すっきりとした室内 やや心許なさも
text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
【画像】早速試乗した2種類のゴルフ 1.5 eTSIと1.0 eTSIを比較【内外装ディテール】 全101枚
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)
editor:Taro Ueno(上野太朗)
写真ですっかり見慣れていたライムイエローメタリックのボディを見た時、少し懐かしさを感じてしまった。
ようやく、8世代目となる新型フォルクスワーゲン・ゴルフを試乗できる日が来たのだ。2019年の終盤には本国デビューを果たしているので、コロナ禍等々により1年半近く時間が経ってしまったことになる。
プラットフォームはVWでおなじみのMQBであり、サイズ感や基本的なスタイリングは先代とあまり変わらない。
ゴルフはひと目でそれとわかるよう、意匠の変化を最小限にとどめて世代交代してきたので、これは歓迎すべき点だろう。
新しく導入された少し線の細いVWマークや、リアのマーク下に新たに入れられることになった「GOLF」のロゴ、LEDありきでデザインされた細めのヘッドランプ等により新しさを演出している。
外観よりも気になるのは室内だ。
英国編集部では新型ゴルフを既に長期レポート車として購入/導入しており、大幅に簡素化されたインターフェイスに賛否両論が渦巻いている。
ダッシュパネルのデザインが良くも悪くも気になった。直線的でのびのびした感じは高級感があるし、樹脂パーツの仕上げも頑張り過ぎていないあたりがゴルフらしい。
だがクルマのコクピットとして見ると、何かが足りないような気がする。特にダッシュ中央、モニター下のスイッチがハザードを含めて5つしかないのが心許なく感じられる。
それでもスタートの所作が変わったわけではない。さっそく走りはじめてみよう。
ドイツ的質感より、効率の良さを強調
新型ゴルフのグレードは4種類。今回ドライブした1.5Lの4気筒ターボを搭載するゴルフeTSIスタイルは、上級グレードに含まれる。
新型ゴルフは1L 3気筒でも1.5L 4気筒でも48Vのマイルドハイブリッドだが、エンジンスタートから走り出す瞬間まで見た目や音などで「電気」の存在を感じることはない。
だが走りはじめの滑らかなトルク感や、ターボラグをほとんど感じない直線的なパワーデリバリーは必要にして充分といえる。
1.5Lターボの苦手な回転域をモーターがちゃんとリカバリーしている感じがわかるのだ。
一方シャシーは先代よりもさらに軽く、硬く感じられた。試乗する前に開口部をチェックしていて、「ホントに大丈夫?」とこちらが心配になるくらいパネルが薄く感じられる場所があった。
先代よりも明らかにメリハリのある素材使いをしているようだが、それが「軽くて硬い」印象に繋がっている点はさすがだ。
トルクバンドが広いパワーユニットと7速DSGのギア捌きは煮込み過ぎたビーフシチューの如しで、いい意味で存在感がない。
車重は先代より40-50kgほど重くなっているはずなのだが、感覚的には逆に50kgくらい軽くなったように感じる。
軽い分だけ、先代よりもドイツ的良いモノ感(重さ由来の硬さ、塊感)は減っているのだが、新型ゴルフはそれを補ってあまりあるほどの未来感で溢れている。
上質というより、運転していてエラく効率がよい感じ。タイヤのゴムとか燃料があまり減らないような、滑りのよさがあるのだ。
全身に宿る未来感 5年後でも通用?
未来感溢れる走りの完成度は、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)をはじめとするADASによって決まる。
先代は渋滞時という条件付きだったが、新型は全車速追従にグレードアップしていた。
VWが「トラベルアシスト」と呼ぶACCとレーンキープを合わせたシステムは、自動でおこなわれるステアリング操作がとにかく緻密。早めに小さい舵を当てるので安心感がある。
ACC使用時の1.5Lエンジンも、シフトダウンして急加速みたいなこともなくジェントルな速度調節に徹している。Cセグとかハッチバック車としては現状最高レベル。
一般道のきついカーブの追従ではBMWのそれに一歩劣るが、高速道路で使う限り、その完成度は高かった。
小一時間ほど運転していると、シンプルな操作系にもほぼほぼ慣れてきた。われわれ世代(アラフィフ)は日頃からスマホの身勝手な(笑)OSアップデートで鍛えられているからかもしれないが、すぐに直感的に扱えるようになる。
運転免許を取る前からスマホを扱っている世代なら、より自然に溶け込めるはずだ。地図の縮尺変更などはセンターモニター下のタッチスライダーに指2本(1本はボリューム操作)で触れて直感的に操作できるのだ。
ゴルフは流行り廃りで買うものではなく、2回くらい車検を更新してじっくり乗るというオーナーも多いはず。
これから5年後の自動車世界ほど読みづらいものはない。けれど新型ゴルフの出来を考えれば、5年後に強い型遅れ感を感じることはないと言い切れる。
フォルクスワーゲン・ゴルフ 1.5 eTSIスタイルのスペック
価格:371万円
全長:4295mm
全幅:1790mm
全高:1475mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1360kg
パワートレイン:直列4気筒1497ccターボ+48Vマイルドハイブリッド
最高出力:150ps/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kg-m/1500-3500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ
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