世界的ブームのSUVに火をつけた日産
いま、欧州と日本を席巻しているコンパクトクロスオーバーSUVブーム。爆発的なSUVブームの発祥は90年代のアメリカだが、その後2000年代に入って欧州へ飛び火。さらに日本でもめきめきとSUVの販売台数が伸びている。そして振り返り見れば、なんと日産のSUV登場がこの流れを大きく変えていたのだった。
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アメリカと欧州 SUV立ち上がりの違い
ブームの発信元であるアメリカと欧州&日本では同じSUVブームでもその内容は大きく異なる。
北米では当初フォード・エクスプローラーをはじめとするフレーム付きの中型(エクスプローラーは90年代のモデルでも全長5mに迫るが現地のサイズ分けでは中型に相当する)が中心だった。
しかし、2000年代に欧州でSUVブームに火が付いたときはまず、コンパクトクロスオーバーSUVがブレイクしたのだ。フォルクスワーゲンゴルフの代わりに乗れるような、Cセグメント2ボックスハッチバックの街乗りSUVである。
その直前、欧州ではBMW・X5やポルシェ・カイエンなど、悪路をイメージさせるアメリカンSUVとは異なる舗装路中心のSUVの波が起きてはいたが、それらは大型かつ高価で台数は限られた。しかもメイン市場としてアメリカをターゲットにしたものだった。
欧州でブレイクのデュアリス
そんななか、X5やカイエンのデビュー後に、欧州において独自の商品企画で大ヒットSUVを生み出したのが日産だ。「キャシュカイ」(日本名デュアリス)である。
2007年に発売された初代キャシュカイは、当時はそのマーケットがほぼなかった(一部車種は存在したがニッチ市場であった)だけに実験的な車種ではあったが、あれよあれよという間にヒット街道を爆走。欧州向けの日本車で4年連続トップセールスに輝くほどの人気車となり、少し遅れて登場のフォルクスワーゲン・ティグアンをはじめとする多くのフォロワーを生んだ。
キャシュカイは販売開始からわずか3か月間で6万台のオーダーが入り、生産開始から1年の間に2回も生産キャパシティを引き上げたと言えば、その人気がどれだけ日産自身の想定を超えたものだったか想像できるだろう。欧州でCセグメントクロスオーバーSUVの流行を生んだのは、日産なのだ。
新たな市場へジュークも先陣をきった
そんなキャシュカイの登場から3年後の2010年2月、その後の欧州マーケットを大きく変えることになるSUVがまたしても日産からデビューした。「ジューク」である。こちらはキャシュカイよりもひとまわり小さなBセグメントで、ライバルのいない新しい市場へのチャレンジだった。
そんな日産の挑戦は、個性的というか「アグリー(不格好)」なスタイリングが猛烈な存在感を放っていたことも効いてか大成功。それまでなかった「BセグメントクロスオーバーSUV」という市場を作り出すことになったのだ。
あれから10年。いま欧州ではBクラスセグメントの半分弱がクロスオーバーSUVという状況になっている。それはなんと、Bセグコンパクトカーを買う2人に1人がSUVを選んでいるということだ。
過去を振り返るのに「たら」や「れば」は単なる言葉遊びでしかないが、もしもあのとき日産がジュークを発売しなければ、今のようにコンパクトSUVが大ブレイクはしていなかったかもしれない。日本ではあまり知られていないが、欧州でのコンパクトSUVの広まりは、日産がきっかけであるのは疑いようのない事実だ。ジャンルを切り開いた先駆者なのである。
ジュークの義兄弟ダスターも加勢
ところでもう1台、欧州でのコンパクトSUVを語る上で欠かせないモデルがある。「ダスター」だ。
日本ではほとんど知られていないモデルだが、ルノー傘下にあるルーマニアのメーカー「ダチア」ブランドで販売された、全長4.3mのコンパクトクロスオーバーSUV。プラットフォームのベースはジュークと同じく日産Bプラットフォームだが、安価なプライスもあってフランスなどでヒットを飛ばした。
このダスターもまた欧州でのコンパクトクロスオーバーSUV拡大ストーリーを語る上で、外すことができないモデルである。
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