昭和は遠くなりにけり・・・だが、以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は、「マツダ ファミリアAP」だ。
マツダ ファミリアAP(FA4TS型):昭和52年(1977年)1月発売
1977年(昭和52年)当時、東洋工業(現:マツダ)は業績不振のために住友銀行主導で経営再建を目指していた厳しい時代だった。そんな中、起死回生の期待も込めて「従来の大衆車というイメージを払拭した新しい大衆車」ということをメインテーマに新開発されたのが、このファミリアAPだった。社内開発コードナンバーでは「X508」と呼ばれた。
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エンジンはTC型という1.3Lの直4 SOHCで、パワースペックは72ps/10.5kgmというもの。けっしてパワフルではなかったが、マツダらしい実用域で使いやすいエンジンとなっていた。シリンダーヘッドをアルミ合金とし、クロスフローで多球型燃焼室を採用。またフルトランジスタ式点火式システムを採用するなど、当時としては最先端の構成も注目された。
この時代のポイントとなる排出ガス対策は、「マツダ希薄燃焼方式」と呼ばれるシステムで対処していた。これは高速渦流状に吸入した薄い混合気を強い火花で燃焼させ、NOx/CO/HCの発生を抑えるもので、エンジン内部の基本構造を変えることなく排出ガス対策を可能にしているのがポイントだ。
トランスミッションは4速MTが基本だが、スーパーカスタムのみ5速MTが選べる設定で、駆動方式はコンベンショナルなFRとなる。スタイリングとしてFFの方がしっくりくるが、FFへのライン切り替えのコストを考えると時期尚早か・・・という妥協点だったのかもしれない。逆に言えば、コンパクトハッチがFRだった最後の世代のクルマと言えるだろう。
サスペンションはフロント:ストラット/リア:コイルスプリング+5リンクリジッドを採用している。フロントはすでにお馴染みの形式だが、リアはそれまでのファミリアがリーフリジッドだったことを考えると一歩進んだ。この組み合わせは当時のコスモAPと同様の組み合わせで操縦性は良好だった。路面への接地性は高く、やや固めのセッティングと合わせたスポーティな走りっぷりが若者層を中心にうけた。
ブレーキは、フロント:2リーディング式/リア:リーディングトレーリング式のドラムを基本としているがスーパーカスタムとGFのフロントはディスクブレーキを採用している。このあたりは走りにこだわる層を意識したといえるだろう。
走りに関する点を紹介してきたが、このクルマのセールスポイントは使い勝手の良さにもあった。もちろんFRなので縦置きエンジンでセンタートンネルがあるという制限はあるが、リアゲートの開口部は大きく、トランクスペースとしてのラゲッジルームもけっこう広いので、荷物の積み卸しはしやすかった。ゲートはリアピラー後端いっぱいまで開く方式を採用したために、5名乗車時でも奥行き72cm、幅131cmの容積を確保し、リアシートを倒せばカーゴルームの延長として使用できる。これだけなら他車にもあったが、リアシートが分割して倒せるのは当時まだ珍しかった。
ファミリアAPは爆発的な売れ行きとまではいかなかったが、1978年に1400ccエンジン搭載車などラインアップを広げ、1980年にFFファミリアが登場後もバンは1985年まで継続生産され、マツダの屋台骨を支えることになる。
マツダ ファミリアAP スーパーカスタム 主要諸元
●全長×全幅×全高:3835×1605×1375mm
●ホイールベース:2315mm
●重量:805kg
●エンジン型式・種類:TC型・直4 SOHC
●排気量:1272cc
●最高出力:72ps/5700rpm
●最大トルク:10.5kgm/3500rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:6.00-12 4P
●価格:80万円
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「幸せの黄色いハンカチ」を見たのはずいぶん後で若い頃はオヤジ映画だと思って興味が無かったが、今は何度も観返すほど好きな映画です。