一部改良を受けたマツダのSUV「CX-5」に今尾直樹が試乗した。進化の具合を評定する。
継続的改良こそブランド価値向上のカギ
フランスの“宝石箱”そのものです──DS 3クロスバックE-TENSE試乗記
マツダのクロスオーバーSUV、CX-5に小改良が加えられ2020年12月3日に発売となった。その試乗会が師走の某日、横浜で開かれたので報告します。
CX-5は国内市場ではCX-30、MAZDA 2に次ぐ広島の先発3本柱の一角にして、グローバルでは販売台数の4分の1を占める不動の4番だ。現行モデルは2017年に登場した2代目だけれど、いいものはどんどん投入する、というマツダの方針に則り、エンジンのアップ・デートほか、すでに数度の改良版が送り出されている。継続的改良こそブランド価値向上のカギだと彼らは考えているのだ。
今回のポイントはふたつ。2019年の販売の62%を占めるディーゼル・エンジンの10psアップと、アクセル・ペダルの踏力をちょっぴり重くしたことだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiマツダによると、これまでのCX-5は街中での発進で加速しすぎてアクセルを戻すような場面がままあった。その原因は、ディーゼル・エンジンのトルク特性とアクセル・ペダルの踏力が合っていないことにある。つまり、軽すぎる。これは“筋の使い方”など、ひとの感覚の研究から判明したもので、具体的にはアクセルの踏力を3Nm重くしている。これによって、加減速のコントロールの精度が上がり、クルマとの一体感がさらに高まった。というのがマツダの主張だ。
用意されたのは、ディーゼル・モデルのFWDとAWDの2種類。外観上の変更はない。内装ではセンター・ディスプレイのサイズを8インチから8.8インチ、もしくは10.25インチに拡大している。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiマツダの「人馬一体」への思い
比較用に旧型もあったので、ちょこっと乗った後で、新型に乗ってみると、なるほどアクセル・ペダルの初期の踏み込みが重くなっている。ドイツの部品メーカー、ヘラーに発注した中国製のこのパーツ、見た目は新旧まったくおなじだけれど、内部のスプリングを強化している。バネひとつで足応えが確実に増し、クルマ全体の剛性感とか重厚感が上がったように感じる。
昔のクルマみたいにアクセル・ペダルの動きがそのままワイヤーでスロットルにつながっているわけではない。CX-5はアクセル・バイ・ワイアで、ペダルの踏力を重くすると同時に、ドライバーにとって、より意のままに走ると感じさせるような制御プログラムに書き変えているのだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui確かに旧型は軽すぎて踏み込みすぎちゃうきらいはなきにしもあらず。でも、人間にはそれを調整する能力があるから、慣れの問題もあるようにも思う。しかるに、それを慣れの問題にしていたら、そこでおしまいである。バネ1個に真摯に向き合うところにマツダの「人馬一体」への思いがある。
2.2リッターのディーゼル・ターボの最高出力は190ps/4500rpmから200ps/4000rpmに、最高出力の発生回転数を500rpm落としつつ、向上している。これにより、高速道路での合流や追い越しでのパワフルな加速を持続的に発揮するのが狙いだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui最大トルクは、450Nmを2000rpmで発生したのち、3000~4500rpmで400Nmから300Nmへと、ほぼ直線的に落ち込んでいたのを、4000rpmで350Nmに持ち上げ、落ちしろを抑えている。こうすることで、上までまわしたときの頭打ち感を消し、伸び感を与えようとしているわけだ。スカイアクティブ-Dが誕生して8年。この間の研究開発の蓄積が緻密な制御を可能にしたのだという。
さらに6速ATは、素早くアクセルを踏み込んだときに、これまでよりも素早くキックダウンするように制御が改良されている。
Hiromitsu Yasuiということではあったのだけれど、師走の横浜近辺は首都高も含めてクルマが多かったこともあって、ディーゼル・エンジンとATの制御の改良ぶりはいまいちよくわからなかった。CX-5の開発陣に確認したところ、今回の改良は100km/h以上ではっきりわかるという。
そういわれて、ハタと思い当たったのが、首都高走行中に、1回だけアクセルを深々と踏み込んだとき、びゅーんと小気味よく加速して、オッと思ったことだ。試乗車の車重は、FWDで1640kg、AWDで1710kgと、同クラスのフツウのセダンより100kgほど重い。それをディーゼル特有の450Nmという大トルクで新旧ともに身軽に走らせるわけだけれど、新型のほうが高速域で胸のすく加速を体験させてくれる。
FWDとAWDの違いは、フル加速時にFWDはさすが450Nmの大トルクで前輪がほんの心持ち暴れる気配があるのに対して、AWDはそれがまったくないこと、そして乗り心地にAWDのほうが、ちょっぴりどっしり感があるぐらいで、ドライブ・フィールに決定的な違いはない。ちなみに国内市場は7割がFWDだという。
Hiromitsu Yasui試乗車はどちらも19インチ仕様ということもあって、低速でちょっとバタつくきらいがあった。その点をCX-5の開発陣に指摘してみると、もうちょっと走れば、こなれて落ち着くはず、という回答だった。
もうちょっとって、1万kmぐらい? とさらに質問すると、5000kmだそうだ。基本的にはしかし、カッコ優先だから致し方ない。乗り心地を重視するひとには17インチ仕様もある。
クルマ好きにとって理想の自動車メーカー
CX-5にはディーゼルのほかに、もちろんガソリン・エンジンがあって、こちらは2.0リッターと2.5リッター、それに2.5リッターのターボの3種類がある。今回の試乗会にはなかったけれど、2.5ターボを除くガソリン・モデルも、ATとエンジンの制御の改善が図られている。
毎年のように加えられる細かな改良がホントにブランド価値を上げるのか? という疑問を抱かれる方もいらっしゃるだろう。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiCX-5におけるグレードの販売比率を聞くと、ある程度それは成功しているように思える。ドア・ミラーとホイールを真っ黒けにした「ブラックトーンエディション」と、2.5ターボとディーゼルにしか設定のない「エクスクルーシブ・モード」2種類の特別仕様がそれぞれ販売の20%ずつを占めているというのだ。つまり、カッコ優先の19インチ仕様を40%の方が選んでいらっしゃる。エクスクルーシブ・モードなんて、ナッパレザーの内装で、かなりオシャレだ。
それと、驚くべきことにマツダは、国内で販売するCX-5にも6MTを設定している。それは販売の3%を占めているという。細かい話ですけれど、ステアリング・ホイールのグリップの形状も、スポーツカーみたいに三角断面になっていて、エンスージアスティックというほかない。
マツダはブランド価値向上への投資として、新世代のラージ商品用の直列6気筒エンジンと縦置きアーキテクチャーを開発していることを公表している。クルマ好きにとって理想の自動車メーカーにマツダはなろうとしているのだ。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
たった3%。間違いなく赤字のハズだが…
その心意気は買う。
ホンダやスバルもやるべきだが合理化に魂を売ってしまった。
小さなメーカーが薄利多売の土俵に乗るとトヨタに食われる。