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森永卓郎のミニカーコラム「キラル、ジャガーXK140」(23年6月号掲載分)

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森永卓郎のミニカーコラム「キラル、ジャガーXK140」(23年6月号掲載分)

 キラル(QUIRALU)は、1950年代後半に彗星のように現れて、消えてしまったフランスのミニカーメーカーだ。当時はミニカーの黎明期で、ディンキーやソリド、メルクリンといった老舗メーカーに、コーギーやマッチボックス、CIJ(セイジ)、ノレブといったメーカーが加わって、ミニカー業界が一気に華やかになった時代だった。

 そうした中で創業したキラルは、1955年からモデルを発売し始め、10車種ほどをリリースしたあと、1959年には消滅してしまった。競争に敗れてしまったのだ。

森永卓郎のミニカーコラム「アルファロメオとベスパのドラマ」

 確かに、同じフランス製のCIJ製品と比べると。少しぼってりした感じで、作りも荒いので、市場に受け入れられなかったのもわかる気がする。ただ、いまになってみると、これはこれで味があっていいなと思えるミニカーだ。

 キラルは当時日本にも輸入されたのだが、コレクターにとっていちばん頭が痛いのは、1990年代初頭に昔の金型を使って再生産されたリプロモデルの存在だ。同じようなことは、ディンキーやCIJでも行われている。ただし、これらのリプロはいずれも中国製で、“当時物”との判別はすぐにつく。

 ところが、キラルのリプロはフランス製で、完璧な再現をしているので、まったく区別がつかないのだ。それでも、1990年代は真新しいリプロモデルは一見して違いがわかったのだが、再生産から30年も経つと、リプロモデルもそれなりの経年劣化をしているので、ますます判別が困難になる。キラルのモデルは、全車種が再生産されたと見られ、中でもシトロエンDSブレイクは、当時物が存在せず、未発売の金型から作られたと見られている。

 写真のジャガーXK140は、間違いなく当時物のモデルだ。当時手に入れたコレクターから、直接譲り受けたものだからだ。以前、本稿でディンキー製のジャガーXKをご紹介したことがあるのだが、それと比べても、彫刻刀でスパ、スパっと原型を彫ったようなワイルドな造形になっている。現代のマジョレットに通じるような美しさがある。しかも、ドライバーをダイカストで再現するなど、凝った作りにもなっている。

 実車のXK140は、1954年から1957年まで3年間製造されたスポーツカーで、140という数字は、最高速度が140mph(225km/h)であることを示している。実車は本当に流線形が美しいのだが、キラルのモデルは、スピード感のほうを重点に表現しているといえるのではないだろうか。

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