トヨタのコンパクトハッチバックモデル「パッソ」が、2023年9月下旬をもって生産終了となる。パッソの前身である「デュエット」から数えると、およそ25年に渡って販売され、低価格で買える普通乗用車として、長年トヨタのエントリーモデルを担ってきた。デュエットとパッソがたどってきた足跡と功績について振り返ろう。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA
ダイハツとの共同開発により、2004年に初代登場
パッソの前身である「デュエット」は1998年に登場。ダイハツが製造していた「ストーリア」のOEM版であり、ボディは5ドアのみ、女性をメインターゲットとした可愛らしくて角の取れた丸くて愛嬌のあるデザインと、実用的で扱いやすいパッケージングが特徴。エンジンはダイハツ製の1.0L 直3DOHCのみの設定で、トランスミッションは4速ATと5速MTが用意された。
もっともシンプルなグレードだと、発売当時の価格は91万3000円(5速MT・FF)。それでもダイハツの衝突安全ボディTAFを採用し、衝突時には自動でドアロックを解除してハザードランプを点滅させるシステムも搭載。また、全車デュアルエアバッグ、ブレーキアシスト付きABS、フォースリミッター付きシートベルトも標準装備していた。
そして2004年、ダイハツと共同開発した「パッソ」が登場。当時のヴィッツより短い全長(3595mm)でありながら、ロングホイールベースと高めの全高により、室内空間を広く確保していた。エンジンは1.0Lと1.3Lのラインアップがあり、トランスミッションはコラムシフト式4速ATのみ。親しみやすいデザインながらスポーティで機能性のあるフォルムが魅力的だった。当時、軽自動車のラインアップを持たなかったトヨタにとって、パッソは顧客の裾野を広げてくれるモデル。以降パッソは、トヨタのエントリーモデルとして、安定した人気を得るようになっていった。
2010年には2代目にフルモデルチェンジ。開発の際には、女性の意見を積極的に取り入れ、女性ならではの視点でデザインや使い勝手の良さを追求したそうで、これによりフロントピラーの形状や収納スペースの設置、運転のしやすさなどを大きく変更。デザインも丸みを帯びた女性好みのものとなった。
2004年登場のパッソ。国内で初めてダイハツとの共同開発で誕生したモデルだ
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機能充実、燃費トップクラスの普通車でありながら、127.5万円という低価格の現行型
現行型のパッソは2016年にデビューした。「街乗りスマートコンパクト」をコンセプトに、コンパクト車としての基本である「経済性」と「使いやすいパッケージ」、「コンパクトでありながらも安心感ある走り」を追求し、開発された。
標準的なグレード「X」の他に、上品なデザインとディテールが与えられる「MODA」という新グレードを設定。選択肢の幅を広げた。エンジンは全車1.0LでCVTと組み合わせられ、燃費性能は28km/L(JC08モード)と、ガソリンエンジンの登録車としてトップクラスの性能を誇る。
ボディサイズは全長3650mm×全幅1665mm×全高1525mm、ホイールベースは2490mmとコンパクトなサイズを維持しつつ、前席と後席の間を従来型に対して75mm延長することで、ゆとりの室内空間を確保。また衝突回避支援システムとして「スマートアシストIII」を搭載し、衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制制御機能、車線逸脱警報機能、先行車発進お知らせ機能など先進機能でドライバーをサポートする。
なお車両価格はベーシックグレード「X(2WD)」で127万5000円、4WDのトップグレード「MODA G package」で191万3000円(いずれも2023年4月末時点のグレードの価格)。普通自動車で130万を切る価格のモデルが消滅してしまうのは、なんとも寂しい限りだ。
ベーシックなグレードの「X」。上級グレードの「MODA」よりもシンプルなスタイリングだが、シンプルである上に、お手頃な価格が好評だった
兄弟車のダイハツ「ブーン」は継続
パッソは、いわゆる「リッターカー」で、車格としては、日本でいまもっとも人気のあるコンパクトモデルである「ヤリス」よりも小さいクラスとなる。軽自動車よりも大きく、エンジンの排気量もあるのでゆとりの走りと室内空間、そして安全性が得られるのが特徴だ。
ただ昨今は、軽自動車の商品力が向上してきており、N-BOXをはじめとして、コンパクトカーを超える装備と性能(そして金額も)の軽もたくさんある。走りや質感、乗車人数(軽は4人乗り)や車内の広さなどが、「軽で十分」と考えるユーザーは、軽自動車を選択するだろう(税金も安い)。逆に、「軽じゃ物足りない」と感じるユーザーは、デザインやインテリア、走行性能、乗り心地など、全ての質感でパッソに勝るヤリス(147万円~)を選択するだろう。
パッソの兄弟車であるダイハツ「ブーン」は継続販売とのことで、次期モデルも登場とのウワサもある。このあたりは、ダイハツとトヨタのラインアップの違いによるところも大きいだろうが、小型車のハイブリッドモデルが増え、車両価格が上昇傾向にある昨今は、パッソのようなシンプルなメカニズムと装備で低価格を担うモデルは、まだ多くの需要があるように思える。ブーンには、パッソのぶんの活躍も期待したい。
「MODA」のインテリア。アクセントカラーがおしゃれだ
(※編集部注/日産マーチの生産終了(2022.8)もそうですが、トヨタ、日産、ホンダなどの主要メーカーにとって、どことなく「日本市場におけるAセグメントは、もう軽自動車だけでいいか…」という空気が、パッソ終了によってさらに濃厚になった気がして、なによりそれが悲しいです。たしかに「軽自動車」は日本が誇る偉大な自動車文化の傑作であり、非常に力強い商品カテゴリー群で、しかも税制度の優位性もあります。しかしそのうえで、日本の「リッターカー」だって長い伝統を持ち技術的、ブランド的な積み上げのある偉大なカテゴリーなはず。まだまだ可能性もあるのでは。特に廉価な若者向けブランドで。具体的にはスターレット、もう一回復活してくれんかなあ)
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みんなのコメント
いわゆる走る曲がる止まるの基本性能が全然ダメだと。
ベストカーだった記憶だが、違ってたら申し訳ない。
パッソ、できた、パッソ
ってCMソングが耳に残ってますね。
あの時代の軽自動車は本当に「軽」で
安全性を考えたら怖くて乗れず、
まともな小さな車はパッソやマーチ
だったんですよね。
まあ、一つの時代が終わったと言う事で。