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レクサスは新しい“ラグジュアリー”に挑戦する──新型LBX登場の意味を考えた!

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レクサスは新しい“ラグジュアリー”に挑戦する──新型LBX登場の意味を考えた!

レクサスの新型SUV「LBX」について今尾直樹が考えた!

レクサスにふさわしいコンパクトSUV

新型レクサスLBXの注目すべきポイントを解説──“手の届くレクサス”に注目!

6月5日、予告通り、レクサスの新型LBXがイタリアはミラノで世界初公開された。予想通り、レクサスにとって初のコンパクトSUVで、プラットフォームはトヨタ「ヤリス」と共通のTNGA GA-Bであることが明らかにされた。これまた予想通り、LBXは「ヤリス・クロス」のレクサス版なのだ。

予想外だったのは、LBXが“Lexus Breakthrough X(cross)-over”を意味するということである。筆者の予想した“Luxury Basic(もしくはBaby) X-over”ではなかった。些細な話だけれど、ブレークスルーという単語と、LBXというレクサスにとって初となるアルファベット3文字のネーミングを使っているところに、このコンパクトラグジュアリーSUVにかける彼らの意気込みがうかがえる。ブレークスルーとは、突破口という意味なのだから。

もうひとつ、エクステリアがレクサス特有のオリガミデザインではなかったことも、筆者的には予想外だった。ボディサイズは全長×全幅×全高は4190×1825×1560mm、ホイールベースは2580mmで、これは同じGA-Bプラットフォームのヤリス・クロスより60mmも幅広くて20mm低い。全長はほぼ同じで、ホイールベースは20mm長い。ということは、オーバーハングを縮めている。GA-Bそのままではなく、レクサスにふさわしいコンパクトSUVに仕立てるために独自の改良がくわえられているのだ。

タイヤは225/60R17、もしくは225/55R18で、ヤリス・クロスの標準の205/65R16と較べると最大2インチ大径になっている。18インチはヤリス・クロスのGRスポーツと上級グレードのZに標準装着されているものの、どちらも215/50で、LBXより10mm細い。

ショートオーバーハングで、ワイドトレッドと若干低めのスタンス、それにファットで径の大きなタイヤを履かせることによって、相撲でいうとシコを踏む稽古をいっぱいやったみたいな、足腰をガッチリ鍛え上げた、安定感のあるプロポーションをつくり出している。写真で見る限り、レクサスのクロスオーバーSUVのなかで、いちばんスタイリッシュだと筆者は思う。

パワートレインについては1.5リッター直列3気筒エンジンとモーターによるハイブリッド(HEV)の前輪駆動と、これに後輪を駆動するモーターを加えた4輪駆動がある。現時点では詳細は不明ながら、基本的にヤリス用のシステムをベースに、モーターの出力を向上させているらしい。「アクセル操作に対する電池とモーターによるアシストを大幅に強化し応答遅れが少なく、立ち上がりが早い電気リッチな加速感を実現」と、プレスリリースにあるからだ。

レクサス独自のGA-B改の上に構築されたボディは、音と振動の発生源を抑える源流対策が施されてもいる。空力性能も意識している。「ユニファイド・スピンドル」と名づけられた新しいフロント・グリルのデザインは、風の流れの変動を抑制する働きをしているという。

興味深いオーダーメイドシステムLBXで筆者がもっとも驚いたのは「Bespoke Build(ビスポーク・ビルド)」というオーダーメイド・システムの採用である。内装色、シート素材、刺繍パターン等、33万通りの組み合わせから唯一無二の1台をつくり上げることができる、というのだ。

う~む。これは考えただけで、手間ですよ。AIによる予想とかがあるにせよ、在庫だとか生産だとか、クリアしなければならない面倒な諸々が山ほどありそうである。手間がかかれば、時間がかかる。それすなわちコストがかかるということである。

そのコストに見合うビジネスになるのかどうか。それは結局、この新しいLBXがどれだけユーザーから愛してもらえるのか、ということ次第である……と、筆者は想像する。いまどきスーツだってオーダーメイドするのはオシャレなひとだけで、自動車でそれをやるのはハードルが高そうに思える。LBXはこの秋以降にニッポン市場でも発売する計画だけれど、このビスポークビルドというシステムを採用するのか、自動車文化立国ニッポンの命運を占う試みになるかもしれない。

オーダーシステムまでいかずとも、LBXではライフスタイルに合わせて5つの世界観のグレードを用意している。「COOL」「RELAX」「ELEGANT」「ACTIVE」、そして「URBAN」というのがそれで、私はやっぱりセミアニリン本革でサドルタンカラーのシート表皮の「RELAX」がいいなぁ、と思って眺めていたら、リリースに「落ち着きと華やかさを両立するHIGH-LUXURYな世界」とあって、ゲゲッ、価格は未公表ながら、きっと高いのだった。

これまでよりもコンパクトなクラス、それもすでに成功した米国と中国ではなく、ヨーロッパ、ラグジュアリーの本場で、いかにレクサスを浸透させていくか。その方策のひとつとして考えられたのがBespoke Buildなのである。まことに興味深い。

レクサスの誕生は1989年だから、もうすぐ35年になる。それでもヨーロッパのラグジュアリーの壁は高くて厚いのである。おそらく。そのむかし、アメリカ人、フォードがジャガーやアストンマーティンを買ったのもそれゆえだろう。ドイツ人から見てもそうである。だから彼らはウルトララグジュアリーに進出するにあたってロールス・ロイス、ベントレーを買い求めた。高級ブランドを手に入れ、なおかつ、ドイツのテクノロジーでもって、もっといいクルマをつくった。だからロールスもベントレーも成功した。

先日も書いたけれど、ヨーロッパのレクサスにとって、やっぱりいちばん大事なのはこのマントラなのだ。

もっといいクルマをつくろうよ。

いずれにせよ、新型LBX、今年秋以降のニッポンでの発売が楽しみな1台である。

文・今尾直樹 編集・稲垣邦康(GQ)

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