日産「スカイライン」に設定された1000台限定の「NISMO」は、魅力的なスポーツセダンだった! サトータケシがリポートする。
毎日の足に使ってもいい
クルマに興味がある人は、“いまさらスカイライン!?”と、思うかもしれない。実は筆者も、スカイラインNISMOに試乗すると聞いて、そう思った。
デビューから約17年、そのパフォーマンスを磨きに磨き抜いて世界のスーパーカーの仲間入りを果たした「GT-R」。デビューから2年、世界中で人気が爆発してオフィシャルHPに“ご注文の一時停止のお知らせ”の案内が出ている「フェアレディZ」。この2台にはさまれたスカイラインは、影が薄い。立派になったふたりの弟を横目に、くすぶっている長男のイメージだ。
けれども、スカイラインNISMOのステアリングホイールを握っていると、多幸感がじわじわと、波のように押し寄せてきた。このクルマには、乗った瞬間に「楽しい!」と、思わせるような、わかりやすさはないけれど、一度寄り添ったら離れられなくなるような、滋味深さがある。
契約した1000人(1000台限定だ)のオーナーは、ホントにいい買い物をしたと思う。こんなクルマは二度と出てこないかもしれないので、末永く、大切に乗ってほしい。
現行の「スカイライン400R」をベースに、パワートレインと足まわりをNISMOが鍛え上げた、というのがこのクルマの売り文句だ。ただし、スタートして最初に感じるのは洗練されている、という印象だ。
まず、乗り心地が洗練されている。後輪はベース車両の400Rが245/40R19サイズだったのに対して、265/35R19と太くて薄くなっており、しかも資料にはリヤサスペンションを4割以上強化しているとある。
したがってタウンスピードではドスンという突き上げを覚悟していたけれど、いい意味で肩透かしを食らった。凸凹を突破しても4本の脚が滑らかに伸び縮みして、路面からの衝撃の角を丸めてくれる。これなら毎日の足に使ってもいい。
エンジンの最高出力はベース車両比でプラス15psの420ps、最大トルクはプラス75Nmの550Nm。
興味深いのは、バカッ速さや超絶レスポンスをわかりやすくアピールするのではなく、アクセルペダルを踏み込むにつれて自然に加速が伸びるフィーリングを重視していることだ。スロットル開度と加速のセッティングや、7段ATとエンジンのコンビネーションが大人っぽい。
会話が成り立つクルマワインディングロードでは、大人っぽいという印象がもう一歩前進して、玄人っぽいという印象に変わる。
はっきり言って、脳天に突き抜けるような快感を提供するハンドリングマシーンではない。けれども、ステアリングホイールを切ると、前と後ろがバランスよくロールして、きれいなコーナリングフォームで曲がっていることが実感できる。市街地で感じた洗練された乗り心地が、こうした場面でも変わりないことも特筆モノだ。
スカイラインNISMOで走っていて感心するのは、会話が成り立つクルマだということだ。アクセルペダルを踏むと、「もうちょっと踏み込むと、もっとイイ感じになるよ」というメッセージが伝わってくる。ブレーキペダルを踏むと、「ここで少し踏力を緩めようか」というアドバイスが返ってくる。ステアリングホイールを切り込むと、「もう一杯一杯だから、これ以上切ってもムダだよ」と、諭される。
なるほど、運転とはクルマとの対話なのだ、ということがひしひしと伝わってくる。そしてクルマの背後に、どなたかは存じませんが、念入りにチューニングを施した手練れの影が浮かび上がる。
1000台限定とはいえ工場のラインで製造しているから作品と呼ぶのは無理があるだろう。とはいえ、単なる工業製品ではなく、工芸品の趣がある。
スカイラインNISMOに乗っていると、「おもしろい! 楽しい!!」ではなく、「ずっと乗っていたい」と、感じる。
冒頭で、GT-RとフェアレディZに比べると影が薄いと書いたけれど、街でこのクルマを見かけたら、“わかっている人が乗っている”と、尊敬の眼差しを向けてしまうだろう。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
パワーがあって速いセダンは今の時代少ないからここまで持ち上げてるだけで、これはスカイラインと名前がついた工業製品というだけでしょう。
それを「新型」とは言わないよ。
100台ならまだしも、1,000台もあったら限定という感じでもない。