EV巡る循環 「Nissan Futures」
日産は、日産グローバル本社ギャラリーにおいて2023年2月4日から3月1日までの期間「Nissan Futures」と題したイベントを開催している。
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これは同社が考える持続可能なモビリティと革新的なデザインを体感できるというもの。
その一環として、2月21日にEVエコシステムへの取組みを題材としたパネルディスカッションを開催した。
このイベントには日産の経営戦略本部担当常務執行役員の真田裕氏や同社のグローバルEVプログラム&エナジーエコシステムビジネス担当理事のユーグ・デマルシエリエ氏、そして欧州日産自動車エネルギービジネスユニットのディレクターであるエルコムリ・ソフィアン氏がパネリストとして参加。
それ以外にも日産のパートナー企業であるドリーブ社、ヌービー社、そして日本のフォーアールエナジー社の代表が参加し、EV周辺のさまざまな循環に関する最新の事情を紹介した。
2時間近くに渡ったこのパネルディスカッションは大きく2つのテーマに絞り込むことができる。
その1つがEVに蓄電した電力を他の用途にいかすV2X(ビークル・トゥ・エブリシング)であり、もう1つがバッテリーの2次利用、そしてリサイクルについてである。
「V2X」 クルマの未来の使命
EVを移動手段のみとは考えず、電力系統につないで充放電をおこなうV2G(ビーグル・トウ・グリッド)という考え方は昨今少しずつ目にする機会が多くなっているかもしれない。
これは電力の供給が断たれるような緊急時における個人宅でも役に立つが、もっと広い意味で電力社会に貢献することも可能だと彼らはいう。
日産の考えるV2X(ビークル・トゥ・エブリシング)がそれである。
風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーはクリーンに電力を発電できる。
だがそれらが効率よく稼働するのは風が吹いている時と、太陽が降り注いでいる時間帯に限られる。
ピーク時に発電した電力をEVの蓄電池(90%以上の時間駐車しているというデータがある)に貯め発電しない時間にその電力を使用することで再生可能エネルギーの安定供給が可能になるのだ。
ヌービー社のグレゴリー・ポイラスCEOによれば、ドイツ北部では風力発電の電力が余り過ぎてマイナス価格になることもあったという。電力を貯めておけなかったためである。
デンマークでは日産リーフを蓄電池として使用して電力のバランスをとる試みがおこなわれており、実際に成果を出しているのだという。
再生可能エネルギーのシェアは日本では22%だがドイツや英国の40%に達している。
このエコシステムを有効に活用すれば化石燃料への依存度が低下し、環境への貢献が可能になる。
EVは数多く普及することで移動手段としてだけではなく蓄電池としてさまざまなシーンで電力インフラを担っていくことになる。
また真田氏は、大量のEVが自宅で充電をおこなう際の負荷は相当なものであり、その際の電力カットの権限を電力会社に託することでも電力の安定供給に貢献できるといっていた。
「循環」 バッテリーの2次利用
今回紹介された2つ目のテーマがバッテリーの2次利用だった。
EVは走行時に排気ガスを出さないクリーンなモビリティとして知られる。
だがバッテリーを生産する段階では比較的大きなCO2を発生させているのである。
バッテリーを再生、2次利用することができれば、新たなバッテリー生産によって排出されるCO2を削減することができるのである。
日本が誇る技術ともいわれるバッテリーの2次利用。
ここでは日産リーフのバッテリーを回収し、再利用を促進するスペシャリストであるフォーアールエナジーの堀江裕CEOがその最新の事情を解説してくれた。
堀江氏によれば回収したリーフのバッテリーはまだ十分に使えるので、モジュールの構成を変更し他の分野(ゴルフカート、EVバス、大型蓄電施設等)で再利用できるという。
また2次利用を終えたバッテリーに関しては貴重な資源であるレアメタルなどを、新たなバッテリー製造のため回収している。
現在は初期(2010年頃)に販売されたリーフのバッテリーの回収が始まった段階。
ディーラーとのつながりが切れてしまっている個体もあるので、今後はどれだけ多くのリーフからバッテリーを回収できるかが鍵になる。
またレアメタルの回収技術もまだ改善の余地が残されている分野だという。
使用済みバッテリーが適切にリユースされるエコサイクルが出来上がってこそ、EVの生産や利用がよりゼロエミッションなものに近づき、地球環境に貢献できることになる。
だが先のV2Xもバッテリーの2次利用も含め、いち自動車メーカーだけでは到底実現することが難しい大規模なプロジェクトに違いない。
クルマを作って売るだけでは未来はないという強い思いが、日本のEVシーンを牽引している日産を突き動かしているのだろう。
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