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クライマックスのTVRグランチュラ(1) 薄肉FRPボディ ル・マン頓挫のクラブマン・レーサー

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クライマックスのTVRグランチュラ(1) 薄肉FRPボディ ル・マン頓挫のクラブマン・レーサー

アマチュア・レーサーを力強く支えたTVR

深刻な財政状況にも関わらず、1960年代のTVRは大胆不敵だった。グレートブリテン島中西部、ブラックプールに拠点を構えた小さなスポーツカーメーカーは、モータースポーツ界での知名度向上を目指し、ル・マン24時間レースへワークス態勢で挑んだ。

【画像】ル・マン頓挫のクラブマン・レーサー グランチュラ Mk2 21世紀のTVRたち 全110枚

最終的には、資金不足で頓挫する。それでも、ワークス仕様のグランチュラが生み出されるきっかけになったことは間違いない。今回は、その1台をご紹介しよう。

新車当時、グランチュラには多様なバリエーションが存在し、アマチュア・レーサーによるモータースポーツ活動を力強くバックアップした。それは、ブランドの熱き魂を象徴するものでもあった。

TVRとして、最初のチューブラー・バックボーンシャシーが開発されたのは1949年。初期のモデルは、フロントにフォード由来のサイドバルブ4気筒エンジンが載り、ステアリングラックは従来的なウォーム&ペグ式で、FRP製の軽量ボディで覆われていた。

公道走行にも対応するスポーツレーサー

シャシーには改良が重ねられ、フォルクスワーゲン・ビートル譲りのトレーリングアームとトーションバーへ、サスペンションがアップデートしたのは1955年。前後とも独立懸架式となり、オープンボディが与えられ、アメリカ市場へ本格的に打って出た。

その後、排気量1098ccで汎用性の高い、コベントリー社製クライマックス・エンジンを採用。同時期にハードトップ・クーペのボディが開発され、1958年にTVR初の量産車と呼べた、グランチュラが誕生している。

シンプルでライトウェイト、ハイパフォーマンスを叶えたグランチュラは、公道走行にも対応するスポーツレーサーを求めたドライバーへ応えた。レザー内装やヒーター、フロントガラス・ウオッシャーなど、公道重視の装備で整えることも可能だった。

ただし、ビートル譲りのサスペンションはロールセンターが高く、サーキットを踏まえるとスプリングは硬くせざるを得なかった。乗り心地は、コース外では褒めにくかった。

キットで販売されたグランチュラ

グランチュラはキットで販売され、当時の英国では新車の購入税を免れることができた。Mk1は、100台程度が生産されたと考えられている。

1172ccで35psを発揮した、フォード・エンジン仕様のお値段は660ポンド。スーパーチャージャーも用意され、望めば56psの最高出力を得られた。予算次第で、1098ccのクライマックスや、1489ccのMGA用エンジンも、届けてもらうことが可能だった。

1961年に、今回の例のようなMk2へ進化。テールラインが僅かに伸ばされ、リアフェンダーが広げられ、ボンネット上にウインカーが追加されている。殆どの技術は継投されたが、エンジンはMGA譲りの1622cc 4気筒が標準に。4速MTもMGから調達された。

ブレーキは、オースチン・ヒーレー 100と同じドラムをリアに採用。フロントはディスクで、ステアリングラックは、モーリス社製のラック&ピニオン式が組まれた。オプションで、1216ccのクライマックス・ユニットとZF社製MTも指定できた。

GT1300クラスへ出場が前提のワークスマシン

グランチュラは堅調に売れたが、TVRの資金繰りは厳しかった。ブランド支持者から支援を受けるなど、多くの方策を経ても抜本的な解決には至らず、創業者のトレバー・ウィルキンソン氏は1962年に引退。彼の抱く野望は、商業基盤の範囲を超えていた。

それでも、直前までウィルキンソンは多くの英国人ドライバーに鼓舞されていたはず。ピーター・ボルトン氏やコリン・エスコット氏などが、クライマックス・ユニットを載せたグランチュラ Mk1で国内イベントを戦っていたからだ。

1960年には、女性のメアリー・ウィーラー氏もTVRオーナーに加わった。5月のヒルクライム・イベントでは、レディースアワードを受賞している。6月にはグッドウッド・サーキットでレースデビューを果たし、3位入賞も果たした。

ル・マン24時間レースへの挑戦が本格化したのは、1961年。当時のGT1300クラスを前提に、4台のワークス・グランチュラが作られている。軽量・高強度なシャシーと、1216ccのクライマックス・ユニット、クロスレシオのMTで。

資金繰りの深刻化でマシンは参戦前に売却

FRP製ボディは、通常より薄肉化。外側のドアハンドルは軽量化で省略され、内側のレバーは細いチェーンに改められた。ホイールは、軽いマグネシウム合金製。アルフィン社製のドラムブレーキが前後に組まれ、ル・マン24時間レースへの準備は整えられた。

ところが経営が深刻化し、参戦には至らなかった。ブランド存続への資金獲得のため、ワークスマシンは会期前に売却された。

購入したのは、レーシングドライバーでTVRディーラーをロンドンで営んだジェームズ・ブースビー氏のほか、ベティ・ヘイグ氏とコリン・エスコット氏。今回のシャシー番号7 C 238の1台は、アーノルド・バートン氏が買い取ったと考えられている。

この続きは、クライマックスのTVRグランチュラ(2)にて。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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