■これは先代とは別物ですね! 新型クロストレックの凄さがわかった
2022年9月15日にスバルは新型「クロストレック」を世界初公開しました。
日本市場では、「XV」から車名を海外で使用されるクロストレックに統一される形で登場します。
そうしたなかで、新型クロストレックはどのような進化を遂げたのでしょうか。
【画像】もはやこれは「スポーツSUV」じゃない? 新型クロストレックの実車を見る!(41枚)
2022年、スバル「XV」は発売10周年を迎えました。
元々XVはインプレッサの販売が伸び悩む欧州/中国からリクエストを受けて開発されたモデルでしたが、蓋を開けてみると世界的にヒット。
ベースのインプレッサを超える販売台数を記録し、ニッチモデルから基幹モデルへと昇格。
現在はアウトバック、フォレスターと並んで、スバルのビジネスをけん引する重要な1台となっています。
そして、次の10年に向けた皮切りのモデルとなるのが新型になります。
最大の変更は、これまで慣れ親しんだ「XV」から北米仕様と同じ「クロストレック」に変更したことです。
ネーミングを世界共通にしただけと思われがちですが、実は新型は従来モデルと「立ち位置」が異なります。
XVはインプレッサベースの派生モデルでしたが、新型はクロストレックがメインで、今後の登場するであろう次期インプレッサがクロストレックの派生モデルとなります。
つまり、クロストレックは「クロスオーバー最適設計で生まれた初めてのモデル」というわけです。
日本発表は今秋、それに合わせて先行受注がおこなわれる予定ですが、それに先駆けてプロトタイプ(ほぼ量産仕様)に試乗してきました。
エクステリアはXVの「伝統」とレヴォーグ/WRX S4の「斬新さ」がバランスよく融合したデザインだと感じました。
具体的には立体的な造形の大型ヘキサゴングリルと鋭さを増したヘッドランプで構成されるフロント、ボリューム感が増した前後フェンダーと前傾したスポーティなフォルムが特徴のサイド、そしてリアに向けて絞り込まれた引き締められたキャビンを実現。
さらに、より立体的で存在感を強めたクラッディングの組み合わせにより、スバルSUVのなかでもっともダイナミックなスタイルです。
気になるボディサイズは全長4480×全幅1800×全高1580(ルーフレール無は1550)mm、ホイールベース2670mmと従来モデルとほぼ同等なのは嬉しいポイントのひとつとなります。
インテリアは大型センターインフォメーションディスプレイを中央に配した新世代スバル共通のインターフェイスを採用していますが、それ以外はオーソドックスなデザインです。
要するに機能性と使い勝手が重視されていますが、インパネから独立&上面を高くしたセンターコンソールによりSUVの力強さや骨太感を演出。華美な装飾などは採用していませんが、各パーツの調和はシッカリ取れているので質感は先代よりも高く感じます。
加えて、鋭角にデザインされたドアトリムや斜めのモチーフを採用したカップホルダー/シフト周りなど、実用性を損なわずにちょっとしたアソビ心がプラスされているのもポイントでしょう。
個人的にはカップホルダーはデザイン/使い勝手共に今年出たニューモデルのなかでもっとも優れていると感じました。
外から見ると、絞り込んだキャビンや低いルーフラインなどで後席の居住性やラゲッジスペースが犠牲になっているように感じますが、パッケージの工夫で従来モデルと同等のスペースが確保されています。
ちなみにリアゲート下部やサイドシルプレートの山をモチーフとしたテクスチャーは、これは単なる意匠性でなく滑り止めやキズ防止の効果を持たせた機能部品という位置づけです。
■乗って分かるその違いは「一目瞭然」
走りはどうでしょうか。
今回の試乗場所である伊豆サイクルスポーツセンターは、アップダウンが厳しい上に連続するコーナーなど、どちらかというとスポーツ系モデルの試乗で使われるステージです。
実は乗る前は「クロストレックのいい所、この場所で出るかな?」、「進化したといってもSGP→SGPは伸び代あるのかな?」と心配しましたが、乗ったらビックリです。
プラットフォームはフルインナーフレーム構造の次世代SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)ですが、構造用接着剤の適用拡大やサスペンション取り付け部剛性アップ、ルーフパネルとブレースの間に制振性に優れた弾性接着剤(高減衰マスチック)を採用するなど、最新の知見・技術が採用された進化版です。
加えて、2ピニオン式の電動パワーステアリングやサスペンションセットはオン/オフ性能を両立させるセットアップ、タイヤはファルケンのオールシーズンを履きます。
ハンドリングは「君はスポーティハッチ?」と呼びたくなるレベルです。ステア系は操舵力も軽めで穏やかな特性ですが、まるでいいベアリング、剛性の高いシャフトを使っているかのような、滑らかさと骨太感、フィルターの数が少ないような直結感の高さから、扱いやすいのに信頼できる印象です。
コーナリングはまさにSUV感ゼロです。より4輪を効果的に使っている感じに加えて、最低地上高200mmを感じない一体感の高さが印象的です。
その走りに「SUVという枕詞が不要」と思うくらいレベルです。筆者は先代を高く評価していましたが、乗り比べると「SUVとしてはいいよね」だったことに気が付きました。
その要因のひとつが「ロールしているのにロール感が少ない」です。具体的には旋回時に横G発生→クルマの動きとドライバーの動きにズレが無い→グラっと傾く感覚がない→より正確な操作が可能→一体感を感じやすい→クルマとの信頼関係がより高まるというわけです。
恐らく、意のままに操れるという意味では、先代インプレッサSTIスポーツを軽く超えるレベルです。
伊豆サイクルスポーツセンターの路面には白線が敷かれていますが、その白線をスポーツモデル並みに速く、正確に、そして楽にトレースできるクロスオーバーSUVは少ないと思います。
さらにいうと決してサマータイヤと比べるとグリップが劣るオールシーズンタイヤを履きながらも、そのネガを感じないどころか、そのタイヤの限界ギリギリまでシッカリ使える懐の深さも実感。
仮にサマータイヤを履かせたら、クロストレックSTIスポーツになってしまうかもしれません。
これだけ書くと「つまり、よりスポーティにしたのね?」と思われがちですが、快適性はむしろ高められています。
単純に硬い柔らかいではなく、乗員に無駄な動きをさせない(目線だけでなく体全体)、ショックを吸収する際の減衰の仕方(ズン→トンくらいの違い)、ビビり/振動だけでなく不快な音の抑制などにより、どこかスッキリ&さわやかな乗り心地になっています。
これらはルーフパネルとブレースの間に減衰性を持った弾性接着剤(高減衰マスチック)の採用で強さだけでなくしなやかさを持たせたボディ構造の採用でコーナリング一連の流れがより滑らかになっていること。
フレームが一新された仙骨を支えるシート構造によりドライバーがどんな状況でも正しい姿勢を維持できること。
従来と同じAWD(ACT-4)ながらも後輪を積極的に活用する駆動力制御、ロールを抑え込むのではなく上手に活用させたサスペンションセットなどなど要因はいくつかあると思います。
しかし、個人的には「機能としていい」よりも「クルマとしていい」という気持ちのほうが大きいです。それはつまり「総合力が高い」ということです。
恐らく、今まで以上に各機能が連携してクルマづくりがおこなわれていると分析していますが、エンジニアのなかにSDA(スバル・ドライビング・アカデミー)出身者がいると聞き、納得しました。
SDAはエンジニアの運転スキルや評価能力を高める活動ですが、その本質は「クルマ全体を知ること」。
その活動の成果がクロストレックにもシッカリと入っていると思うと、感慨深いです。
パワートレインは2リッター自然吸気+1モーターの「e-BOXER」です。
ハード的には先代と同じですが、制御系は第3世代となっており、乗ると「これ、いいね!!」といえるくらいの進化を実感。
具体的にはモーターをより積極的に活用する制御で、過渡領域においてアクセル開度が少なめかつ3000回転くらいまでの力強さは確実にアップ。
アシストの仕方もより自然になっています。もちろん、絶対的なスペックは先代と同じなので全開にするとそれなりですが、実用域での走行では力不足を感じることはありませんでした。
発生するノイズの低減はもちろん不快な音域が上手にカットされており、直近の自然吸気ボクサーにはない濁音の少ない澄んだサウンドを奏でます。
失礼ながら、筆者これまで自然吸気のボクサーエンジンに“心地よさ”を全く期待していませんでしたが、クロストレックで初めて心地よさを感じました。
■なぜクロストレックにはFFが設定されているのか?
クロストレックでは先代に設定されていた1.6リッター自然吸気が廃止されましたが、その代わりにFFが用意されています。
開発責任者の毛塚紹一郎氏は「価格訴求の面もありますが、スバル入門編モデルとしては選択肢が必要だと考え設定しました」と語っています。
走りの差は少なくAWDと比べると、ハンドリングはより軽快な動き、乗り心地は少しだけハリがあるスポーティさを持つといった印象でした。
これで実用燃費がAWDに対して良ければ、タウンユース主体の使い方であればアリな選択だと思います。
なかには「電動化が著しいなか、e-BOXERだけでは厳しいのでは?」という意見があるのも事実でしょう。
すでにスバルは中期経営計画でトヨタのTHSIIを活用したストロングハイブリッドの投入を公言していますが、恐らくクロストレックにもどこかのタイミングで追加設定されるだろうと予想しています。
今回はチェックすることができませんでしたが、安全性能はレヴォーグから採用される新型ステレオカメラに加えて、国内スバル車初となる広角単眼カメラ(ステレオカメラより広角で二輪車/歩行者検知が可能)がプラスされた最新のアイサイト(社内ではバージョン4と呼んでいる)を採用。
さらに一部グレードにはマルチビューモニターやスバル車初採用となるLEDコーナリングランプなども搭載。
より引き上げられた衝突安全性能も含めて、全方位で安心・安全の確保がおこなわれています。
※ ※ ※
世界初公開以降、SNSでは「マイナーチェンジ?」、「代わり映えがしない」という意見も耳にしますが、乗るとハッキリいって「別物」です。
とくにXVユーザーは嫉妬するレベルで、個人的には初代レヴォーグ→2代目レヴォーグくらいの伸び代を感じました。
社内では「あまり変わっていない?」が半分、「やりすぎじゃないか?」が半分のようですが、筆者は見た目も走りもいい塩梅に仕上がっていると思います。そう、これが次世代のスバルスタンダードです。
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みんなのコメント
マイナーチェンジにしか見えない。
ナビ画面以外は。
後席の窓が狭くて視界が良くないだけでなく、視界の狭さからくる快適さがないのは他社と同様で違いが見いだせない。
水平対向エンジン他社との違いが見いだせないこの会社は多分生き残れない。そう考えると初代インプレッサSWのフォルムは良かったと思います。