もくじ
ー まさかの雪上での対面
ー 極寒の地で本格試乗前のウォームアップ
ー 実は911よりショート
ー 試作車ながら素晴らしい室内の設え
ー スムーズで安定した走
ー 電子制御デフが高めるコントロール
ー 古典的FRの魅力的なハンドリング
ー アストン マーティン・ヴァンテージのスペック
ー アストン マーティン2018年の新型車一覧
AMG GT 4ドア・クーペにPHEVか 最大816ps、「73」名乗る?
まさかの雪上での対面
路面は雪に覆われ、雪面に立つポールと木々だけがコースを教えてくれる。厚いパウダースノーに反射する朝日と雪の積もった高い松の木が一面に広がっている。フロントガラスに映る景色は美しく穏やかでポストカードのようだ。500psのクルマには似つかわしくないって? まあいいじゃないか。
この厳しい条件でも、われわれのテスト車は非常に良く動いてくれた。氷点下14℃のここはフィンランド北部、北極圏の内側320kmに位置するテストワールド社のコースだ。ハンドリング・コースに入ると、鋭いコーナー、急勾配、意地悪な反った路面が連続している。
これほど滑りやすい日にはアストン マーティンのオーナー達は誰もがレンジローバーで出勤することを選ぶだろう。今まで出会ったアストン・オーナー達は霜が降りたり凍結防止剤を撒くトラックを見かけたりしただけでそうしていた。
しかし、アストン マーティンはポルシェやメルセデス-AMGやジャガーなどと同様に多様な環境に適応できなければならないのだ。これは莫大な距離の耐久テストを高地や熱帯地域やここのような寒冷地でも行うということを意味している。
極寒の地で本格試乗前のウォームアップ
様々な試験を乗り越えた生産開始目前のこのクルマがこの極寒地に適応できることは明らかだ。また、わたしの隣にはそれを誰よりも知るアストン マーティンのビークル・ダイナミクス担当のマット・ベッカー氏が同乗している。
彼によれば、このクルマにオプション設定されるピレリ製ウインタータイヤは今日よりも低い気温の圧雪路で効果を発揮するそうだ。
さらに、このクルマのスタビリティ・コントロールが雪の壁に突っ込むことを抑止してくれる。
われわれが気をつけなければいけないことは、ただ単にそれをオフにしないことだけだ。
われわれは今回、できる限りのことをお伝えしたい。なにしろ数週間後には、2018年に発売される最も魅力的なスポーツカーの1台であるこのクルマをより現実的な気候の公道でテストできるのだから。
実は911よりショート
技術面について、ベッカー氏は賞を取れそうなほど簡潔で快いブリーフィングをしてくれた。その内容はこうだ。
「このクルマはDB11と同等の車幅を持つ一方で、全長はポルシェ911以下です。もし実物がそう見えないとしたら、塗装部門の責任でしょう。シャシーは先代ヴァンテージに対して20kg軽量化しながら、先代比30%、またDB11と比べても10%の剛性アップを果たしました」
「DB11とほぼ同じサスペンションを持ちますが、全く異なるセッティングをしてあります。ステアリング・ボックスも共通ですが、ホイールベースが100mm短くなった影響でステアリングの有効ギア比が上がっています。雪上でも違いを感じられるでしょう」
「搭載されるV8エンジンはDB11と共通ですが、幅広い回転域においてトルクが1kg-m増強されています。サウンドもこのクルマの性格に合わせて再度チューニングしました。このパワーを伝えるDB11と同じトランスアクスルの8速ATにはより賢いGKN製電子制御デフを搭載しています。これにより、横方向の運動を速度域や路面状況を問わずDB11よりも細かく制御できるようになりました。そしてリアサスペンションをサブフレームにリジットマウントしたことにより、リアアクスルの感触をより掴みやすくなりました」
次に、ベッカー氏はわれわれにエンジン音のグラフが描かれたスライドを見せてくれた。これはヴァンテージのユニークなサウンドを説明するものだったが、実際にプロトタイプの始動音を聞けば違いは明らかだ。
確かにDB11のV8やAMG GTとも違う。DBよりも獰猛だが、低音の強調しすぎや、最近流行りの滑稽な演出過多でもない。皆が感心するサウンドだ。
試作車ながら素晴らしい室内の設え
さて、テストワード社のハンドリング・トラックを実際に走る時が来た。ベッカー氏はヴァンテージを電子制御オンでもオフでもいとも簡単に操り、コーナーからコーナーへとドリフトで駆け抜けたのだった。そこで彼はニコッとして運転席から降り、わたしに運転するよう促した。
「1カ所だけ下り坂できついトリッキーなコーナーがあります。そこで何度か事故を目撃しました。ただし、スパイクタイヤを履いているわけではないことを踏まえてスピードを落とせば問題ありません」とのことだ。試乗という役目を忘れて自分のドリフト練習に夢中になる輩がいるようだ。
降りる前に、キャビン内を見渡してみよう。これはプロトタイプであり、いたるところに目隠しがしてあるが、市販型とそこまでかけ離れてはいないはずだ。素材も仕上げも素晴らしい。出来の良いシートはDB11よりもホールド性が高い。
センターコンソールもDB11のそれとは異なっていた。より高い位置にあり、多くのボタンが配置されている。エンジンとシフトのスイッチ類も左腕を自然に下ろした位置に移動された。これらと一緒にインフォテインメント・システムのショートカットボタンや、スタビリティ・コントロールをオフにするボタンなどが用意されている。これらのスイッチ類の再配置により、明らかに操作性が向上した。
DB11と同様に、このヴァンテージもステアリング上のトグルスイッチによってパワートレインや足回りの設定を変更できるようになっている。
左の親指の位置にパワートレインのモード切り替えが、右手側にサスペンションのスイッチがそれぞれ配置されている。
ただし、DB11がGT、スポーツ、そしてスポーツ・プラスの3モードを備えるのに対して、ヴァンテージではスポーツ、スポーツ・プラス、およびトラックの3種類となっている。
スムーズで安定した走り
ベッカー氏はこのクルマのサスペンションがリジットマウントされていることによりDB11よりも騒音が大きくなっていることを認めた。ただし、彼は911やメルセデス-AMG GTよりは静かで、スポーツモードにおいても乗り心地は確保されていると言った。
今日のところは彼の言うことを鵜呑みにするほかない。乗り心地については圧雪路では判断しかねるからだ。しかし、コースを慎重に走るうちに、このヴァンテージが彼の言う通りDB11以上のハンドリングの持ち主であることは理解できた。大理石のように固められた雪の上でも、より軽量なスポーツカーのような回頭性を持ち、扱いにくさは全くなかった。
ステアリングはやや重くクイックだが、より横方向への力を加えられるグリップの高い路面ではまた変わってくるだろう。ハンドルの切れ角も申し分ない。優秀なスタビリティ・コントロールがスロットルを制御してくれるおかげで、こんな路面でもとてもスムーズでハンドリングも落ち着き払っている。
電子制御デフが高めるコントロール
さて、モードを切り替えてみよう。おとなしいモードにしていればスロットル制御も穏やかだが、このV8を本気にさせるにはトラックモードにしなければならないのだ。
ちなみに、このクルマにはオプションのスポーツ・エグゾーストが装備されている。ベッカー氏はわたしにサスペンションをスポーツ・プラスにするように言った。これによりダンパーが引き締まり電子制御デフがコーナリング中の姿勢制御を助けてくれるらしい。よしきた。
「デフが255kg-mのトルクでロックされます。カウンターステアやジャンクションでのトラクションが全く変わります。通常の機械式デフでは51kg-mから102kg-m程度がせいぜいですから」と彼は言った。
限界域におけるハンドリングのバランスはとてもわかりやすく、賢明だ。ESPをオフにしても、ターンインでスロットルを離す際に適切にデフをロックしてくれているように感じられる。そして姿勢を安定させるために再びパワーを加えると、雪上ゆえ48km/hでも徐々にオーバーステアに持ち込むことができる。
リアアクスルが不思議なほどコントロールしやすいのだ。これにはさほど大きなパワーは必要なく、リアデフの繊細なセッティングが重要な役割を果たしている。このあたりに全く欠点が見当たらないのだ。フロントエンジン車としては信じられないほど落ち着いた身のこなしだ。
古典的FRの魅力的なハンドリング
この510psのアストン マーティンは直感的な操作でスライドさせることができる。ただし、簡単かといえばそうではない。雪上ではほんの2cmほどのアクセルの踏みすぎや、3km/hほどのオーバースピードも許されないのだ。実際、わたしも何度か低速でのスピンを経験した。
いくつかのコーナーを通過したあと、ベッカー氏はスタビリティ・コントロールをオンにするよう勧めてきた。なるほど。ESPを切らないことが重要だとさっき教わったのだった。
パフォーマンスカー市場において最も重要なこのセグメントでヴァンテージが先代以上に成功するカギはここにあった。ヴァンテージがどれほど速く、ボディ・コントロールやブレーキがどれほど優れているかはわからない。また、乾いたサーキットで130km/hでのコーナリングが雪上での48km/hと同様にすばらしいかもわからない。ただ、現時点ではあらゆる側面で非常に有望であるように感じる。
なによりも、有力なライバル達がこぞってミドエンジン化した中で、古典的なFRスポーツカーが登場したのは良いことだ。NSXや570SやR8などがいる中で、この昔ながらのV8スポーツクーペが新たなハンドリング・チャンピオンになるかもしれない。これを確かめるのが非常に楽しみだ。
アストン マーティン・ヴァンテージのスペック
■価格 12万900ポンド(1764万円)
■全長×全幅×全高 4465×1942×1273mm
■最高速度 314km/h
■0-100km/h加速 3.6秒
■燃費 9.52km/ℓ
■CO2排出量 245g/km
■乾燥重量 1530kg
■エンジン V型8気筒3992ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 510ps/6000-6500rpm
■最大トルク 69.8kg-m/2000-5000rpm
■ギアボックス 8速オートマティック
アストン マーティン2018年の新型車一覧
DB11 ヴォランテ
われわれはV8のみが設定されるDB11のコンバーチブル仕様を先月海外で試乗し、近々英国でも試乗予定だ。生産はすでに始まっており、納車も間近だ。
ヴァンテージ
先日、ポルトガルでプレス発表会が行われた。われわれの試乗記が4月上旬に掲載される予定だ。もしこれからオーダーするのなら、納車は2019年になるだろう。
DB11 V12 V2:2018年6月頃
ビッグダディことDB11が639psにパワーアップし、シャシーやステアリングにもV8モデルと同様の小変更が加えられる。最高速度は320km/h超となる見込み。
ヴァンキッシュ:2018年7月頃
アストン マーティンで最もパワフルなV12を搭載するフラッグシップが、モデルチェンジによってよりドライバー志向となる。6月下旬の発表が予想され、710psを超える見込み。
ヴァルキリー・プロトタイプ:2018年8月頃
来るべきハイパーカーが秋までにより進化して登場する。生産開始は2019年の見込み。われわれは1146psを発揮するこのクルマを今年中にテストする予定だ。
セント・アサン・プロトタイプ工場:2018年8月頃
アストンの新工場が完成予定。2020年以降ラゴンダ・ブランドのSUVや次期型ラピードが生産される予定だが、プロトタイプ部門のみ今年中に稼働する。
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