運転していて楽しいクルマを指す際によくいわれる言葉「人馬一体感」。
なんとなくイメージはできるが、ではどのような特性を持つクルマのことをいうのかと言われると、急にわからなくなる。
地味にホンダを支える?? やっぱり「最高にちょうどいい」?? ホンダフリードの中古車がアツい
そんな「人馬一体とはなにか」を検証すべく、エンジンパワーも駆動方式もバラバラの4台のクルマを用意。
レーシングドライバーの山野哲也氏に試乗してもらい、氏の考える「人馬一体」観にもとづいて評価してもらった。「人馬一体」王に輝くのは、はたしてどのクルマなのか!?
※本稿は2019年4月のものです
文:ベストカー編集部/写真:平野 陽
初出:『ベストカー』 2019年5月10日号
■山野哲也の考える「人馬一体」。その考えに最も寄り添うのは……
ベストカー:まずは山野さんが考える「人馬一体」とはどういうものかを教えてください。
《山野哲也氏》全日本ジムカーナで前人未踏の100勝を達成したジムカーナキング。スーパーGT、GT300クラスでも3年連続チャンプとなった
山野哲也(以下、山野):イメージ的にはドライバーがクルマを運転しているという意識を忘れてしまえるくらいに、人間と一体化しているクルマ。もしくはその逆で、クルマの一部に人間がなってしまえるようなクルマですね。
ドライバーが意識せずとも体が自然に動いて、その状況にふさわしい動作をする。クルマはその動作を反応の遅れや、ドライバーのイメージした動きとのズレなく走る。そういったことで人馬一体感というのが生まれると思います。
試乗の舞台は箱根ターンパイク。中高速コーナーが多いため、エンジンパワーもある程度あったほうが、気持ちよく走れる
■マツダ ロードスターRS(価格:325万6200円)
132ps/15.5kgmを発生する1.5Lエンジンのパワー不足が指摘されたが、乗り方さえ間違えなければいい仕事をする足回りもあって、ハンドリングは高評価を得た
ベストカー:今回用意したクルマを、今教えていただいた人馬一体観にもとづいて評価すると、どのようになりますか。
山野:まず最初に、今回の評価は今回試乗した条件の範囲に限定されることを言っておきます。気温は5~7℃、路面はウェットという状況は、特にタイヤには優しくない状況です。そういった条件下で考えた場合、ロードスターは少し厳しかったですね。
ベストカー:えっ!? 一番「人馬一体」を謳っている、マツダのクルマですよ?
山野:今回試乗したターンパイクの上りのようなシチュエーションでは、パワーが足りないんですよね。それはドライバーをワクワクさせる要因が、ひとつないということ。NAエンジンなので高回転域の伸びは気持ちいいですけども、やっぱりパワーはもう少し欲しいです。
ドライバーの意思が繋がったかのように動く。「人馬一体」はそういったクルマに感じられる
ベストカー:ではハンドリングは?
山野:タイヤの面圧をキレイにかけて走るのがいい、というのをクルマが伝えてきていますね。そうではない、ロードスターが得意ではないサスペンションの動かし方をすると、スナップするような動きとか、バイクでいうとハイサイドを起こすような動きが出てきます。
ベストカー:ダメですか。
山野:ダメじゃないんです。ロードスターの足回り、アームの作り方っていうのは、半端じゃなくお金がかかってて、モータースポーツシーンでは速い。ですからペダル操作による縦方向の動きと、ステアリングによる横方向の動きの連携とか配分を、ちゃんとタイヤが好むようにやってね、というのをクルマ側から伝えてきてるということですね。
●ロードスターRSの人馬一体度:70/100
■ホンダ シビックタイプR(価格:450万360円)
搭載する直4、2Lターボは320ps/40.8kgmを発生。圧倒的なパワー感でエンジンフィールは最高評価を獲得。オーバーステアを作り出せるハンドリングも高評価
ベストカー:そういうことをちゃんとやれれば人馬一体感があるということですね。では次はどのクルマにいきます?
山野:シビックタイプRにしましょう。タイプRは今回の、低い気温に雨という条件に強いタイヤを履いてましたね。コンチネンタルですが、ゴムが柔らかいんですよ。試乗を終えて帰ってきたらタイヤから湯気が出てた。それだけ発熱性がいいということです。冷たい雨の中でも発熱するということで、条件問わず速く走れる。そういう意味も含めて一体感がありました。
ベストカー:タイヤのグリップが強力なことによって、安心感があるということですか?
山野:安心感はあります。ですが3速でもホイールスピンするくらいエンジンパワーが凄い(笑)。パワーは本当に強烈ですね。ジェット機かっていうくらいの加速度。人間をワクワクさせるものを持っています。でもそのパワーを使い切るのはけっこう難しくて、MTを上手く使いこなさないと、ターボラグが出る。
ドライビング環境も重要。シビックタイプRはスイッチ類を極力少なくし、運転に集中できる環境としている点が評価された
ベストカー:人馬一体という意味では、あまり評価できない?
山野:少し怖いくらいのパワーがあるから、人馬一体というのからはちょっと外れるところはある。でも、楽しい。例えば競走馬で考えた場合、破格のパワーを最後の直線で出す馬がいたとしたら、1位になれる。それは騎手に自信を与えてくれますよね。このクルマも一緒で、ドライバーに自信を与えてくれます。
ベストカー:足回りはどうですか?
山野:クルマの重さを感じられる部分があって、操舵すればするほど、重いフロントに対してタイヤが頑張ろうとしている雰囲気が伝わってくる。でもこのクルマのいいところはそこでスッポ抜けないで、必ずグリップしたまま外にはらむんです。
さらにブレーキを残したままコーナーに入ると、ちゃんとオーバーステア傾向になる。このサイズのクルマでオーバーステアにできる仕様にしたところは、人馬一体として評価したいですね。
●シビックタイプRの人馬一体度:75/100
■スズキ スイフトスポーツ(6AT/価格:190万6200円)
6MTなら183万6000円、6ATでも190万6200円と、現在の日本車のなかではリーズナブルな価格設定がされていることもあり、多方面で高く評価されるスイフトスポーツ。山野氏が6ATの切れ目のない加速を高く評価したこともあり、人馬一体度で2位を獲得した。実際の速さでもATのほうが速いだろうとのことで、スイスポ買うならAT狙いでいいかも……
ベストカー:お次は今回用意した4台のなかで唯一のATとなったスイスポでお願いします。
山野:スイスポは人馬一体感ありますね。その人馬一体感はアクセラレーション、いわゆる加速のしかたが凄いドライバーの右足と連携していて、踏んだら踏んだだけ前に出る。僕はMTにも乗ったことありますが、ATのほうが加速感が強い。そういうクルマってあんまりないんですよ。
ベストカー:MTとの加速度の違いはどこからくるのでしょう?
山野:ターボってアクセルを緩めるとタービンの回転が1回落ちて、そこから元の回転に戻るまで2秒くらいかかるんですね。でもATだとアクセル全開のまま勝手にシフトアップしていくんで、そこでしょうね。その切れ目のない加速、アクセルに瞬時にクルマが反応するっていうのは、人馬一体度が高いと感じます。
あ、あとブレーキがすごい効きます。特にデカいブレーキがついてるわけでもないのに、あのストッピングパワーには唸らされましたね。
〈スイフトスポーツはATのほうが人馬一体?〉人馬一体というと、とかくすべての操作がマニュアルのほうがいいと考えられがちだが、山野氏はスイスポのATを高く評価。シフト操作の間にタービン回転数が落ちるMTよりも、高回転を維持したまま変速するATの切れ目ない加速を評価したわけで、デキのいいATならヘタなMTよりも楽しいという好例といえる
ベストカー:コーナリングとかはどうですか? これはMTもATもさほど差がないと思いますが。
山野:ここが少しもったいなくてですね、ステアリングを切ると、すごい時間をかけてロールしていくんですね。すぐに曲がろうとするんじゃなくて、先にロールをして、ロールが止まった後にクルマが曲がり始める。
フロントのロールが終わるとオーバーステアが出て、リアがきれいに流れるんだけど、ドライバーはたぶんちょっとビックリすると思う、時差があるから。でもまぁ車両の金額のこととかも含めて考えると、いいクルマだと思いますよ。
●スイフトスポーツの人馬一体度:80/100
■アルピーヌ A110リネージ(価格:829万円)
ステアリング操作で横Gが入った瞬間に向きを変えようとするハンドリング、アンダー/オーバー自由自在の高いコントロール性などで人馬一体度は最高評価を獲得。一方、今回の評価には含まれなかったが、内装のセンターコンソール部におけるスイッチ配置には「わかりづらい」と低めの評価が与えられた。ボタン式のシフト選択も山野氏的には×
ベストカー:残るはアルピーヌです。
山野:凄いですね。操作に対する反応の遅れがない。あの時差のなさは、今回乗ったほかのクルマにはないものです。いわゆる体がクルマの一部になっている雰囲気を醸し出すほどのつながり感というか、ドライバーの手足の先にタイヤがあるというか、人馬一体感が強烈にあります。
ベストカー:そんなにですか!
山野:ステアリングを切って横Gが入った瞬間にタイムラグなく「オラァ!」ってフロントが入るんですよ。そういうクルマって普通サスペンションが硬いんですけど、あのクルマは速度が出れば出るほど、しなやかさが出る。縦Gに関してはストロークするけど、横に関してはまるでカートみたいな反応をしますね。
ベストカー:アルピーヌ並みの人馬一体感を出すクルマってほかにあります?
山野:あります。マクラーレンです。マクラーレンは安いモデルでも2500万円くらいしますが、その感覚がアルピーヌにあります。もちろんパワーは違いますが、アルピーヌのパワーも車格に対しては充分でしょう。
ベストカー:でも評価すべきはパワーではなくハンドリングだと。
過剰なエンジンパワーは楽しいが、人馬一体とは違う。だがローパワーでも人馬一体感は損なわれる。その塩梅が難しい
山野:アンダーステアもオーバーステアも、ドライバーが自由自在に作れるんですよね。これくらいフロントが入るクルマだと、全部オーバーステアになるんじゃないかと思うけど、決してオーバーにならない。
それでいてオーバーにしたいなと思ってステアリング切ると、ちゃんとオーバーになる。ドライバーの意思がクルマの動きに繋がってる。ヤバイですよ、コレ(笑)。
●A110リネージの人馬一体度:90/100
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