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【609psのハイブリッドクーペ】ポールスター1 ハンドメイドで1500台限定

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【609psのハイブリッドクーペ】ポールスター1 ハンドメイドで1500台限定

ボルボとポールスターの走るショーケース

text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)

【画像】ポールスター1 全40枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


ボルボの新しいプレミアムEVブランド、ポールスターから登場した初めてのモデルがポールスター1。限定生産のハンドメイド・スペシャルだ。

ボルボとポールスターが実現できる技術力を示した走るショーケースともいえる。将来のクルマはどうあるべきか、ブランドの考えを示したクルマだ。今後3年間の間に1500台を、丁寧に組み立てられることになる。

パッと見は、ボルボS90の2ドアクーペ版に見えなくもない。しかし実態はまったく異なる。数ヶ月前にプロトタイプを試乗しているが、間違いなく2019年で最も興味深いクルマの1台だった。今回はイタリアで、完成した量産モデルでの試乗となった。

ポールスター1は触れるべきことが多い。基本骨格はスケーラブル・プラットフォーム・アーキテクチャ(SPA)で、そこに先進的な技術を詰め込んである。インテリアのデザインも、よくあるボルボらしい上質で控え目な北欧デザインとは異なる雰囲気を持つ。

ハンサムで目を引くボディは、手作業で折り重ねられる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製。軽量な素材だが、車重は2350kgもある。

フロントに搭載される2.0Lの4気筒ガソリンエンジンは、ターボチャージャーとスーパーチャージャーで過給。8速ATを介して前輪を駆動する。リアタイヤにはトルクベクタリング機能も叶える電気モーターを2基配置。それぞれリアタイヤを1本づつ回す。

さらにエンジンと8速ATの間にも電気モーターが配され、強力なスターター・ジェネレーターとして機能する。電気モーターは合計3基あることになる。

EVとして128km走れつつA45並の加速も披露

大型のバッテリーは、従来のトランスミッション・トンネルと呼ばれる車体下の中央部分と、リアタイヤの間に搭載。これだけ盛り込んであるから、重くなるのもうなずける。

この体重を克服するために、充分なパワーが与えられている。すべての原動力が一体となって発揮する最高出力は、控え目とはいえない609ps。最大トルクに至っては101.8kg-mと3桁だ。

インテリアは基本的にボルボ製の部品を流用しており、ダッシュボードの素地はほぼそのまま。そこへ特別なレザーと専用トリムが与えられ、高級なGTらしい雰囲気を生み出している。定員は2+2の4名ながらリアシートはかなり窮屈。荷室もバッテリーがかなり専有している。

ドライブモードをピュアにしてスタートしてみる。このピュアでは、リアタイヤを駆動する2基のモーターだけでポールスター1は走行する。合計の出力は232psで、ほぼ無音のまま128kmの距離を走行できる。許容する最高速度は160km/hになる。

電気モーターらしく加速の瞬発力は素晴らしく、100km/hくらいまではボルボのT5並みに速い。日常的なドライブで、交通をリードするような走りに不足ない。普通に走らせている限り、まるでEVのように「1」へ乗れる。エンジンが起動することは珍しい。

ドライブモードを「パワー」に切り替えると、相当なパフォーマンスが待っている。車重が2.5tほどあるから609psという額面ほど鋭い印象はない。だがツインチャージャー・エンジンとツインモーターが組み合わさると、メルセデスAMG A45のような直線加速を示す。

ガソリンエンジンと電気モーターとがそれぞれ機能することで、トラクションも極めて高い。僅かなトルクステアが生じるようだ。

注目すべき優れたコーナリング性能

ツインチャージャーの唸りと、カーボンファイバー製のインダクションが発する吸気音に、モーターの響きが重なり、個性的な音響を生み出している。ガソリンエンジンのものより優れているというより、別の魅力を感じる。

フロントタイヤとリアタイヤは別々のパワーユニットで動いているが、「1」の走りで本当に凄いところはコーナリングにある。ステアリングの感触は希薄ながら、適度な操舵時の重さがあり、レスポンスも良い。

リアモーターのトルクベクタリング機能と協調しながら、ポールスター1はコーナーの頂点めがけて機敏に向きを変えていく。コーナー出口ではアウト側リアタイヤの回転速度がやや速く、押し出すような感覚も得られる。オーバーステアに持ち込む程ではなく、アンダーステアを消し、ニュートラルな姿勢を保ってくれる。

フロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがマルチリンク式となるサスペンションの動きも良い。ダンパーはアダプティブ・タイプではなく、デュアルフローの手動調整式となる、驚くほど高価なオーリンズ製。

豪華なスポーツクーペの乗り心地を、あえて硬くしたいドライバーは少ないだろうだから、技術者の選択としては少し不思議ではある。だが、非常に優れたダンパーだから結果は素晴らしい。急な進行方向の変化を与えると、特別なサスペンションの見事な仕上りを味わえるだろう。

ブレーキは、高い速度域では漸進的なペダルのフィーリングがある。低速域になると僅かな感覚の変化があり、回生ブレーキが止まり摩擦ブレーキだけの減速に切り替わるのが分かる。

グランドツアラーとしての確かな完成度

乗り心地にはやや硬さを感じるが、それもよほど荒れた路面でのみ。S90では衝撃を吸収しきれない鋭い入力があっても、ポールスター1はしなやかに丸め込んでくれる。わずかな作業でダンパーを柔らかく設定することも可能だ。

インテリアの仕立ても特別感がある。専用のレザーシートに透明なシフトノブなど、ディティールにも優れ、スタイリッシュなボルボのインテリアを更に1ランク引き上げている。ポールスターの価格に相応しく感じられるはず。

手作業で1500台が生み出されるポールスター1の英国価格は13万9990ポンド(1959万円)。英国でも珍しい存在となるだろう。

これだけの技術を搭載していながら、クルマとしての個性を備えているところも魅力的。少し硬めの乗り心地や狭いリアシートなどは気になるかもしれないが、アナログとデジタルの素晴らしい融合効果を生み出している。グランドツアラーとしての完成度は高い。

ハンサムなデザインをまとうポールスター1は、ポールスターのショーケースとして重要な役目を持つ。複雑な構成を見事にまとめ上げ、足の速いクーペとして確かな存在感を放っている。

ポールスター1のスペック

価格:13万9990ポンド(1959万円)
全長:4585mm
全幅:1935mm
全高:1352mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.2秒
燃費:142.8km/L
CO2排出量:15g/km
乾燥重量:2350kg
パワートレイン:直列4気筒1969ccターボチャージャー+スーパーチャージャー/トリプルモーター
使用燃料:軽油
最高出力:609ps/6000rpm(システム総合)
最大トルク:101.8kg-m(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック

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みんなのコメント

1件
  • 興味深いクーペだけど、車重が重すぎる。
    あと500kgはダイエットしないと、せっかくの動力性能が無駄になってしまう。
    バッテリーの軽量化を望みます。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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