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フィットの販売不振はヤリスに負けたわけじゃない! 4代目が陥った深刻な「戦略ミス」とは

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フィットの販売不振はヤリスに負けたわけじゃない! 4代目が陥った深刻な「戦略ミス」とは

 2020年度の販売台数は全体11位の9万4311台

 新型ホンダ フィットの販売が苦戦している。自販連(日本自動車販売協会連合会)統計によると、2020事業年度(2020年4月から2021年3月)締めでの年間販売台数において、フィットの販売台数は9万4311台となり、平均月販台数では約7859台となった。新型フィットの月販目標台数は1万台なので、統計を見ても苦戦なのは明らか。

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 ただし、この月販目標台数は“あくまで目標値”としているもののように見える。ホンダはかねがね、販売現場へは“ハッパ”をかける意味もあり、一般向けに発信する月販目標台数より、さらに多い台数を指示しているといわている。

 筆者としては現行モデルがデビューした時に、月販目標台数が1万台というのを見て、「かなり厳しい数字」だと感じた。

 コロナ禍や半導体の供給不足など、平時とは異なる状況下でもあるので単純に販売台数を比べることはできないが、それでもフィットは元気がないように見える。

 同クラスではヤリスがよく売れているが、これは街なかを走るヤリスを見てもわかるとおり、かなり「わ」ナンバー、つまりレンタカーとしてのフリート販売も行われ販売台数の上積みが行われているのである。フィットがまったくフリート販売を行っていないというわけではないが、ヤリスほど露骨なレベルでは行われていない。

 最大のライバルは身内のN-BOXだった

 ただ、ヤリスをはじめとしてライバル車の勢いに押されているのがおもな苦戦原因かといえばそうではない。やはり、フィットの最大のライバルはホンダN-BOXとなるだろう。

 2020事業年度締め年間販売台数では残念ながら、“日本一売れているクルマ”は、ヤリス(含むヤリスクロス)に奪われてしまったものの、全軽自協(全国軽自動車協会連合会)統計によると、2020事業年度締め年間販売台数では19万7900台を販売し、軽自動車のみで2位となるスズキ スペーシアに約5万台の差をつけて、軽自動車販売トップとなっている。

 2019事業年度比で5万台落としているのは、新型コロナウイルス感染拡大初期の1回目となる緊急事態宣言発出による、4月と5月の全国レベルでの外出自粛要請が大きく影響しているが、2位のスペーシアは2019年比で約1.4万台という減少幅で押さえている。販売苦戦が指摘されているダイハツ タントでも2019年比で約4.4万台の減少となっているので、N-BOXの5万台減は気になるところ。N-BOXは2020年12月にマイナーチェンジを実施したので、2020事業年度の大半が末期モデルとなるのだが、軽自動車は末期モデルでも売れ続ける傾向が強い(安く買えれば末期モデルでもいい)ので、それだけでの5万台減ともいいきれない。

 そんなN-BOXだが、2020事業年度におけるホンダ車の国内総販売台数における軽自動車の割合が約53%となり、同じく総販売台数におけるN-BOXの割合が約32%となっている。ホンダの国内販売は軽自動車というよりは、“N-BOX頼み”といったところが目立っている。

 このような状況はコロナ禍以前から顕著となっており、いま始まったことではない。ホンダに限らず、軽自動車は売りやすいので、何もせずに放っておけば軽自動車の販売台数ばかりが多くなっていくのは自然の流れ。

 ダイハツからのOEMとなるが、ピクシスシリーズ(軽自動車)をラインアップするトヨタでは、セールスマンが軽自動車を販売しても実績評価しないとするディーラーもあるようで、さらに軽自動車だけでなく、より台当たり利益の多い車種の販売を積極化させるような実績評価制度を採り入れ、軽自動車はじめ薄利なモデルに販売が偏らないようにしている。

 いま世の中では、“プチ贅沢”というものが流行っているが、トヨタのようにアルファードやハリアーなどの高収益車種にお客を引っ張り込むことがホンダでは十分できず、N-BOX内でオプションを増やすとか、アップグレードをするなどして“プチ贅沢”が完結しているとも聞く。

 出来が良すぎるだけでなく、フィットよりもリセールバリューにも期待できるので、N-BOXが選ばれやすくなってしまうようだ。繰り返すがフィットの最大のライバルはN-BOXなのである。

 現代の女性はアグレッシブなイメージのクルマを選ぶ

 また、見方によっては“かわいい”イメージの強いエクステリアデザインも影響しているのではないかと考える。エッジのきいた顔つきがライバルで多いなか、資料によると“親しみを感じさせるフロントビュー”となっているフィット。そのフィット以外でもホンダ車で採用の目立つ、一部では“でこっぱち”とも呼ばれるグリルレスフロントフェイスも採用している。

 現在のように、“ジェンダーフリー”などが強く叫ばれるなかで、“コンパクトカー=かわいい”は誤解を招いてしまうリスクが高い。つまり、昭和時代からの「軽自動車やコンパクトカーのメインユーザーは女性」と、メーカーが決めつけていると捉えられてしまいがちともいえる。いまや軽自動車やコンパクトカーは、高齢ユーザーや男性ユーザーも多くなってきており、けっして“女性向けのクルマ”ではない(女性ユーザーは確かに目立つが昔ほどではない)。

 しかも、そもそも「女性は小さくてかわいいクルマを好んで乗る」という見方は、日本だけのいわば“ガラパゴス的トレンド”となっている。アメリカで聞いた話では、女性のほうがよりアグレッシブなクルマを好むとのこと。男性と仕事で平等に渡り合うなかで、男性に負けないという自己表現的意味合いも大きいとのことであった。以前取材で訪れた、レクサス店の女性スタッフは、颯爽とISクーペに乗って帰宅していった。

 以前、日産の初代ジュークがデビューした時に、北米も含めて世界的に大ブレイクした。アメリカやロシアなどの地域で、キャリア志向の若い女性がよく運転している印象を受けた。

 ある時、中国でガイドをしてもらったセダンに乗る女性に、「今度乗りたいクルマは?」と聞くと、BMW X3(SUV)と答えてくれた。その理由を聞くと「腰高でシートポジションが高いので威圧感があるから」とのことであった。このような女性のニーズも今日のSUVブームを招いた理由のひとつかもしれない。

 デザインに対するイメージは千差万別なので、筆者だけが感じていることだと言わないが、いまの世の中は、「男っぽさ」や「女っぽさ」を感じさせてしまうのがリスクの高いことであるのは間違いないだろう。そのような傾向を筆者のような「オジさん」でも感じてしまうようでは、筆者よりも感度の高い、いまどきの女性にあっては違和感を覚える人も少なくないのではないだろうか。

 フィットの販売が苦戦しているのは、製品としての出来不出来ではなく、ホンダの戦略ミスがいくつも重なった結果が招いたのかもしれない。

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