今年を象徴する車を決める「日本カー・オブ・ザ・イヤー 2021-2022」が、2021年12月10日に決まる。そして、その大賞受賞車の発表を前に、例年通り「10ベストカー」が発表された。
入選した10車はどれも優れたモデルだが、いっぽうで惜しくも選外となった新車のなかにも、地味ながら高い実力を秘めたモデルがある。
これはいい……絶好調アクア、その強さの理由は走りと燃費と手頃な価格
本稿では、いまひとつ注目されず「10ベストカー」から漏れた新型車のなかから5台をピックアップして隠れた佳作たちを取り上げたい。
文/渡辺陽一郎、写真/SUZUKI、TOYOTA、HONDA、MAZDA
[gallink]
■スズキ ソリオ
スズキ ソリオ。現行型で安全装備と運転支援機能を進化させ、荷室も拡大。ライバルのトヨタ ルーミーよりも商品力は高い
筆頭はソリオだ。全長は3790mm、全幅は1645mmに抑えられ、全高は1745mmと高い。空間効率は抜群だ。
ソリオはもともとワゴンRのワイド版だったが、2010年に発売された2代目からは、後席側にスライドドアを装着する独立した車種になった。2015年登場の3代目でプラットフォームを刷新させ、2020年の現行型は荷室を拡大させて安全装備と運転支援機能も進化させた。
軽自動車のスペーシアを拡大したようなクルマだが、小型車用のプラットフォームが熟成され、走行安定性と乗り心地のバランスが良い。直列4気筒1.2Lエンジンも、パワフルではないが運転しやすい。
2021年1~11月の登録台数は、月平均で約3400台だ。コロナ禍によってパーツの供給が滞っている状態を考慮すると、売れ行きは堅調といえるだろう。
ちなみにソリオのライバル車はトヨタ ルーミーで、2021年1~11月の登録台数は1か月平均で約1万1400台だ。ルーミーはソリオの3倍以上売られるが、商品力は下まわる。ルーミーは、N-BOX、スペーシア、タントといった軽自動車のスーパーハイトワゴンに対抗すべく、大急ぎで開発されたからだ。
しかもルーミーの発売は2016年と古く、今では走行安定性、操舵感、乗り心地、ノイズ、直列3気筒1Lノーマルエンジンの動力性能などに不満が伴う。ルーミーを購入する時は、ソリオにも試乗して商品力を客観的に判断したい。
■トヨタ アクア
アクアはコンパクトなハイブリッド専用車だ。2011年に発売された先代型はヒット作になり、2021年7月に2代目の現行型へフルモデルチェンジされた。先代型からの乗り替え需要も多い。
そのために2021年8月の登録台数は9442台、9月は1万1137台に達した。生産の滞りで10月は7643台、11月も7251台だが、販売ランキングの上位に位置する。
いっぽう、ヤリスはアクアと共通のプラットフォームを使ってハイブリッドも用意され、1Lと1.5Lのノーマルエンジンも選べる。ヤリスのグレード構成はアクアよりも豊富だが、登録台数(ヤリスクロスとGRヤリスを除く)は、9月が5800台、10月は4980台、11月は5100台であった。
ヤリスの発売は2020年2月だから新車としての目新しさは薄れたが、そこを考慮しても、登録台数は前年の40~60%と落ち込みが大きい。アクアがヤリスの需要を奪った。
両車の商品力の違いは、アクア「Z」とヤリス「ハイブリッドZ」を比べるとわかりやすい。アクアはヤリスハイブリッドに比べてホイールベースが50mm長く、後席の足元空間にも余裕がある。インパネ周辺なども上質だ。
動力性能は同程度だが、駆動用電池の違いによって実用域の駆動力はアクアが少し上まわり、ホイールベースも異なるから走行安定性と乗り心地もアクアが優れている。峠道の軽快な運転感覚や街中での取りまわし性はヤリスハイブリッドが勝るが、総合的にはアクアが魅力的だ。
2WDの価格はアクア「Z」が240万円、ヤリス「ハイブリッドZ」は232万4000円だ。アクア「Z」は7万6000円高いが、ヤリス「ハイブリッドZ」にオプション設定される100V・1500Wの電源コンセント(4万4000円)とアルミホイール(8万2500円)を標準装着した。
この2つの装備をヤリスハイブリッドZに加えて装備水準を合わせると、アクアZが割安になる。従ってアクアZは、トヨタのハイブリッドの中で一番買い得だ。
■ホンダ シビック
ホンダ シビック。売れ行きの面では好調とはいい難いが、運転すると良さが分かる。価格の割高感がネックか
現行シビックは2021年9月に発売。月販目標は1000台で、10月の登録台数は1218台、11月は933台であった。好調な売れ行きとはいえないが、シビックはクルマ好きの間で認知度が高い。
エンジンは直列4気筒1.5Lターボで、動力性能は2.4Lのノーマルエンジンと同程度だが、走行安定性は高水準だ。機敏に曲がる印象はないが、操舵角に応じて車両が正確に反応して、特に後輪の接地性が高い。
そのために高速道路の直進安定性が優れ、下り坂のカーブで危険を避けるような操作も安心して行える。長距離を安全に移動したいユーザーに適したクルマだ。
ただし先代型から流用した18インチタイヤの影響もあり、乗り心地は硬く感じる。段差を通過した時の突き上げ感は抑えたが、路上の細かなデコボコを伝えやすい。内外装は上質だが、華やかな印象はない。このあたりで好みが分かれる。
価格は「LX」が319万円で、カーナビなどを標準装着したものの、高めの設定だ。ハイブリッドのe:HEVを搭載するインサイト「LX」の335万5000円に近い。運転すると良いクルマだが、地味な雰囲気と割高な価格が販売の妨げになっている。
■ホンダ N-ONE
2021年1~11月に国内で新車として売られたクルマのうち、軽自動車が37%を占めた。そのなかの軽乗用車に限ると、50%以上がスーパーハイトワゴンだ。全高は1700mmを上まわり、スライドドアを装着して子育て世代を中心に人気が高い。
このトレンドのなかで、N-ONEは2020年11月にフルモデルチェンジを受けた。全高は1545mm(2WD)に収まり、スライドドアも装着されていない。
しかもN-ONEは、フルモデルチェンジをおこなってプラットフォームを現行N-BOXと同じタイプに刷新しながら、ピラー(柱)、ルーフ、ドアパネルといったスチール部分を先代型と共通化した。つまり外装はフロントマスクなどの樹脂部分だけを変更する異例のフルモデルチェンジとなった。
開発者は「スチール部分まで変更することも考えたが、N-ONEらしさが薄れてしまう。コストの低減も考えて、最終的には先代型と共通化した」という。
もともとN-ONEは、1967年に発売されたN360をモチーフにデザインされたので、フルモデルチェンジにも制約が伴う。ボンネットとルーフをさらに低く抑えると、外観を今以上にN360に近づけられるが、それは難しい。
Nシリーズのエンジンは室内長を限界まで伸ばすため、補機類を含めて縦長に造られているからだ。Nシリーズで開発する以上、ボンネットを低く抑えることはできない。そうなると外観は変えようがなく、スチール部分を先代型と共通化した。
この事情は分かるが、外観が先代型とほぼ共通で変化も乏しいと、マイナーチェンジに見えて売れ行きを伸ばすのは難しい。
しかもN-ONEは価格も高めで、6速MTを選べる最上級の「RS」は199万9800円だ。広い室内、電動スライドドア、多彩なシートアレンジなどを備えたN-BOX「カスタムLターボ」の196万9000円を上まわる。
そのためにN-ONEを発売した時の販売計画は月2000台だったが、2021年1~11月の届け出台数は、発売直後なのに約1800台に留まる。
その代わりN-ONEは、軽自動車としては運転感覚が上質だ。ステアリングの手応えに曖昧さがなく、正確に反応して運転が楽しい。6速MTの操作感も良好だ。直進安定性も優れ、高速道路を使った長距離の移動にも適する。価格と同様、走りの商品力もコンパクトカーに近い。
■マツダ MX-30 EV
マツダ MX-30 EV。意欲的なデザインと電気自動車という先進性は評価が高いが、観音開きドアという凝った作りが幅広いユーザー向けとはいえなかったか
MX-30は、直列4気筒2Lのマイルドハイブリッドを搭載して2020年10月に発売された。この時の販売計画は月1000台であった。2021年に入って電気自動車のEVモデルも加えたが、2021年の月平均登録台数は半分以下の約430台だ。
もともとMX-30は「今までの(スポーツ指向だった)魂動デザインでは満足できないお客様に選んでいただきたい」という思いで開発された。そのために従来のマツダ車と違って、外観は水平基調で側方や後方の視界も良く、内装にもコルクを使うなどリラックスできる雰囲気に仕上げた。
特にEVモデルの静かな走りは、MX-30の世界観と雰囲気に合っていて「もっと長く乗っていたい」と感じさせる。
しかし、SUVのボディに乗降性の悪い観音開きのドアを採用するなど、凝った造りにしたから、肝心のリラックス感覚や心地よさがユーザーに伝わりにくい。
「今までの魂動デザインでは満足できないお客様に選んでいただきたい」なら、かつてのベリーサのように、少し背の高いコンパクトカーとするなど従来とは明らかに異なる親しみやすいクルマ造りをするべきだ。せっかくの高い志が市場で評価されないのはもったいない。
[gallink]
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
ついにその瞬間がやってきた!!!!! シビックベースの70年代風GTカー[ミツオカM55]が限定100台800万円で販売!!!!! 即売必至か?
マジか…? 新制度導入で「車検」通らないかも!? 10月から始まった“新たな車検”何が変わった? 覚えておきたい「OBD検査」の正体とは
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
ついにトヨタ「新型セリカ」復活!? 次期8代目登場か… 中嶋副社長「セリカ、やっちゃいます。」宣言! 会長も後押し!? ラリージャパンで語られたコトとは
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
レクサス新型「小型スポーツカー」がスゴい! “テンロクターボ”×初の6速MTを搭載! 最小SUV「LBX MORIZO RR」どんなモデル?
「タイヤの摩耗が早い」「買い取り価格は期待できない」EVにまつわる巷のウワサ6つの真実
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
もしも、トヨタの販売網で販売していたならルーミーよりも売れると思います。
あんなの、出来レースでしょ。