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【試乗】フォルクスワーゲン ポロ TSI Rラインは小型車に求められるものを真摯に磨き上げている

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【試乗】フォルクスワーゲン ポロ TSI Rラインは小型車に求められるものを真摯に磨き上げている

最新型パワートレーンを搭載したポロのニューグレード、ポロTSI Rラインがデビューした。「1.5TSI エヴォ」と呼ばれる新エンジンは、今後の主力機種となる存在だ。懐かしのゴルフIIとともに、さっそくそのハンドルを握ってみた。(Motor Magazine 2019年3月号より)

最新の1.5TSIを初搭載しスポーティな装いでデビュー
かつては自他ともに認めるコンパクトカーのベンチマーク、ゴルフの弟分というイメージが強かったポロだが、その存在感は代を重ねるごとに強固なものとなり、今や自らのポジションを、しかと固めているように見える。端的に言えば、ゴルフではなく、進んでポロを選ぶ人が増えてきている。そんな印象は強い。

えっ! ナンバープレートに、アルファベットが入っているのはなぜ?【くるま問答】

昨年、日本での販売を開始した新型ポロは、その意味ではまさに正常進化を果たしたモデルだ。ボディサイズは、日本の5ナンバー枠を飛び越えて全幅は1750mmに達した。全長も伸ばされ、従来不満だった後席スペースが大人2名にも十分なレベルまで拡大されている。いよいよもって「ポロで十分」と思わせるものになった。

一方でエンジンは、従来型の直列4気筒1.2Lターボユニットからダウンサイジングが敢行され、直列3気筒1Lターボユニットが新たに搭載された。ラインナップはこのパワーユニットを積むTSIトレンドライン、TSIコンフォートライン、TSIハイラインに加えて、2Lターボユニット搭載のGTIも用意される。

そこへ新しく登場したのが、新開発の直列4気筒1.5Lターボエンジンを搭載するTSI Rラインである。“1.5TSI Evo (エヴォ)”と呼ばれるこのエンジンは、EA211エンジンファミリーの最新作となる。コモンレール式直噴システムの高効率燃焼、気筒休止機構のACT(アクティブシリンダーマネージメント)の搭載、さらには7速DCTへのコースティング機能の設定などで、最高出力150ps/最大トルク250Nmの高性能と、JC08モードで17.8km/LLの優れた燃費を両立させる。

実はこのエンジンは現行型ゴルフのフェイスリフト時に本国で発表されたものだが、日本仕様には採用されなかった。よってこのポロTSI Rラインが1.5TSIエヴォの日本仕様初搭載となる。

このモデルにはRライン パッケージが組み合わされる。専用装備は、まず外観では前後バンパー、リアスポイラー、サイドスカートに5スポークの17インチアルミホイールと215/45R17サイズのタイヤ。内装は、オプションのエナジェティックオレンジメタリック、あるいは今回の試乗車が纏っていたリーフブルーメタリックのオプションカラー選択時にダッシュパッドとセンターコンソールがボディ同色になり、またTSIハイラインと同じスポーツコンフォートシートにも同色のラインが入るという程度。装備の面で目新しいのはドライビングプロファイル機能が備わることぐらいだ。

走りの面ではタイヤ&ホイールの他にスポーツサスペンション、“Sport Select”シャシ付きスポーツパフォーマンスキット、リアディスクブレーキ、電子制御式デフロックのXDSなどが新たに装着される。充実の先進安全装備は、TSIハイラインに準じた仕様だ。

1.5TSIエンジンは十分な力感で余裕ある走行を披露
予想どおり、走りには格段の余裕が生まれた。これまでの1.0TSIエンジンは排気量が小さいためアイドリング付近のトルクが薄く、立ち上がりで一瞬もたつく感があるが、この1.5TSIは右足を踏み込むとスッとクルマが前に出る。おかげでアイドリングストップ状態からの発進もスムーズになり、1.0TSI最大の弱点は払拭されたと言っていい。

まだ走行距離500km超という降ろしたての状態だったことは加味する必要があるが、エンジンの回り方は全体に硬質な印象で、率直に言ってそれほど滑らか、スイートではない。その分、燃焼効率が良いのかな、と前向きに考えながら走らせていく。

その効率をさらに引き上げるべく採用されたACTは、アクセルオフなどで負荷が下がると即座にエンジンを2シリンダーモードへと切り替える。ショックなどはないが、アクセルペダルに右足が乗っているとほんのわずかに振動感があるのは気になった。また、ドライビングプロファイル機能でエコモードを選択すると、アクセルペダルオフ時のコースティングも働いて、まさにわずかの無駄も許さない。このコースティングからの復帰も非常に滑らかだ。

力感は十分だが、アクセルペダル操作に対するレスポンスは、さほど鋭くはない。にわかに活発さを増してくるのは4500rpmを過ぎたあたりからで、その先ではさらにパワーの伸びを感じさせながら6500rpm手前まで伸びる。とは言え、基本的には地力の余裕を活かして走らせる方が合っているという印象である。

燃費は高速道路と一般道、3:2ぐらいの割合で走って1L当たり15km台だった。カタログ燃費値に近いことは褒められるが、このセグメントでハイオク指定と考えると「もうひと声」と言いたくなる。

大径タイヤ&ホイールの割に乗り心地は悪くなく、走りはしなやか。もちろん相応にバネ下は重くなっているから荒れた路面では暴れる感じもあり、もう少しダンピングを強めても良さそうだ。操舵系の効きも良く、コーナリングも素直。特筆するような刺激はないが、気持ち良く走る。それでも、TSIハイラインの16インチ、あるいはその下の15インチを履かせてみたいという思いも残る。

それにしても、余裕綽々である。アクセルペダルを深く踏み込まなくても悠々走り、室内も広くて快適。確かに「これならゴルフは要らないかも……」という思いも、頭をもたげてくる。もっともポロTSI Rラインのボディサイズは全長がTSIハイラインより15mm伸びて4075mm、全幅が1750mm、全高が1450mmに達している。もはやゴルフIIIよりも大きくなっているのだから、その印象も半ば当然かもしれない。

今に繋がるゴルフIIの質実剛健ぶり、最新のポロにもそれは感じられる
今回一緒に連れ出した筆者所有の1990年式ゴルフII CLiなど、全長3985×全幅1665×全高1415mmでしかないのだから、ポロも立派になったものである。

サイズの差は想像していたとおりだが、個人的にはそれ以上にデザインの違いに改めて驚いた。水平基調で端正なゴルフIIと較べると、ポロは明確なウェッジシェイプでAピラーが寝ていて、キャビンも上すぼまりのコンパクトな形状とされている。ライバルと較べたらいまだ真面目、質実剛健というイメージのフォルクスワーゲンだが、過去に較べれば格段にスポーティに変身していた。

もちろん、それは空力性能や安全性確保といった要請に拠るものでもある。ゴルフIIの時代にはそのあたりはさほどシビアではなく、それより空間設計の方が重視されていたということだろう。実際、室内は非常に広く、荷室などはポロよりも広いくらいである。

走りっぷりも、やはり実直そのもの。1.8Lエンジンは実用域のトルクが分厚く、ダイレクト感のある3速ATとのマッチングは上々で、想像以上に良く走る。乗り心地も上々。新車の頃から大きかった騒音、振動は相当なものだが、それすらも清々しさと感じさせるのだから面白い。

そして思ったのは、この実直さは現代のポロにもまだ通じるものがあるなということだ。いたずらにシャープでもダルでもないフットワーク、加速も減速も操作に忠実なレスポンスが実現しているのは、過去に聞いたことのあるような表現を使えば“何も足さない、何も引かない”走り。その基本は、ずいぶん静かで滑らかになったとはいえ、今もしっかり受け継がれていて、改めて好感を覚えた。

今のフォルクスワーゲンを取り巻く状況は決して安穏としていられるものではない。上質で良いクルマではあるがブランド力ではプレミアムメーカーに譲るし、一方でかつてはあらゆる面で足元にも及ばなかった日本のコンパクトカーも着々と力をつけてきていて、パッケージングではすでに先を行っているし、走りだって100km/h以下でなら、そう遜色ないのが実際のところだ。

そう書いたものの、やはり真摯に磨き上げられたその走りを味わうと、やはりそこには独特の魅力があると改めて実感する。

ゴルフIIの頃とは違って、今は良いクルマであれば、それだけで幸せに直結するとは言い切れない時代だ。しかし、こうして改めて乗るとゴルフIIはいまも間違いなく訴えかけてくるものを持っているし、その血統を受け継ぐポロが、やはり同様の感触を伝えてきて、心揺さぶるのもまた確かなのだ。

現ユーザー諸氏は、皆きっとそれを理解しているに違いない。だが、フォルクスワーゲンにはもっと幅広く、丁寧に、その魅力をアピールして欲しい。変革の真っ只中のメーカーだからこそ、今それをしておく価値はあるはずだ。(文:島下泰久)

1990年式ゴルフII CLi
フォルクスワーゲン ポロ TSI Rライン 主要諸元
●全長×全幅×全高=4075×1750×1450mm
●ホイールベース=2550mm
●車両重量=1210kg
●エンジン=直4DOHCターボ
●排気量=1497cc
●最高出力=150ps/5000-6000rpm
●最大トルク=250Nm/1500-3500rpm
●トランスミッション=7速DCT
●駆動方式=FF
●車両価格=298万円

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