2030年までに全モデルを電動化するという目標を掲げたボルボ。今回の特集では、その目標に向けて前進するボルボの最新ラインナップたちの実力を検証してみたい。そうしたモデルの中でも、ボルボ初のBEV専用モデルとして登場した「C40リチャージ」は、オンライン販売やサブスクリプションを導入するなど、次世代のボルボを象徴するまったく新しいモデルと言える。果たしてその実力はどういったものなのだろうか。 C40国際試乗会にも参加した大谷達也氏が国内でも試乗、あらためて感じた印象を報告する。(Motor Magazine 2022年6月号より)
デザイン性を重視して開発されたBEV
「C40リチャージはボルボにとって初のBEV専用モデルです」──2021年10月にベルギーで行なわれたC40国際試乗会の冒頭、ボルボのスポークスパーソンはそう語り始め、そしてこう続けた。
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「ご存じのとおり、ボルボは2030年までに全モデルをBEVにする目標を掲げており、C40はこの長い旅路の第一歩を記すモデルとなります。その意味でもC40はボルボにとって極めて重要な存在といえるでしょう」
もっとも、C40はあくまでも「ボルボ初のBEV専用モデル」であって「ボルボ初の量産BEV」ではない。というのも、C40と屋台骨を共有するXC40のBEV版が欧州でひと足先に発売されているからだ。
それでも、エンジンを搭載する計画のないC40は、今後のボルボを象徴する記念すべき1台といって差し支えない。ボルボのスポークスパーソンが「C40はボルボにとって極めて重要」と語ったのは、そういった背景があったからだろう。
同スポークスパーソンは続けて「C40の開発ではとくにデザイン性を重視しました」と語った。「それも表情豊かで最先端なデザインとすることを目指しました」・・・その結果として選ばれたのが、SUVクーペというコンセプトだった。
全高をXC40より65mm低い1595mmとした上で、ルーフの中ほどからボディ後端にかけてなだらかに下降するファストバックのスタイリングを採り入れ、スクエアなデザインのXCとの差別化を図ったのである。この結果、C40はより躍動的で先進的なイメージを手に入れたといっていいだろう。
BEV用に専用設計されたCMAプラットフォームを採用
C40の開発が始まったのは、およそ3年前。そのプラットフォームはXC40と同じCMAだが、実際に用いられている部品は、エンジン車やPHEVのXC40とは大きく異なっている。
実際、コンベンショナルなXC40と共通な部品はストラットタワー、フロントフロア、サイドメンバー、ボディサイドくらいで、ほかの部分はBEV用に作りかえられている。その最大の理由は、エンジンの有無により、クラッシュテスト時の負荷のかかりかたが大きく変わることにあった。
ボディ開発を担当したエンジニアによると、エンジン車やPHEVでは、フロントにエンジンやギアボックスなどを搭載している関係でエネルギーパス(クラッシュ時の衝撃を伝達する経路のこと)が途中で途切れてしまう。これに対して、C40ではフロントセクションの上下にアルミダイキャスト製のクラッシュビームを配置。
このクラッシュビームをいずれも直線的な形状とすることで、フロントからのインパクトをしっかりと受け止めることが可能になったという。さらに、下側のクラッシュビームで受け止めたエネルギーは、フロアを構成する井桁状のフレームに伝達され、ボディ各部に分散される。こうすることで、フロアに搭載したリチウムイオンバッテリーの損傷を防ぎ、火災などを防ぐ効果があるそうだ。
ちなみに、BEV専用に設計されたフロアは真っ平らで、いかにもたくさんのバッテリーが積めそうだが、実際には、フロントタイヤやリアタイヤとバッテリーの間に大きなマージンを設けることで、アクシデントの際にも高い安全性を確保している。
もっとも、ここであまり余裕を見積もりすぎてもバッテリー容量が不足してしまうので、センタートンネル部分やリアシートの下側はバッテリーを2段重ねとして、安全性を担保しつつバッテリー容量を最大限、拡大することに成功。ちなみに、コンベンショナルなXC40とC40の部品共用率は50%を大きく下回るとの説明を受けた。つまり、プラットフォームは同じCMAでも、C40のものはBEV用に専用設計されたといっても過言ではないのだ。
体感上の「速さ」はXC90を凌いでいるかもしれない
サスペンション形式は、フロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンクとなるのは既存のXC40と同じ。いっぽうでパワートレーンがまったくの別物であることはいうまでもない。
今回、日本に導入されたC40リチャージ ツインは前後車軸に1基ずつ、計2基のモーターを搭載した4WD仕様で、最高出力は408ps/4350−13900rpm、最大トルクは660Nm/0−4350rpmを誇る。なお、C40に搭載されるのは高性能で制御性に優れたシンクロナスモーターである。
既存のボルボで最強のパワートレーンといえばXC90やV90に搭載されるシステム合計出力462ps
/709NmのT8だが、C40はモーターが素早く立ち上がるため、体感上の速さはそれよりも上だ。ちなみに欧州で発表されている0→100km/h加速タイムは4.7秒だから、ちょっとしたスポーツカー並みの速さだ。いっぽうで最高速度が180km/hに制限されているのは最新のボルボに共通するスペックで、同社の安全思想を反映したものといえる。
27のモジュールからなるリチウムイオンバッテリーの総容量は78kWhで、このうち75kWhが実際に使用可能な容量とされる。また、日本のカタログには電力消費量が187Wh/h、一充電で485km(WLTC)の走行が可能と記されている。
なお、C40には追って前輪駆動モデルも登場する。こちらはフロントに最高出力231psのモーター1基を搭載。バッテリー容量は69kWhとやや小ぶりで、航続距離は欧州で434km(WLTP)と発表されている。
スタイリッシュなデザインと優れたパッケージングを両立
続いて、C40のパッケージングについて紹介しよう。前述のとおり、C40の全高はXC40より65mm低い1595mmだが、シートポジションはC40とXC40で共通とされた。ただし、このままではXC40に比べて頭上のスペースが減少するので、C40では全車にパノラマガラスルーフを採用。ルーフライナーを省略することで十分なヘッドクリアランスを確保するとともに、視覚的にも明るく広々としたインテリアを実現した。
また、ルーフは両サイドが盛り上がった形状で、これがそのままルーフ後端まで伸びてルーフスポイラーを形作っているが、実は、このデザインはハッチゲートを固定するヒンジを覆い隠すことにも役立っているという。
このルーフスポイラー部分に続く格好で、ハッチゲートの両脇を美しく飾っているのがリアのコンビネーションライトである。左右のテールライトはハッチゲートに沿って下降したあと、グラスエリアが終わったところで外側に大きく広がってから再び下降を始め、最後は度折れ曲がり、ハッチゲートの内側に向かって進むという複雑な形状。
これだけ大きく長いコンビネーションライトの場合、どこかで分割しないと生産性が極めて低くなるが、だからといって分割すれば灯りの連続性が失われてデザイン性が低下する。
そこで採用されたのが、ハッチゲートの両サイドをストロボパターンとするアイデアだった。こうすれば、コンビネーションライトの分割部分も気にならずに済む。
レザーフリーのインテリアとシンプルで扱いやすい操作系
基本的なインテリアデザインはXC40と共通だが、C40の内装材は全モデルでレザーフリーとされた。同様のコンセプトはすでにファッション界で広く採用されているが、その最大の理由は「動物を殺してその皮を剥ぐのはあまりに残酷」という動物愛護の精神に根ざしている。
また、家畜を育てる牧畜業や酪農業は温室効果ガスの排出源となっていることにも関係がある。たとえばレザーの原料として広く用いられる牛は、呼気と一緒にCO2を吐き出すほか、その「ゲップ」にはCO2の倍もの温室効果があるメタンガスが含まれている。
このため、牧畜業や酪農業が排出する温室効果ガスは、人類の営みから生まれる温室効果ガス全体の14%を占めるとの統計もあるほど。こうした観点からボルボは今後発売するBEVは全車レザーフリーとし、地球温暖化防止に貢献する姿勢を示しているのだ。
レザーの代わりに今後ボルボが積極的に採用しようとしているのが、マイクロテックと呼ばれるヌバックによく似た素材。これはペットボトルなどからリサイクルしたもので、環境に優しいうえに軽量なのでBEV航続距離を伸ばす効果も期待できるという。
また、一部ボディカラーと組み合わされるドア内張りのフィヨルドブルーはうっすらとグレーがかった落ち着きのある色調で、C40のキャビンに個性的な彩りを添えている。なお、最終的な量産仕様として日本に持ち込まれたC40は、私が国際試乗会でテストした先行量産モデルに比べて質感が大幅に向上していたこともあわせて報告しておきたい。
操作系はシンプル&イージーの思想を採り入れ、システムを立ち上げるメインスイッチさえ省略された。長年、キーをひねってエンジンを始動させてきた向きは戸惑いを禁じ得ないかもしれないが、慣れてみれば、ひと手間省ける利便性を実感できることだろう。
インフォテインメント系にGoogleアプリ/サービスを採用したのも、同様の思想の延長線上にある。ナビゲーションシステムや各種アプリケーションを、Googleアシスタントという音声操作システムで一括してコントロールするため、操作性は極めて良好。いうまでもなく、シンプルな操作性は安全性の向上にも役立つ。その意味でも、極めてボルボらしい発想といえる。
もちろん、先進安全装備の充実振りは目を見張るばかり。車両だけでなく歩行者やサイクリストまで検知する衝突回避・被害軽減ブレーキを装備するほか、車線維持支援機能を備えたパイロットアシストなどを全車に搭載。そして最新装備として先行車発進告知機能やリア衝突回避・被害軽減ブレーキシステムを追加採用し、さらなる安全性を追求している。
環境問題、安全性、そして優れたデザイン性を兼ね備えたCは、まさにボルボの未来を象徴するモデルといえるだろう。(文:大谷達也/写真:永元秀和)
◎参考:電気自動車購入時の減税と補助金
電気自動車の購入時には、環境負荷の程度に応じた税金の優遇制度や補助金制度が適用される。C40の場合は、「環境性能割」による自動車取得税の減税、「エコカー減税」による自動車重量税の減税、「クリーン化特例」による自動車税の減税、そして国の「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」の対象となっている。住んでいる地域によってはこの他に地方公共団体の補助金の対象となる場合も。
【C40リチャージ ツインの場合(車両価格 719万円)】
優遇額合計 90万6400円
(内訳)
環境性能割減税額 17万6400円
自動車重量税減税額 6万1500円
自動車税減税額1万8500円
令和3年度補正予算補助金額 65万円
ボルボ C40リチャージ ラインナップ(2023年モデル)
C40リチャージ アルティメイト ツインモーター:699万円
C40リチャージ プラス シングルモーター:599万円
ボルボ C40リチャージ ツイン 主要諸元(2022年モデル)
●全長×全幅×全高:4440×1875×1595mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:2160kg
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:300kW(408ps)/4350-13900rpm
●モーター最大トルク:660Nm/0-4350rpm
●バッテリー総電力量:78.0kWh
●WLTCモード航続距離:485km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:前235/45R20、後255/40R20
●車両価格(税込):719万円
[ アルバム : ボルボC40リチャージ はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
EVのすごさを思い知った。
これからはEVの踏み間違い大惨事が心配になる。
街中全部がEVになったらかなり静かな環境になりそうだ
あ、珍走団がいるから無理か