クルマがネットワークや他車への通信を行い、ドライブが快適になるコネクティング技術。そのいっぽうで双方向通信を行う車種にはハッキングの可能性も大きくあります。実際に特定の車種がハッキングされ、乗っ取られるという実験も行われました。今後もますます増えていく「つながる」車だけに、その対策などは進んでいるのでしょうか? 自動車メーカーの防衛策についても迫ります。
文:国沢光宏/写真:Shutterstock.com
2017年12月26日号「クルマの達人になる」
内燃機関は死なず!! 日産 VCエンジン&マツダ SKYACVTIV-X 実用化目前の夢のエンジン
■実際にクルマへのハッキングは起こっている
パソコンやSNSで大きな問題になるのが「ウイルス」や「乗っ取り」。なのに今回の東京モーターショーなどで「つながる技術」を盛んに取り上げていた。クルマの中でも外部とコミュニケーションしようということである。たくさんのコンピューターなどを使っている自動車は、いわゆる「サイバー攻撃」に遭わないのだろうか?
結論から書くと「絶対大丈夫」といえない状況にある。外部から情報を入れるということは、必然的にセキュリティを突破されるリスクを負う。 すでに実験ではあるがハッカーがクライスラー車を乗っ取り、ハンドル切ったり加速させたりしたので大騒ぎになった(クライスラーはすぐさまリコールで対策を行なった)。今やアクセルやブレーキだけでなくハンドルすら電動化している。
電気信号だけでアクセル全開のまま対向車線に飛び込ませることだって物理的に可能。結果、クライスラーのハッキング問題は、世界中の自動車メーカーの考え方を180度変えた。
(編集部註)この動画は実験でJeepをハッキングしているシーン。運転者の意図しないところでステアリングが急に曲がる。片手ハンドルで左手のみでハンドルを支えるような運転をしていたら、この動画のように大きく舵が取られてしまう
■自動車会社の防衛策とは?
以下、具体的に説明しよう。コンピューターネットワークには「双方向通信」と「単方向通信」がある。前者は文字どおり送ることも受け取ることも可能。例えばテスラの場合、アップデートの必要性があると夜のウチにデータが送られてくる。コンピューターやスマートフォンと同じだと思えばよかろう。そして朝になると昨日までなかった機能を使えるようになってるから面白い。これ、テスラのアピールポイントになってます。
しかしテスラ以外の自動車メーカーは外部からクルマの機能を変えられることを恐れる。ハッキングされたら責任をとれないからだ。始動から30分後にアクセル全開となるようなマルウェア(ウイルス)など仕掛けられたらオシマイ。もう少し具体的に書くと、整備などで使うダイアグノシス機能は、絶対有線情報じゃないと使えないようにしている。つまりダイアグノシスにカプラー繋いだときのみ、車両データの上書きや変更を許すというもの。
リーフなどは走行用電池の使われ方を常時モニターし、日産の管理システムに携帯電話の回線使って送っているが、これも単方向通信。日産の管理センター側の情報はまったく受け付けない。というか、そういった「配線」すらなし。一時期、グーグルやアップルが自動車の制御を行なおうと自動車メーカーに営業をかけたけれど、すべての自動車メーカーは全面拒否した。今後もグーグルやアップルが自動車の制御ソフトに立ち入ることなどないと考える。
ここまで読んで「それなら国交省がやろうとしているITSはどうよ?」と思うかもしれない。地上の信号機から赤信号などのデータを車両に送り、ブレーキ制御しようというもの。結論から書くと「カンベンしてくれ!」。赤信号なのに青信号の情報を送られたら、その時点でオシマイだ。個人的にはテスラの自動アップグレードだって怖いと考えている。参考までに書いておくと『アップルカープレイ』などは、ナビ機能やメール、電話までしか制御をさせない。自動車メーカーが防波堤を作ってます。
ハッキングはクルマのそばにいなくても可能だ。幾重にもセキュリティが存在しているものの、双方向通信のクルマの場合はハッキングの可能性がないとはいえないのだ
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