■ランドローバーはピュアEVを6モデル投入
イギリスでは、2030年からガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止することが2020年11月に発表された。当初は2040年からであったのだが、段階的に10年前倒ししての全面禁止となった。こうしたイギリス国内での動きに伴い、英国の自動車メーカーも対応を迫られている。
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●脱ガソリン&ディーゼル車を掲げるジャガー・ランドローバー
2021年2月15日、ジャガー・ランドローバーが発表した新グローバル戦略「Reimagine」は、まさしく脱ガソリン&ディーゼル車を見据えて大きく舵を切った内容となっていた。
ジャガー・ランドローバーCEOティエリー・ボロレ氏は次のようにコメントしている。
「ジャガー・ランドローバーは世界の自動車業界において極めてユニークな存在です。他に類を見ないモデルのデザイン、顧客の将来のラグジュアリー・ニーズに対する並外れた理解、感性に訴えかけるブランド価値、英国の精神、そして、タタ・グループの傘下であることで、テクノロジーとサステナビリティの分野において世界をリードする各社との連携ができるという優位性を持ち合わせています。
私たちはこれらの要素をいかして、これからのビジネス、ジャガーとランドローバーというふたつのブランド、そしてカスタマー・エクスペリエンスを再構築していきます。この『Reimagine』戦略により、かつてないほどに独自性を強化し際立たせることができます。それと同時に、当社を取り巻く世界に対し、よりサステナブルでポジティブなインパクトを与えることもできるのです」
では、具体的に新グローバル戦略「Reimagine」を見ていこう。
●戦略の中核となる電動化
ジャガーとランドローバーの両ブランドの電動化で、独自のパーソナリティを明確に持った、別々のアーキテクチャーが採用されることになる。
ランドローバーは、「レンジローバー」「ディスカバリー」「ディフェンダー」の3つのファミリーを通じて、ラグジュアリーSUVにおいて世界をリードし続けるために、今後5年間で6種類のピュアEV(電気自動車)を導入。ランドローバー初となるピュアEVモデルは、2024年に登場する予定だ。
ジャガーは、ピュアEVのラグジュアリー・ブランドとして生まれ変わるべく、2020年代半ばまでにブランド再生が実行される。そのため、現在モデル末期「XJ」の後継モデルの開発は、一端白紙に戻されることになった。
2030年までにそれぞれのブランドでピュアEVを投入し、ジャガーでは100%、ランドローバーでは約60%が、ピュアEVとなる予定だ。
また、2039年までに、サプライチェーン、製品、オペレーションのすべてにおいて排出ガス量を実質ゼロにすることを目標としており、その一環として、水素経済の成熟に伴い、クリーンな燃料電池の準備も進められている。これは長期的な投資プログラムとしておこなわれ、開発はすでに進行中とのこと。今後1年以内にプロトタイプが英国に到着する予定だ。
ジャガー・ランドローバーでは、ラグジュアリー業界を取りまく環境、社会に与えるインパクトの新たなベンチマークをもたらすサステナビリティが、「Reimagine」戦略の成功には不可欠な要素と捉えており、この戦略を進める中心的な新たなチームを結成。マテリアルをはじめ、エンジニアリング、マニュファクチャリング、サービス、循環型経済への投資における先駆的なイノベーションを構築し、推し進めていく意気込みだ。
そのため、すでに年間約25億ポンドの投資をコミットしおり、このなかには、電動化テクノロジーやコネクテッド・サービスの開発も含まれている。オーナーシップ・エコシステムをさらに向上させるデータ集約型テクノロジーとあわせて、カスタマー・ジャーニーおよびエクスペリエンスをよりよいものにしていくのが狙いだ。
■ジャガーはピュアEVのみとなる
「Reimagine」戦略では、適正規模、目的、編成を見直し、ラグジュアリー業界において品質と効率性における新たなベンチマークのスタンダードの確立が掲げられている。この取り組みの中核であり、ジャガーとランドローバー、ふたつのブランドの異なるパーソナリティを明確にしていくのが、新たなアーキテクチャー戦略である。
●新たなアーキテクチャー戦略
ランドローバーでは、Modular Longitudinal Architecture(MLA)を積極的に活用していく。これにより将来の製品ラインナップの進化に合わせ、電動化された内燃機関(ICE)やフル電動化のバリエーションに対応していく。さらに、ピュアEVに特化したElectric Modular Architecture(EMA)も使用し、先進的な電動化ICEをサポートする。
ジャガーのモデルは、将来的にピュアEVアーキテクチャーのみとなる。
また、「Reimagine」戦略には、簡素化(シンプル化)の実現も含まれている。具体的には、工場ごとに製造されるプラットフォームとモデルの数を統合することで、ラグジュアリー業界の効率的な規模と品質の新たなベンチマークのスタンダードを確立することだけでなく、調達の合理化や、地域循環型経済のサプライチェーンへの投資を加速させることも可能となるからだ。
英国ウェストミッドランド州ソリハルは、MLAアーキテクチャーを製造するとともに、今後、ジャガーのピュアEVのプラットフォームの製造拠点にもなる予定だ。
* * *
タタ・サンズ、タタ・モーターズおよびジャガー・ランドローバーの会長であるN・チャンドラセカラン氏は次のように述べた。
「『Reimagine』戦略によって、タタ・グループのビジョンやサステナビリティにおける優先事項との調和を図りながら、ジャガー・ランドローバーは目標の達成に向けて大きく加速します。同時に、ジャガーはその可能性を示し、ランドローバーは時代を超越した魅力をより一層強化し、両ブランドがお客様や社会、そして地球にとって責任ある企業の象徴となれるよう支援していきます」
また、ティエリー・ボロレ氏は最後に、次のようにコメントした。
「人を中心に据えた企業として、ジャガー・ランドローバーは単にモダン・ラグジュアリーを再定義するだけでなく、ジャガーとランドローバー、それぞれのブランドを再定義するという明確な目標を掲げ、スピード感を持って前進していきます。
ブランドは、感性に訴えかけるユニークなデザイン、いうなれば芸術作品のようなものです。すべてのモデルにコネクテッド・テクノロジーや責任ある素材を備えることで、オーナーシップの新たなスタンダードを確立します。私たちは、デザインによって新たなモダン・ラグジュアリーを再構築していくのです」
EV化へのシフトやゼロエミッションへの取り組みが早急に迫られている世界の自動車メーカーのなかで、ジャガー・ランドローバーがどのようにして生き残りをかけていくか、今後に注目である。
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