「小型のセダン」は、日本では絶滅危惧種だが、巨大な自動車マーケットをもつ北米や中国では、いまも一定の人気を維持しているカテゴリだ。機能やデザインはもちろんだが、特に価格設定が重視されているモデルが多く、ライバルとの競争も激化している。
そんななか、異次元の価格設定をしてきたのが、2023年9月に2024年モデルが発表となった日産の「ヴァーサ」だ。
米国で新登場セレナ顔の5MT小型セダン「日産ヴァーサ」こういうの! こういうのがほしい!!
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN
16,130ドルという驚異の価格で登場
2023年9月26日、アメリカテネシー州ナッシュビルにおいて、小型セダン「ヴァーサ」の2024年モデルが発表された。現行型ヴァ―サは2019年4月にモデルチェンジした3代目。今回発表となったのはその改良モデルだ。
この「ヴァーサ」は、日本でもかつて「ティーダ ラティオ」という名前で販売されていたモデルだ。ティーダは、コンパクトクラスでありながら上質な内外装デザインと雰囲気が特徴的なモデルだったが、現行型のヴァーサにもその流れはしっかりと継承されており、小型ながら魅力的なモデルに仕上がっている。
今回発表されたヴァーサで強調されていたのは「価格」だ。ベーシックなグレード「S」の5速MT仕様が16,130ドル(日本円で約240万円)という設定で、これはアメリカで販売される新車の中で、もっとも安い価格だという。しかしヴァーサがすごいのは価格だけではない。クルマ社会である北米で受け入れられるためのデザインや質感、機能もしっかりと織り込まれている。
2024年モデルのヴァーサ。もっともベーシックなグレード「S」5速MTの価格は16,130ドルとお買い得だ
日本で販売されていた、ティーダ ラティオ(2004年~2012年)。2004年に、「コンパクトの質をシフト(変革)する」というキャッチコピーで登場した、ティーダのセダン版だ
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すっきりとバランスのいいスタイル、基本的な先進安全装備は全車標準装備
北米日産には、ヴァーサの他にも、セントラ、アルティマ、マキシマといったセダンがラインアップされている。SUVが主流となりつつある昨今ではあるが、北米では依然としてセダンの人気も高く、どのモデルもスタイリッシュで、素直にカッコいいと思えるデザインが多い。ヴァーサも、特に現行型はセダン専用デザインのため、日本で販売されていたティーダ ラティオのようなハッチバックベースのずんぐりとした雰囲気がなく、すっきりとしていてバランスがよく、カッコよく仕上がっている。
2024年モデルのヴァーサには、アリアやセレナにも採用された新しいVモーショングリルである、横基調のクロームパーツで表現された最新のデザイン言語が採用されている。ただこれは、すでに2023年モデルのヴァーサにも採用されており、2024年モデルでは外観自体に大きな変更はない模様だ。
インテリアは、高級感というほどではないものの、車格のわりには上質だ。Sグレードだとクロームパーツがほとんどなく簡素にみえるが、ボトムフラットのステアリングや、ゆったりとしたダッシュボードパネルの曲面が上質な印象を与えるため、チープには感じられない。
装備面では、エマージェンシーブレーキや車線逸脱警報、ハイビームアシストなど、基本的な先進安全運転支援システムは全車標準装備となる。上級グレードにはワイヤレス充電システムやニッサンコネクト、8インチのタッチスクリーンディスプレイオーディオシステムなどが用意される。
ヴァーサのインテリア。上級グレードだと質感は悪くないが、ベーシックなグレードだとクロームが少なくシンプルになる
5速MTで軽快なドライブを楽しみたいのなら、これで十分!!
原油高、原材料費高騰という昨今の状況を差し引いても、この内容とデザインで16,130ドルという価格はかなり魅力的。スポーツカーではないのでパワフルな走りは期待できないが、5速MTで軽快なドライブを楽しみたいのなら、これで十分。軽自動車という規格のない北米では、このクラスがいわばクルマの入門編となる。価格が安いだけではなく、クルマの楽しみ方をしっかり提供できるモデルでなければ、このカテゴリでは生き残れない。
デザインとデザインと性能を申し分なく仕上げた上に、圧倒的な低価格で登場した2024年モデルのヴァーサは、北米の人々の期待にしっかりと応えることができるモデルに仕上がっているといえるだろう。
日産の最新デザイン言語は、小型セダンにもなかなかマッチしている
◆ ◆ ◆
ヴァーサは、日本の道路環境で走らせても扱いやすいサイズだ。ヴァーサが日本に導入されることはないだろうが、ぜひ日本の道でも乗ってみたいクルマだ。
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みんなのコメント
がライターの本音。
なにぶん三菱にはセダンそのものが無い。