ザ・スターゲイザーズのジャケット写真に
エメラルド・グリーンが眩しい、オースチンA90アトランティック・コンバーチブルは幸運だった。数10年間も倉庫に放置されていながら、最高の美しさを取り戻すことができた。現オーナー、デイビッド・ホワイリー氏の献身的なレストアによって。
【画像】神秘的な流線型 オースチン・アトランティック・コンバーチブル 同時期の英国車も 全113枚
この斬新なコンバーチブルを、筆者が初めて目にしたのは約40年前。ナンバーはFPN 717で、ボディはホワイトに塗られていた。
その頃、自分はレコード・ジャケットのデザイナーとして忙しい日々を楽しんでいた。数え切れないほどのミュージシャンのLPを手掛けたが、そのなかに「ザ・スターゲイザーズ」というロックバンドがあった。
メンバーはレトロなフィフティーズ、1950年代のスタイルを好み、バンドの特徴にしていた。特にドラマーのリッキー・ブラウン氏は、アメリカの文化やデザインに魅了されていた。
1982年の新アルバム「ウォッチ・ディス・スペイス」で、彼らは印象的なクラシックカーを登場させたいと考えた。ただし、大きなフィンのついたアメリカン・コンバーチブル以外のモデルを希望していた。
リッキーはクルマにも夢中で、デイブ・クロッパー氏というカーコレクターと知り合いだった。彼はフォード・コンサルやゼファーといったサルーンを主に集めていたが、珍しいオースチンA90アトランティックも所有していたのだ。
レストア途中で、不動状態ながら見た目は悪くなかった。ジャケット写真の主役へ抜擢することになり、ロンドンまでトレーラーで運ぶことへクロッパーは同意してくれた。
不動状態だったA90アトランティック
「最初の愛車は、Mk1とMk2のフォード・ゼファーでした。それから色々なクルマを巡り、1976年頃にオースチン・アトランティックへ辿り着いたんです」。とクロッパーが振り返る。
「ボディはホワイトに塗られていて、ソフトトップはクリームのビニール。当初は動く状態でした。バッキンガム宮殿へ元気に走ったのは忘れられません。2.6L直列4気筒エンジンは、当時としては先進的なユニットといえました」
それから6年後、A90アトランティックは撮影場所まで走る気にはならなかったようだ。36時間という長丁場の現場だったから、わからないでもない。
撮影は深夜2時にスタート。バンド・メンバーはフォトグラファーのピーター・アシュワース氏の前でエネルギッシュな演奏を披露した。
仕事を終えたコンバーチブルは、クロッパーのガレージへ戻るとテント生地が掛けられた。似たような趣味を持つクラシックカー仲間と定期的に会合を開いていた彼は、ロンドンの西、バークシャーに住む男性へ譲渡することを決めた。
購入したのはヴァーノン・コックス氏。A90アトランティックの大ファンで、すでにクーペとコンバーチブルを1台づつ初有していた。オースチン・カウンティ・カークラブ(ACCC)のメンバーでもあった。
3台目のA90アトランティックとなったのが、ホワイトのコンバーチブル。すぐに保管用の倉庫へしまい込まれた。
有名なクルマを購入したオースチン第一人者
ACCCのメンバーで、オースチンを普段の足にしていた現オーナーのホワイリーは、クラシックカー・イベントでコックスと合流。いつもの会話を交わした。
「新しいクルマの情報を入手したら教えて欲しいと、コックスに毎回話していたんです。ザ・スターゲイザーズのクルマのことは詳しく知りませんでしたが、彼が所有しているという噂はありましたね」。とホワイリーが回想する。
「2012年のクリスマスに、彼は自宅へ招いてくれました。アトランティックのオーナーに適した人物だと、わたしを考えてくれていたんです。彼の妻と一緒にガレージへ向かい、入念にビスで止められた木製のドアを外して、見せてくれました」
コックスと価格に同意し、A90アトランティックはホワイリーのものになった。「手で押して、ガレージから出すことができました。ブレーキは固着していませんでした」
「領収書と一緒に、ウォッチ・ディス・スペイスのアルバムも渡されました。その時、有名なクルマを購入したんだと気が付きましたよ」
そんなホワイリーは、英国ではオースチンの第一人者に数えられる。過去にはジェンセン社製のボディを載せたA40スポーツのレストアを仕上げ、J40という子供用ペダルカーに関する本も執筆している。彼の自宅は、オースチン・ハウスと呼ばれている。
コックスが引き継ぎたい人物に考えて当然といえた。ホワイリーが唯一無二といえる独自性を持つモデルを探していても、不思議ではなかった。
アメリカ市場へ進出するための旗振り役
「アトランティックは、オースチン・モーター社がアメリカ市場へ進出するための、旗振り役となるモデルでした。明確な戦略が立てられていました。ディーラー網を構築し、ニューヨークにオースチン・エクスポート社という子会社も準備しています」
「マーケティング担当に現地へエージェントを立て、広告担当には本社のJF.ブラムリー氏を任命しています。アメリカ人への印象を考慮し、生産国をブリテンではなくイングランドと表現しました。伝統的な職人技術というイメージが得られたのでしょう」
「イングランドのオースチンというフレーズは、北米市場ですぐに受け入れられました。後のメディアによる取材では、世界市場への輸出額が2410万ポンドに達したと報じられています。ですが、その過程は簡単なものではなかったようです」
ホワイリーが続ける。「大型モデルの北米価格は、赤字になるほど引き下げられていました。このアトランティックは、イングランドのオースチンというロゴを冠した、最初の量産モデルになります」
「お披露目は、1948年のロンドン・モーターショーです。プロトタイプには、4か所にエンブレムが張られていましたが、量産版では2枚に減っています」
A90アトランティックは戦後のオースチンを象徴するモデルといえたが、多くの人の記憶からは消えてしまっている。しかし、デビュー当時はかなりの話題を巻き起こした。同時期のジャガーXK120には及ばなかったとしても。
この続きは後編にて。
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