顕著で、パワーとトルクが低回転域からリニアに立ち上がり、アクセルペダルでのパワーコントロールもしやすい。とくに4000rpm~6500rpmの高回転域でもトルクが衰えずに加速していくのは「SKYACTIV-X」独特のフィーリングだ。
「GVCプラス(G-ベクタリングコントロールプラス)」のおかげで、スムースにコーナーをクリアできるのは近年のマツダ車共通の恩恵。絶対的な「速さ」ではなく「気持ちいい走り」にこだわるのがマツダらしさだ。
高速道路:「カプセル吸音」により想像以上に静か
いよいよ東北地方へ旅に出よう。試乗車は「SKYACTIV-X」搭載で4WDかつ6速AT、車両重量はCX-30のラインアップのなかで一番重い1550kg、燃費もWLTCモード16.6km/Lに留まる。なおかつスタッドレスタイヤ装着なので、燃費についてはあまり期待できない。
小田原を出発して、小田原厚木道路~圏央道~東北道で仙台を目指す。静粛性はこのクラスとしては上々で、高速走行時の回転数はほぼ2000rpm以下のためエンジン音も気にならない範疇だ。前席と後席との会話にも支障ない。
これは、「SKYACTIV-X」エンジンを上部だけでなく、全体をカバーで覆って「カプセル」化して吸音対策を徹底しているため。マツダがディーゼルエンジンの開発を通じてガラガラ音の対策ノウハウを蓄積してきた、その成果が活かされているのだという。
高速道路の区間では、エコランをとくに心がけなくても燃費は15.6km/Lと良好だった。
仙台:ウエットときどきアイスバーン
仙台市内は2日前に雪が降ったあとで、当日は曇りときどき小雨。路肩や歩道に雪が残るものの、路面はウエットだった。
試乗車に装着されていたスタッドレスタイヤは2021年にブリヂストンが発売したばかりの最新「ブリザックVRX3」で、サイズは215/55R18。たまに道の一部がアイスバーンになっている程度の状況では、いささかの不安も乱れも感じさせない。
ただ、市街中心部を離れて、郊外の整備状態が劣悪で凸凹が大きい舗装路にさしかかると、突き上げや横揺れがかなり目立つのが気になった。助手席の人がスマホの文字を読めないレベルだ。CX-30はクロスオーバーSUVとはいえ、地方でデイリーユースする人も当然多い。荒れた路面での乗り心地についてはもっと改善してほしいところだ。
山形蔵王:シャーベットと圧雪のミックス
続いて仙台から山形蔵王まで移動し、本格的な雪景色に。とはいえ山形の市街部もわりと暖かく、仙台と似たような路面状況だったが、蔵王温泉を目指して標高が上がるにつれ、雪が増えてくる。途中、道路のセンターライン側はシャーベット状で、左側は圧雪路、しかも深い轍(わだち)が刻まれているという、地獄のような区間になり、ヒヤヒヤしながら走ることに。
マツダの4WDシステム「i-ACTIV AWD」は、前輪駆動ベースの電子制御多板クラッチ式4WDで、走行状況に応じて後輪トルクを最適に増減させる仕組み(※1月21日訂正)。種々のセンサーで路面の変化をモニタリングしてタイヤスリップを最小化する制御技術は熟成を重ねてきていて、今回のように路面のμが極端に変化し続ける状況であっても頼りになった。それでもほんの一瞬ズルっとなるシーンもあったが、すぐにリカバー。そんな状況では、「SKYACTIV-X」エンジンのアクセル応答性の高さも心強い。
さらに山を登って一面の雪道になれば、「GVCプラス」の恩恵も加わって、自在なスノードライブをしばし満喫できたのだった。
燃費とコスパ:なまじディーゼルも優秀なのが悩ましい
今回の総走行距離は1515.8kmで、平均燃費は13.7kmL。もろもろの条件を考えれば悪くはないのだが、画期的に燃費がいい、というほどでもない。燃費の面ではガソリンとディーゼルの中間に位置しているのが、「SKYACTIV-X」の悩ましいところだ。
なお「X」エンジンの燃料はハイオク「推奨」。レギュラーガソリンを入れても走行可能ではあるものの、マツダの技術陣が味わってほしい出力特性は味わえない、ということ。
CX-30で3種のパワートレインの価格を比較すると、「Lパッケージ」の4WD・6速AT仕様で条件を揃えて、ガソリンの「20S」が303万5000円、ディーゼルの「XD」が330万5500円、そして「X」が371万3600円となっている。
コスパではディーゼルが最強で、しかも困ったことに、マツダのディーゼルエンジンは熟成の極みと言える境地に達しており、加速フィール、レスポンス、スムースさ、静粛性のいずれも、文句のつけようがないのである……。ディーゼルと「SKYACTIV-X」の間の約40万円の価格差は、これから段階的に縮まっていくものと期待したい。
しかし「SKYACTIV-X」でしか味わえないフィーリングと楽しさがあるのもまた事実だ。内燃機関の今後を巡って世界中が右往左往しているいま、ガソリンエンジンのさらなる可能性を追求するマツダの心意気にシンパシーを感じる人は、何はともあれ一度は試乗してみるといいだろう。
マツダCX-30 X Lパッケージのスペック
■CX-30 X L Package e-SKYACTIV X(4WD/6速AT)主要諸元
〇全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1540mm〇ホイールベース:2655mm〇車両重量:1550kg〇乗車定員:5名〇最小回転半径:5.3m〇エンジン種類:直列4気筒DOHC〇総排気量:1997cc〇最高出力:140kW(190ps)/6000rpm〇最大トルク:240N・m/4500mm〇モーター最高出力:4.8kW(6.5ps)/1000rpm〇モーター最大トルク:61N・m/100rpm〇燃料タンク容量:51L〇トランスミッション:6速AT〇燃料消費率(WLTCモード):16.6km/L〇サスペンション 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム〇ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク〇タイヤ 前・後:215/55R18〇車両本体価格(税込み):371万3600円
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みんなのコメント
そもそも、今のマツダは動力性能で選ぶ会社ではないと思う。内外装の異常なコストパフォーマンスに魅力を感じる。
四駆性能も意外と高かった。それにはGVC も影響しているのだろうか。