2022年3月29日(英国時間)、イギリスの名門自動車メーカーであるロータスは、オールエレクトリックのSUV「エレトレ」を、ワールドプレミアした。ロータス初のSUVであり、販売は米国/中国がメインでスタートする計画という。
これまでライトウェイトスポーツカーをひたむきにつくってきたロータス。そのロータスが、「遂に電動化、しかもSUV」となると、クルマ好きとしてはいろいろ考えさせられるところがある。コードネーム「Type132」こと、エレトレの概要を紹介しよう。
ロータスもついにSUV投入へ! コードネーム:Type132「エレトレ」とは一体何者か!?
文/吉川賢一
写真/LOTUS
■ライトウェイトスポーツからの脱却を図るロータス
日本では、1970年代にヒットしたカーレース漫画「サーキットの狼」に登場した「ロータスヨーロッパ」、もしくは、1990年代半ばに誕生した「ロータスエリーゼ」が広く知られているロータス。
背が極端に低く、非常にコンパクトな2ドアクーペやカブリオレは、思わず目を奪われてしまう存在感がある。筆者は、かつて住んでいた場所で、近所にロータスエリーゼで通勤している人が住んでいたことがある。毎朝、いい音を鳴らしながら走り抜けるのを羨ましく見ていた。
ロータスが誕生したのは、いまから70年以上も昔の1949年ごろ、イギリスのノーフォークを拠点として、発明家でありF1ドライバーでもあったコリン・チャップマン氏によって創立されたメーカーだ。
チャップマン自身がレースで使用するマシンの開発製造から始まったロータスは、ときには大手ワークスを打ち負かすなど、レースでの活躍を機に知名度を上げ、高性能なライトウェイトスポーツカーを得意とする自動車メーカーへと成長していった。
紆余曲折あり、2017年からは、中国の自動車メーカー「吉利汽車(Geely Automobile)」の傘下となったが、かつてのまま、エリーゼ、エキシージ、エヴォーラといったライトウェイトスポーツカーを製造販売してきた。
だが2021年12月、ロータスはこの3台の生産を終了すると発表。既存の製造ラインは入れ替えられ、ロータスが「エンジン車の集大成」とする新型モデル「エミーラ」用へと生まれ変わるという。エミーラの生産開始は2022年春以降であり、日本での発売時期は未定だ。
ロータスはさらに、70kWhのバッテリーを備え、4モーターで最大出力2000ps、最大トルク1700Nmという、怪物級のバッテリーEV「エヴァイヤ」というハイパーカーも開発中とのこと。130台限定で年内には生産開始するそうで、こちらもかなり気になる。
ロータスのエンジン車の集大成「エミーラ」は、405ps を発生するスーパーチャージャー付き 3.5L V6エンジンを搭載。日本初導入となる「First Edition」は1353万円
■最高出力は608馬力、0-100km加速は3秒以下のハイパーSUV
ロングホイールベース、前後ショートオーバーハング、極端に狭いサイドウィンドウ高さ、SUVにしては短いボンネット長など、かなり大胆なデザインをしている「エレトレ」。
ボディサイズは、全長5103×全幅2135×全高1630mm、ホイールベース3019mm。長くて幅広く、ペッチャンコなスタイリングで、ロータス自身も、SUVというよりもハイライディング・スポーツカー(背高のスポーツカー)という呼び方をしているほど、ギリギリSUVといえるスタイリングだ。
エレトレは、ロータス史上初となるスポーツカーセグメント以外のモデルとなる。フロントデザインは、エミーラやエヴァイヤの系譜を受け継ぐ
ちなみに短いボンネットデザインは、ロータスの象徴であるミッドエンジンレイアウトのスタイリングを踏襲しているそうだ。もちろん、ミドシップではないのだが。
エレトレは、最新のロータススポーツカーである「エミーラ」の魂と、バッテリーEVハイパーカー「エヴァイヤ」の革新的なエアロパフォーマンスを取り入れた「ハイパーSUV」として開発されている。
駆動方式は4WD、100kWhを超えるバッテリー容量と、最大出力は608ps(600hp)を達成。最高速度は260km/h、0-100km/h加速は3.0秒以下。350kW供給が可能な充電器を使えば、400kmの航続距離をわずか20分で充電可能。満充電での航続距離は約600kmを目標としている。
■ボディ全体でエアロダイナミクスを稼いだ秀逸なデザイン
フロントまわりの黒い部分は、すべてカーボンファイバー製、ボディパネルはアルミニウム製となる。ロータスが「ポロシティ」と呼ぶ、ボンネット上部に空いた2つの穴は、ここから空気を排出し、車の上側へと空気を流して、空気抵抗を下げ、航続距離やダイナミクスを改善するという。
フロントホイールアーチの前方や後方、リアホイールの後方、Dピラーの上部には、中央部をカットしたフローティングピラーを導入している。
このフローティングピラーは、ガラス付近を流れる気流を、アクティブテールゲートスポイラーに導き、高速走行時には自動的に展開される仕組みとなっている。しかも、ドライビングモードに応じて、3つの角度に可変だという。
全体的なエクステリアとインテリアは、英国ウォリックシャーに拠点を置く国際チームによってデザインされた
また、空気抵抗を低減するデザインが埋め込まれた、カーボンファイバー混入の23インチのマシンカット分割仕上げ5スポークアロイ、セラミックコンポジット10ピストンキャリパーブレーキがオプションで設定されている。
巨大なボディを駆使して、ボディ全体でエアロダイナミクスを稼ぎ、航続距離を伸ばす、流行の最先端をいく秀逸なデザインといえよう。
一⽅だけで固定されているカーボンファイバー製 のフローティングスプリットルーフスポイラーが特徴的だ。中央部をなくすことで軽量化を図り、LIDAR センサーをガラス上部に配置している
インテリアも、一瞬戸惑うほど先進的だ。ドライバー前方にあるメーター表示計などのインストルメントクラスターは、わずか高さ30mmほどのスリムサイズ。
主要車両情報とトリップ情報が表示される。また、15.1インチのランドスケープインターフェイスは、不要な場合には自動的にフラットに折りたためるという。それ以外の必要な情報は、標準装備となる拡張現実(AR)技術を搭載したヘッドアップディスプレイを介して得ることができるそうだ。
LIDAR(光による検知と距離測定)技術を世界で初めて採用しており、自律走行も可能だというエレトレ。アクティブフロントグリルや、カメラ式サイドミラーも設定されるそうだ。
ドライバーを重視したエレトレのコクピット。従来の 5 シートのレイアウトと同様
に、4 つの独⽴シートレイアウトも選択可能
■価格は1500万円級か!?
最新鋭のコネクティッド機能も満載だ。5Gを含む最新の接続テクノロジーをもち、スマートフォンアプリを介して、OTAによるソフトウェアの更新が可能となる。
エレトレの車両価格はまだわかっていないが、エミーラが約1350万円であることを考えると、おそらく1500万円級にはなるのだろう。ちなみにハイパーカーのエヴァイヤは、3億円にもなるといわれている。
動的なパフォーマンスの高さだけでなく、最新装備の数々を満載してきたエレトレ。かつてのロータス車のファンがどれほどついてこれるのかは疑問だが、新規顧客を獲得する方向へと舵を切ったのだろう。エレトレは、2022年後半より、中国に完成した新たな工場にて生産開始の予定。登場が楽しみだ。
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もうそろそろ世間は飽きてきたんじゃないの?