今、軽自動車から大型車まですべての市販車で最も重要な機能のひとつが衝突被害軽減ブレーキ(以下、一般慣習にならってここでは「自動ブレーキ」と称す)。
もはやクルマ選びでもこの点は見逃すことはできない。そこで売れ線のSUVを自動ブレーキ性能に主眼を置いて評価してみた。今回は下値が300万円台のクルマ14台をチョイス。
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さぁ、“買い”のSUVはどれだ?
※採点は国沢氏による10点満点での評価
※「対歩行者・遮蔽物あり」試験は独立行政法人自動車事故対策機構が行っているJNCAPの試験のひとつ。大人のダミーと子どものダミーを歩行者に見立てた試験で、結果がHPの動画で公開されている車種は、その動画での試験速度を写真内に赤字で明記した。
※本稿は2018年10月のものです
文:国沢光宏/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年11月10日号
TOYOTA C-HR
価格帯…229万~292万9200円
・クルマ評価……8点
・自動ブレーキ評価……7点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼)
・JC08モード燃費……15.4~30.2km/L
●1.2Lターボ ●1.8L HV
トヨタの新世代プラットフォームTNGAを採用したSUVで基本的にはプリウスに近いクロスオーバーモデル。採用されている自動ブレーキシステムはトヨタではひと世代古いレーダーと単眼カメラを組み合わせた『セーフティセンスP』。停止車両に対するブレーキ性能は問題ないレベルながら、歩行者の検知能力がクラウンやアルファードなどが採用する最新式のセーフティセンスに届かない。
マイナーチェンジでバージョンアップしてくるかどうかは、間もなく行われるプリウスの大幅刷新を見れば予想できると思う。
●対歩行者・遮蔽物あり → 大人30km/h クリア
SUZUKI ジムニー/ジムニーシエラ
価格帯…145万8000~184万1400円
・クルマ 評価……10点
・自動ブレーキ評価……6点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼)
・WLTCモード燃費……13.2~16.2km/L
●658ccターボ ●1.4L直4
コンチネンタル社製の赤外線レーザー+単眼カメラというシステムを使う。2つのセンサーがユニットになっているという低コストで簡単に付けられるシステムのため、トヨタや三菱自動車などさまざまなメーカーが使っている。JNCAP試験をみると性能は停止している車両に対し50km/hで接近して自動停車可能。遮蔽物ありの歩行者も車種によって異なるものの30km/h前後で停止可能(夜間は対応外)。コスパを考えたらまぁまぁです。
ただアダプティブクルコンは組み合わせることができません。
MAZDA CX-3
価格帯…212万7600~306万2080円
・クルマ評価……7点
・自動ブレーキ評価……10点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼夜)
・JC08モード燃費…15.2~23.2km/L
●2L直4 ●1.8L Dターボ
現在販売している国産SUVで最も優れた自動ブレーキシステムを持っているのがマツダ車。評価できるのは車両サイズに関わらず、まったく同じ安全性を持たせていること。いや、年次改良やマイナーチェンジのタイミングですらバージョンアップさせていくため、CX-3より高価なCX-5のシステムのほうが負けていたりする(CX-5も間もなくバージョンアップ)。
CX-3の自動ブレーキ性能は夜間の歩行者対応を含む日本車……、いや世界レベルで評価してもTOPレベルの性能を持つ。
MAZDA CX-5
価格帯…249万4800~352万6200円
・クルマ評価……9点
・自動ブレーキ評価……10点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼)
・JC08モード燃費……14.2~19.0km/L
●2L直4 ●2.5L直4 ●2.2L Dターボ
今年の2月に年次改良を受けたばかりのCX-5ながら、2.5Lガソリンターボ仕様を追加するタイミングで自動ブレーキもバージョンアップさせてくる。内容はCX-3と基本的に同じ。レーダー+単眼カメラを使うモービルアイ社のシステムで、現行型でもJNCAPの試験では停止車両に対する自動ブレーキは安定して50km/hをクリア。遮蔽物あり歩行者も子どもダミー40km/h、大人ダミー45km/hと申し分のない性能を持つ。新しいバージョンは夜間の歩行者も検知できるようになるから素晴らしい!
●対歩行者・遮蔽物あり → 子ども40km/h クリア
SUBARU フォレスター
価格帯…280万8000~309万9600円
・クルマ評価……8点
・自動ブレーキ 評価……8点
・緊急自動ブレーキ の検知対象……クルマ・人(昼)
・JC08モード燃費……14.6~18.6km/L
●2.5L水平対向4 ●2L水平対向4HV
スバルの最新モデルであるフォレスターに採用されているアイサイトver.3は、残念ながらレーザー+単眼カメラを使い夜間の歩行者も見えるマツダのシステムや、シンプルな単眼カメラながらマツダに肉薄する性能を持つ日産、今後SUVにも採用を広げる「月夜の暗さですら歩行者が見えるトヨタのセーフティセンス」に及ばない。
抜本的な性能向上を行いアイサイトver.4に昇華させるのか、トヨタのシステムを導入するのか不明ながら、そろそろアイサイトver.3は限界だと思う。
HONDA ヴェゼル
価格帯…207万5000~292万6000円
・クルマ評価……7点
・自動ブレーキ評価……5点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼)
・JC08モード燃費……19.6~27.0km/L
●1.5L直4 ●1.5L HV
レーダー+単眼カメラのホンダセンシングなのだけれど、ボッシュのシステムを使うCR-Vのホンダセンシングより古い国産メーカー製。この世代は測距精度も低い。私も自分でステップワゴンに乗っていたためわかります。停止している車両に対する自動ブレーキが50km/h対応になっていることのみ合格。
同じ世代のシステムを使っているフィットの場合、遮蔽物ありの歩行者に対する試験を忌避している。おそらく対応できていないということなんだろう。過剰な期待はしないこと。
SUZUKI クロスビー
価格帯…176万5800~214万5960円
・クルマ評価……5点
・自動ブレーキ評価……6点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼)
・JC08モード燃費……20.6~22.0km/L
●1LターボHV
ジムニーとまったく同じコンチネンタル社製の赤外線レーザー+単眼カメラを使ったコスパの高いシステム。クロスビーはJNCAPで試験対象になっており、停止している車両に対し50km/hノーブレーキのまま接近し自動停車している。遮蔽物ありの歩行者も子どもダミーは試験忌避しているが、大人ダミーなら30km/hとコンチネンタル社製のシステムの標準性能を引き出せており合格点。
しかし、夜間の歩行者に対応していないので今後のバージョンアップが望まれる。
●対歩行者・遮蔽物あり → 大人35km/h クリア
MITSUBISHI エクリプスクロス
価格帯…253万2600~309万5280円
・クルマ評価……7点
・自動ブレーキ評価……6点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼)
・JC08モード燃費……14.0~15.0km/L
●1.5Lターボ
アウトランダーPHEVとまったく同じコンチネンタル社製の赤外線レーザー+単眼カメラというシステム。JNCAP試験では停止している車両に対し50km/hで自動停止できるし、大人のダミーに限っていえば遮蔽物ありという厳しい条件で30km/hの停止性能を持つ(子どもダミーは試験忌避しているため確実性が薄いのだろう)。
三菱自動車は日産と部品の共用化を行っているため、次世代のシステムはモービルアイ社になると思う。そのほうが安くて高性能なのでユーザーの利益にもなります。
NISSAN エクストレイル
価格帯…219万7800~309万8520円
・クルマ評価……8点
・自動ブレーキ評価……9点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼)
・JC08モード燃費……16.0~20.8km/L
●2L直4 ●2L HV
プロパイロット付きのエクストレイルに限っていえば、モービルアイ社製の新世代単眼カメラシステムを採用している。JNCAPの試験では同じシステムを採用しているマツダと並んで最もいい成績だった。停止車両に対し車速50km/hでの接近は余裕で自動停止。遮蔽物あり歩行者も、大人のダミーで45km/h。子どものダミーも検知可能になっており40km/hで自動停止するから素晴らしい!
プロパイロットなしのエクストレイルについての自動ブレーキ性能は不明。
TOYOTA ハリアー
価格帯…294万9480~495万3960円
・クルマ評価……8点
・自動ブレーキ評価……7点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼)
・JC08モード燃費……12.8~21.4km/L
●2L直4 ●2Lターボ ●2.5LHV
ハリアーは2013年のデビュー当時、2世代前の自動ブレーキである『プリクラッシュセーフティ』(センサーはあまり精度のよくないレーダーだけ)しか採用されていなかったが、2017年のマイナーチェンジで大幅にバージョンアップ! レーダー+単眼カメラを組み合わせ、歩行者に対する自動ブレーキ機能も加わる『セーフティセンスP』になった。
とはいえクラウンなどと同じ最新式セーフティセンスじゃないため、夜間の歩行者を認識できず、JNCAP試験の遮蔽物ありの歩行者も背の低い子どもには対応できていない。
●対歩行者・遮蔽物あり → 大人35km/h クリア
MITSUBISHI アウトランダー/アウトランダーPHEV
価格帯…266万8680~509万40円]
・クルマ評価……9点
・自動ブレーキ評価……6点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼)
・JC08モード燃費……14.6~18.6km/L
●2L直4 ●2.4L直4 ●2.4L PHEV
システムはトヨタやスズキなどが採用しているコンチネンタル社製の赤外線レーザー+単眼カメラとなる。一般的に電波を使うレーダーでなく赤外線のレーザーを選ぶ理由はコストなのだけれど、アウトランダーPHEVの場合、アダプティブクルーズ用にレーダーも装備している。これだけコストを掛けるなら、日産と同じく単眼カメラ一つで自動ブレーキからアダプティブクルコンのセンサーに使えるモービルアイ社のシステムにすればいいのに。
性能はエクリプスクロスと同じです。
●対歩行者・遮蔽物あり → 大人30km/h クリア
SUBARU XV
価格帯…213万8400~267万8400円
・クルマ評価……9点
・自動ブレーキ 評価……8点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼)
・JC08モード燃費……16.0~16.4km/L
●2L水平対向4
現在スバルがスタンダードとして使っているステレオカメラ式自動ブレーキであるアイサイトは、2014年に発売されたレヴォーグに搭載されたカラーのカメラを使うアイサイトver.3から進化していない。逆に考えれば2014年時点ではダントツ性能の自動ブレーキだったということ。モノクロカメラのアイサイトver.2からアイサイトver.3になった時も視野角は向上させたのだけれど、それでもJNCAPの試験では遮蔽物ありの歩行者に対しては足りない。直近の自動ブレーキ性能評としては「平均レベル」です。
NISSAN ジューク
価格帯…197万5320~346万8960円
・クルマ評価……3点
・自動ブレーキ評価……2点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ・人(昼)
・JC08モード燃費……12.6~18.0km/L
●1.5L直4 ●1.6Lターボ
ジュークのシステムは第一世代のモービルアイ社製単眼カメラから進化していない。日産としても販売台数が少ない車種にゃ投資できないということなんだろう。
JNCAPの試験で停止している車両に対して自動停止できるのは25km/hまで。30km/hで接近すると10km/h程度で追突してしまう。歩行者も検知できると言っているけれど、停止するのは車両ですら25km/h。もちろん遮蔽物ありの歩行者は検知対象外となっている。軽自動車などと同じ簡易式だと割り切って欲しい。いろんな意味で古い。
●対歩行者・遮蔽物あり → 大人35km/h クリア
SUZUKI エスクード
価格帯…234万3600~258万6600円
・クルマ評価……4点
・自動ブレーキ評価……1点
・緊急自動ブレーキの検知対象……クルマ
・JC08モード燃費……16.8km/L
●1.4Lターボ
日進月歩の自動ブレーキ技術からすれば、もはや石器時代といえるレーダー単独のシステム。柔らかい歩行者はレーダー波を反射しないため、当然の如くまったく検知できない。歩行者は最初からターゲットになりません。停止している車両に対する自動ブレーキも、この世代は測距性能が低いためせいぜい25km/hくらいまでしか自動停止しない。
ということで性能は期待せず、気休めだと割り切って欲しい。危険時に警告音が鳴るため、この時点で急ブレーキ掛けるといいです。
自動ブレーキは輸入車より充実している
ここで紹介しているとおり、国産車の場合、高級モデルからコンパクトSUVまで性能の差はあるにせよ自動ブレーキ装着車を選べる。しかし輸入車を見るとまだまだ自動ブレーキ装着車は少ない。例えばランドローバー社の最高峰レンジローバーには自動ブレーキがついているものの、下のクラスのイヴォークは未装着。ポルシェにしてもマカンも未装着だ。その状況を見ると、こと「SUV+自動ブレーキ」に関しては国産メーカーが一歩進んでいると言えるだろう。
* * *
自動ブレーキ性能で10点満点を獲得したのはマツダのCX-5とCX-3の2台。クルマ自体の評価も合わせて総合で16点以上だったのは、上記マツダ2台に加えてスバルのフォレスターとXV、それにスズキのジムニー&ジムニーシエラ…という結果となった(編集部)。
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