2019年ついにFFとなったBMW 1シリーズだが、2004年に初代が登場した際には、コンパクトなCセグメントでありながら、FRレイアウトにこだわった作りで大きな注目を集めた。そしてその後15年にわたり、プレミアムCセグメントモデルとして人気を集めるのだが、デビュー当時はどのように受け入れられたのか、振り返ってみよう。(Motor Magazine 2005年1月号より)
単にFRというだけでなくプレミアムモデルとして作り込みも徹底
BMWにとってだけでなく、輸入車全体にとって大きなニュースだったのが、プレミアムコンパクトクラスへと本格参入する1シリーズの登場だ。
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欧州Cセグメントは最大のボリュームゾーンであり、当然BMWも、ずっと参入の機会を狙っていたはず。それがここ数年、急速にプレミアム化への流れが高まっており、BMWにとっても違和感なく入り込める状況が整った。つまり、まさに参入の機が熟したのが、2004年だったということなのだろう。
1シリーズを語るとき、まず触れるべきは、やはりFRレイアウトの採用だ。このセグメントで唯一のFRは、しかしBMWにとっては当たり前のことを当たり前にやっただけとも言える。もちろん、次期3シリーズと車体の基本部分を共有するからという要件もあるが、それ以上に、おそらくBMWはFR以外は考えもしなかったのではないだろうか。
ライバル達がプレミアム性の獲得のためにあの手この手を尽くしているのを横目に、1シリーズはこうしてFRレイアウトというBMWにとってはありのままの姿で現れ、そして容易に他車との差別化=プレミアム化を為してしまった。
もちろん、単にFRというだけでプレミアムになるわけではなく、1シリーズは作り込みも徹底している。特に走りへのこだわりぶりは凄まじい。新開発のサスペンション、熟成されたバルブトロニックユニットに、基本は何と5シリーズ譲りという6速ATの採用など、スペック的にも注目度は高いが、実際の走りの充実度も際立っている。あの現行3シリーズが色褪せて見えることすらあると言えば、そのレベルがいかに高いか伝わるだろうか。
装備も充実を極めている。何しろインテリジェントタイプのキーやランフラットタイヤを標準装備し、iDriveもオプション設定するなど、そこに5シリーズとの決定的な差は見受けられないのである。
ただし、そのぶんその価格設定は、従来のcセグメントの概念を超えたものになっているのも確かだ。だが、見れば見るほど、触れれば触れるほど、それだけの価格も納得するほかない。その自信、そして商品力の高さには、感嘆するばかりだ。
そういう観点からすると、1シリーズは、ごく当たり前に3シリーズの下に位置するモデルのようなネーミングで登場はしたが、実際の存在感としては、新しいカテゴリーを創造したと言ってもいいかもしれない。何しろ、このサイズで、これだけの値段を払おうとさせる、初めてのクルマなのだから。
近年のBMWは、こうはして新しいカテゴリーを開拓することに、抜群の嗅覚とうまさがある。きっとこの1シリーズにも、同じ地平を目指す多くのフォロワーが生まれるのだろう。つまり1シリーズは、既存のプレミアム化を進むCセグメントに参入したのではなく、正真正銘のプレミアムコンパクトという新しいカテゴリーを作り出した1台として、長く記憶されることになるに違いない。(文:島下泰久/Motor Magazine 2005年1月号より)
BMW 120i(2004年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4240×1750×1430mm
●ホイールベース:2660mm
●重量:1370kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1995cc
●最高出力:150ps/6200 rpm
●最大トルク:200Nm/3600rpm
●トランスミッション:6速AT
●タイヤサイズ:205/55R16
[ アルバム : BMW 1シリーズ はオリジナルサイトでご覧ください ]
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