高価なのはSVだけじゃない!ミウラ P400Sの相場も高騰中……?
前世紀末以来、自動車エンスー界において毎年8月の恒例行事となっている「モントレー・カーウィーク」。その最大規模のオークションとして、RMサザビーズ北米本社が8月15~17日にモントレー市内で開いた「Monterey 2024」では、2023年末に逝去したヘアスタイリスト&実業家の故アンガス・ミッチェル氏の遺した9台の素晴らしいクラシック/コレクターズ・カーが「The Collection of Angus Mitchell」と銘打って出品されました。今回はその出品車のなかから、アンガスが自身のコレクションの中でも最も愛したといわれるランボルギーニ「ミウラ P400S」をピックアップ。そのあらましと、注目のオークション結果についてお伝えします。
なんと1億円!!「ウルス」の始祖「LM002」が相場の倍以上で落札…「ミウラ」と同じデザインのホイールを履いた、ハイセンスなランボルギーニでした
スーパーカーの始祖、ミウラの改良版P400Sとは
ランボルギーニ「ミウラ P400」の登場は、世界各国数あまたのクルマ好きにとって、現代における「スーパーカー」の定義の誕生を告げるものだった。
もちろんミウラが1966年に発表される以前にも、信じられないようなレベルの動力性能と、一部の特権階級のためのエクスクルーシブ性を提供する高級グラントゥリズモは、少なからず存在した。しかし、ミウラのごとくパフォーマンスと圧倒的な速さだけでなく、大衆に衝撃と畏怖、そして陶酔を与えるエキサイティングなデザインと、テクノロジー革新のスリリングな組み合わせを提供するクルマはなかった。
ミウラの壮麗なベルトーネ製ボディは、鬼才マルチェロ・ガンディーニが手がけたもので、開発チームにはジャン・パオロ・ダラーラとパオロ・スタンツァーニという、のちに巨匠として称賛を受けることになる、若くて優秀なエンジニアが名を連ねた。
さらにミウラのシャシーは、優れたハンドリングとおそるべきハイパワーをコントロールするために入念にチューニングされていた。そして、そのミッドシップレイアウトは欧州のスポーツカー業界に革命をもたらし、ほかのメーカー、とくに高級グラントゥリズモ業界の盟主たるフェラーリもこの才気あふれる新興メーカーに対抗するため、ロードカーの分野でも急速にエンジン搭載レイアウトを変更する必要性に迫られてゆく。
ミウラ P400Sになってどこが変わった?
1968年、ミウラ P400は「ミウラ P400S」へとアップデート。ガンディーニのスタイリングはそのままに、クロームメッキのエクステリアトリムとリアに「S」のバッジが追加されることになる。
このモデルではインテリアの質感が向上し、計器類のレイアウトも変更されたほか、パワーウインドウが装備され、後期モデルにはオプションとしてエアコンも設定された。
4LのV型12気筒エンジンの出力は、バルブタイミングを見直したハイリフトのカムシャフトと4基のウェーバー40IDL-3Lキャブレターの採用により、スタンダードのミウラから20psアップに相当する370psをマークした。
さらに、ミウラのスプライン式ドライブシャフトシステムは等速ジョイントに変更され、アームストロング社製のショックアブソーバーはコニ社製に変更された。
近年の国際クラシックカー・マーケットにおいては、同じミウラでも最終進化形の「P400SV」が突出して高い評価を受け、3億円オーバーが当たり前の相場感となっているいっぽう、ミウラ/ミウラSは比較的安価に推移してきているのはご存知のとおり。
でもこのオークション出品車両は、ここ数年のミウラ P400Sのマーケット市況を塗り替えるような、驚くべきハンマープライスで迎えられることになったのだ。
一部にSVスペックを盛り込んだレストアとは
このほどRMサザビーズ「Monterey 2024」オークションに出品されたランボルギーニ「ミウラ P400S」は、1969年1月22日にサンタアガタ・ボロネーゼから出荷され、同じボローニャの「オート・エリート」社に納車されたもので、当初はシルバー・メタリックのボディにマスタード・レザーの内装の組み合わせだった。
アメリカにおけるヒストリーは、1970年代半ばにカリフォルニア州ロングビーチのジョージ・コカラスが入手したものまでさかのぼると考えられている。その後、1978年に同じくロングビーチに住むジョセフ・ケーニッヒの手に渡り、翌年にはエキゾチックカー愛好家として知られるオリバー・カットナーに譲渡。1988年にはランディ・サイモンによって購入され、1991年のニューヨーク・オートショーに出展された。
さらに1995年には、このミウラSはカリフォルニア州ウィッティアの著名エンスージアスト、スティーブ・コレッティに譲渡され、すぐに4年にわたるレストアを開始した。
車両に添付されているヒストリーファイルに含まれた作業概要によると、ボディワークとシャシーを剥き出しの金属に戻し、適切かつ慎重に修復。フロントのシャシー補強材、フロント側のショックタワー・ブレースの強化、ラジエーターとフロント・ブレーキローターにより多くの空気を送るためのフレームレールの変更など、後期型P400SVを模した望ましいエンジニアリング的特徴を取り入れたことも記録されている。
すべてのサスペンションコンポーネントは、安全のためにクラックチェックが行われ、カドミウムメッキないしはパウダーコーティングが施された。また、ブレーキもSV仕様にアップグレードされ、改良型のクロスドリルドローター、カーボン/ケブラー製のブレーキパッド、フレキシブル編組のステンレススチール製ブレーキラインが装着された。
エンジンはボブによってリビルトされた!
いっぽうV12エンジンは、元ランボルギーニのエンジニア兼テストドライバー、伝説のボブ・ウォレス自身によってリビルトされ、JAE社製のカスタムピストンとリング、0.5mmのオーバーボア、SV仕様の分割式潤滑システム、ANSAスポーツエキゾーストが採用された。ウォレス氏はまた、リミテッドスリップデフを取り付け、各部のベアリングやブッシュ、トランスミッションのシンクロメッシュもアップデートした。
いっぽう内装は、非常に魅力的なダークグレーのレザー内装と、それを引き立てるカーペット、ヘッドライナー、ステアリングホイールのレザー表皮で修復された。要するにこのレストアは、単に美しいミウラに仕上げるためだけでなく、工場が意図したとおりの速くて丈夫なロードカーを作るために行われたのである。
コレッティ氏は、南カリフォルニアの自宅から「カーウィーク」のためにモントレーまで何度も出かけるなど、愛車ミウラP400Sを8年間愛用し続けた。その後、インディアナ州の著名な「エルクハート・コレクション」のパフォーマンス・カーとして譲り渡されたP400Sは、その後もオーナーのお気に入りの1台として継続的に手入れされ、アメリカ中西部のコンクールに出品されることもあった。
そして2020年、同じRMサザビーズによって「エルクハート・コレクション」がオークションにかけられたとき、故アンガス・ミッチェル氏がこのミウラを手に入れ、彼の50歳の誕生日を祝うにふさわしい喜びをもたらしたのだ。
ミウラ P400SVの取り引き実績にも近い高価格でハンマーが鳴らされた
このミウラは、たちまちアンガスのコレクションの中心的存在となっただけでなく、そのスタイルとパワーで、周囲の仲間たちからも認知されるようになった。とくにその美しさはオーナーを魅了し、彼の所有するほかのクルマのデザインにも影響を与えてゆく。そしてこのP400Sのホイールのデザインは、同じく今回の「Monterey 2024」オークションに出品された「LM002」の特製ホイールにも引用されることになった。
カリフォルニア州ロングビーチの「グランツーリング・クラシック」社は、キャブレターのクリーニングとチューニングを行った。オリジナルの燃料タンクは修復されて再び取り付けられたうえに、キャブレターのレイアウトのために、時として車両火災を起こしがちなミウラには有用な消火システムも取り付けられた。
今回のオークション出品に際して、RMサザビーズ北米本社の営業部門は、アンガスからこのミウラSを相続した遺族である現オーナーとの協議の結果、140万ドル~170万ドル(邦貨換算約2億720万円~2億5160万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定していた。
ところが、モントレー市内の大型コンベンションセンターで挙行された競売では、ビッド(入札)が予測外に跳ね、終わってみれば189万7000ドル。現在の為替レートで日本円に換算すれば約2億7300万円という、ここ数年におけるミウラ P400SVの取り引き実績にも近い高価格でハンマーが鳴らされることになった。
ちなみに4年前、2020年11月の「The Elkhart Collection」にて、故アンガス・ミッチェル氏がこの個体を手に入れた際のハンマープライスは116万ドルであった。また、同じく2024年のモントレー・カーウィーク中に開催された「グッディング&カンパニー」社の「Pebble Beach」オークションでも、ミウラP400Sが204万ドルで落札された実績を見ても、やはりこのモデルの相場はジリジリと上がっているということなのであろう。
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みんなのコメント
ミウラさんってスズキさんの親戚なのかw