■650馬力の新型「SUVスポーツカー」上陸へ
ヒョンデは2023年11月に開催されたFIA世界ラリー選手権(WRC)日本大会「ラリージャパン」の会場内で、スポーツブランド「N」シリーズを日本初公開するとともに、第一弾となる「アイオニック5 N」の日本導入を明らかにしました。
発売を前にプロトタイプの試乗会が開催され、早速編集部が試乗してみました。
ヒョンデ(旧:ヒュンダイ)は1967年設立の韓国最大の自動車メーカーです。日本では2001年に市場へ参入したものの、2009年に一度撤退。その後2022年2月に再上陸を果たしました。
現在、バッテリーEV「アイオニック5(IONIQ 5)」、燃料電池車(FCEV)の「ネッソ(NEXO)」に加え、2023年11月1日にコンパクト電動SUVのニューモデル「コナ(KONA)」を販売しています。
このうちアイオニック5はミディアムSUVタイプのEVです。1974年に登場したヒョンデ初の量産ベーシックカー「ポニー」をオマージュし、直線的なエクステリアや真四角のランプデザインが特徴です。
今回日本初公開され、投入が予定されているアイオニック5 Nは、アイオニック5をベースにしたハイパフォーマンスモデルで、2015年に誕生したヒョンデのスポーツブランド「N」ブランド初のEVモデルとなっています。
アイオニック5 Nは2023年7月に英国で開催された「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」ですでに世界初公開されていました。
ボディサイズは全長4715mm×全幅1940mm×全高1585mmと、アイオニック5よりも80mm長く50mm幅広く、60mm低くなっています。ホイールベースは同一で3000mmです。
エクステリアは専用マットカラー「パフォーマンスブルー」が設定され、フロントには大きなロアグリルやレッドのアクセントカラーが配されたリップスポイラーを装備し、アグレッシブさを強調。
リアもベースモデルよりも大型化したスポイラーを装備し、バンパー下部はディフューザー形状となるなど、全体的にスポーティさが増し、存在感を高めています。
パワーユニットとしてフロントに166kW(222馬力)、リアに282kW(378馬力)を搭載。ブーストモードを使用することで最大出力478kW(650馬力)・最大トルク740Nmを発揮します。
これにより、0-100km/h加速は3.4秒、最高速度は260km/h超えをマークします。
また、フロントおよびリアにはトルク配分を完全に可変できる「Nトルク・ディストリビューション」を搭載するほか、0.6Gもの強力な減速が得られる「Nブレーキ・リジェン」、誰でもドリフト走行が可能な「トルクキックドリフト」など、スポーツ向けの電子制御が多数採用されています。
さらに、ドライビングを盛り上げる演出として、「ICE(内燃機関エンジン)サウンド」や「ジェットファイター(戦闘機)」など、さまざまな種類の走行音を再生する機能も搭載しています。
なお、日本国内へ導入されるモデルは日本車と同じようにウインカーレバーが右に装着されるほか、電子制御を国内のワインディングに最適化、さらにICEサウンドを変更するなど様々な改良がなされるといいます。
このアイオニック5 Nについて、ラリージャパンに合わせて来日したヒョンデNブランド副社長であるパク・ジュン氏は、以下のように話しています。
「アイオニック5 NはNブランドの『コーナー野郎(意訳:Corner Rascal)』『サーキットでの能力』そして、『毎日がスポーツカー』という3つの柱を体現しています。
従来のEVでは、パワフルでエンジンサウンドもなく静かでスムーズな一方で、情熱を感じられなく、面白くないと考えました。
公表しているトップスピードや0-100km/h加速などは単なる数字にすぎず、アイオニック5 Nは何よりもコーナーが楽しく、エモーショナルを感じられるクルマに仕上げています。
このクルマを運転することは幸せな時間となり、ハイパフォーマンスEVのスタンダードモデルになると確信しています」
■「アイオニック5 N」をサーキットで試す! 印象は?
今回試乗したコースは愛知県蒲郡市の「スパ西浦モーターパーク」で、低速から中速コーナーが設けられ、ストレート区間も持つサーキットです。
まずは、「ノーマル」モードで先導車の後ろを走行します。
ノーマルであっても純ガソリンエンジン搭載車のようなサウンドが再生されます。しかもリアルで、しっかり後ろから聞こえるためEVに乗っているというような感覚は少ない印象です。
加速時は息継ぎがなくスムーズな点はEVであることを感じさせますが、ノーマルのままでもロール量が少なく、ドライバーが意図する方向へと持っていけると感じ、Nブランドの柱である「毎日がスポーツカー」をそのまま表現していました。
次は「スポーツ」モードで走行します。
スポーツモードではモーターの出力特性だけでなく、電子制御サスペンションの減衰力やステアリングの操舵感覚、電子LSD(リミテッドスリップデフ)の制御まで変更することができます。
ステアリングやモーターのレスポンスはよりクイックになり、加減速や旋回がさらに鋭敏になった感覚があり、コーナーを攻めてみようと果敢にチャレンジしたくなります。
コーナーではオーバースピードで進入するとクルマ全体が横を向くような動きも見せ、さらにスピードを増せば、四輪駆動車に特徴的な「ノーカウンタードリフト」も可能そうだと感じます。
減速は回生ブレーキに加えて自然な減速が可能な油圧式を採用しているため、これまでの内燃機関車と変わらず、違和感のないフィーリングです。
さらに機械式トランスミッションを擬似的に再現する「N eシフト」を使用してシフトダウン・アップを試してみます。
シフトダウン時はエンジンブレーキのような自然な強い回生ブレーキが効くとともにショックも再現されており、思わず(サウンドを反映したバーチャルの)タコメーターを確認しながらシフトダウンをしてしまう場面もありました。
さらに、エンジン搭載車でないのにも関わらずレブリミットに当たるような制御も採用され、燃料カットが入ったような「ブブブ」といった振動まで再現されるため、もはやEVであることは完全に忘れさせてくれます。
また、ステアリング右側にある赤い「NGB(N Grin Boost)」ボタンを押すと、10秒間ブーストがかけられることで背中に強く押し付けられるようなGを体感でき、胸をすくような加速が可能です。
このような遊び心のある機能を追加できるのもEVならではともいえます。
こうした電子制御によりタイムを競うようなスポーティで楽しい走りができる一方で、数週程度であればバッテリー温度の上昇は4度程度にすぎず、ほとんど通常走行と同じレベルを保っていました。
EVではバッテリーやパワートレインの冷却が重要で、熱を受けると本来の性能を発揮できなくなることに加え、バッテリーの寿命にも影響をおよぼすと言われていますが、冷却はとくに重要視しているようで、スポーティ走行を念頭に開発したといいます。
最後に「ECO」モードを試してみます。
するとICEサウンドはオフになり、アクセルレスポンスも緩慢になり、まるで別のクルマに乗ったかのような静かな環境へと変化します。
常にスポーツモードで飛ばすのではなく、市街地でおだやかに乗るのであれば、EVの特徴である高い静粛性を活かして同乗者を目的地に送り届けるといった使い方も可能でしょう。
またリアシートは、後席シートヒーターやリアウインドウのサンシェード、Bピラーに装備された後席用のエアコンダクトなど、十分な快適性も持っていることが特徴で、シートのホールド性もよく身体が大きくずれるようなこともありませんでした。
※ ※ ※
アイオニック5 Nは、「EVはつまらない」という固定観念を覆させてくれるスポーツカーだという感想を覚えます。
日本車や欧州車を乗り継いできたパク氏が、自分自身が乗りたいクルマを作ったということから、まさにクルマ好きのためのEVスポーツカーといえそうです。
2024年に登場すると予定されており、多くのスポーツカーファンの希望の存在となりそうです。
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みんなのコメント
お国の事は忘れて乗ると正直アリな車。ボディ剛性、脚の動き、EVらいし滑らかで静かな乗り心地。国産には無いデザイン。
正直EVのカテゴリーなら日本は置いていかれてるのは確か。
だた1つだけ大切な事なのでもう一度。
日本でこの車を買う理由が見つからないw