GW(ゴールデンウィーク)も含め、昨今はクルマで外出する機会も少しづつ増えてきている。当然、おでかけの際には手軽にスマホにカーナビアプリをインストールして活用している人も多いだろう。
しかし、これからの季節、特に注意したいのが、車内の温度上昇によるスマホへの悪影響だ。
車内スマホ放置がご注意を!! 禁断実験で何℃までスマホが耐えられるか調べてみた!!!
最悪、スマホ自体が壊れて使えなくなってしまう可能性もある中、今回、実際に車内に長時間放置すると本当に壊れてしまうのか!という大胆な実験を行い、車内にスマホを放置することが良くないことを証明してみることにした。
ちなみに「Apple製デバイスは、広い周囲温度範囲で正しく動作するように設計されており、最適な範囲は16°C~22°Cです。バッテリー容量に回復不能な損傷を与える可能性があるため、35°Cを超える周囲温度にデバイスをさらさないことが特に重要です。損傷を受けた場合は、そのバッテリーが一回の充電でデバイスを駆動できる時間が通常よりも短くなります。」とApple公式サイトに注意書きとして書かれている。
文、写真/高山正寛
そもそもスマホは車載用には作られていない!
スマートフォンをナビ代わりに使う人は多い。だからこそ注意が必要
昨今のスマホは画面の大型化、SoC(システム・オン・ザチップ=CPUも含めた集積回路)の高性能化によって、本体の発熱量は過去よりも増えている傾向が強い。
もちろん、メーカーも冷却に関してはかなり気を遣っており、より負荷のかかる「ゲーミングスマホ」などでは独自に冷却機構(ラジエーターのようなもの)を搭載しているモデルもある。
しかし、これはあくまでも一般の利用における設計だ。多くの人が知っているようにクルマの室内は熱や振動といういわゆる「劣悪環境下」にある。炎天下におけるダッシュボード上部の温度が70℃を超えることはJAFなどのテストでも証明されている。
スマホでナビアプリを活用する時には
(1)ダッシュボード上に専用のクレードルを使って設置
(2)エアコン吹き出し口やCD挿入口に専用のクレードルを使って設置
(3)(1)&(2)とは異なる方式のクレードル(種類が多い)を使って設置
(4)そして直接スマホは使わないが、Android AutoやCarPlayのように専用車載器に接続してアプリを使う。
おおまかに言えば、これらに大別されるが、特に(1)の場合は直射日光の影響もダイレクトに受けやすいので当然スマホ本体の温度も上昇しやすい。
温度上昇するとスマホはどうなるのか?
スマホに限らずだが、電子機器の類いには動作可能(保証)温度が設定されている。メーカーのホームページなどにしっかりと記載されている機種もあるが、中には全く記載されていないケースもある。
一般的には「周囲温度0℃以上、40℃未満」と言われるが、これはあくまでも周囲の温度であり、前述したようにスマホ本体の発熱や車内における直射日光の影響により非常に厳しい環境であることは間違いない。
では実際、温度上昇するとスマホはどうなってしまうのか。昨今のスマホには温度上昇や湿度などの影響を受けた場合、安全回路が働くようになっているものが多い。
具体的にはまず「本体温度が上昇したので本体保護のために液晶画面をオフにします」といったいわゆる“警告”が出て、実際数分後以内には画面はオフになる(本体がスリープモードへ移行するものもある)。その後、本体温度などが下がればまた使えるようになることが多い。
さらに注意したいのが温度上昇による「リチウムイオンバッテリー」への影響だ。後述するが、スマホを長時間、炎天下に置いた結果、内蔵するリチウムイオンバッテリーが肥大化してしまい、あわや大惨事になるケースもある(本当に注意してほしい)。
また連続してスマホを車内で使っている場合、単純な温度上昇だけでなく、寒暖差による外気温変化も当然影響を受けやすい。湿度に関しても同様である。
そこで、今回、筆者所有のスマホを実際に約6時間、放置して一体どうなってしまうのか、をテストしてみた。
約6時間後、最悪の結末が・・・
テストの結果壊れたスマートフォン
テスト自体は事前に天気予報を見て、気温上昇が予想される日に行った。
午前11時前に開始。スマホ本体は常時点灯モード(照度は自動調整モード)でクレードルに設置。ナビアプリを起動後、車両も常時太陽光が当たる場所に固定した。特に用が無い以外、イグニッションはオフで外気導入もオフである。
今回のテストのためにBOSCH(ボッシュ)の放射温度計を購入した。プロの現場でも使われている商品で、特に反射率の異なるスマホのガラス面でも表面温度が測れるという優れものだ。
スタート時の車内温度は24.0℃だったが、その後、26.2℃まで上昇。その際にインパネ上の温度を測るとすでに30.9℃まで上昇していた。
余談だが、この時に車両周辺の路面温度を測定すると37.7℃だった。夏場だと60℃を超えることもあるので、その点ではまだ“過酷”というレベルではない。
1時間経過した段階でスマホのガラス面を測定すると31.0℃、その後
2時間→36.0℃、3時間→41.0℃と温度は上昇していく。
また4時間経過時では車内温度→31.9℃、インパネ表面温度→46.6℃
まで上昇していた(車内は汗をかくほど暑い。ゆえに水分補給を頻繁に行いながらテストを継続した)
その後、5時間経過時→48.3℃と確実にスマホガラス面の温度は上昇を続けていく。一体どうなるのだろうか・・・。
そして6時間経過時、ガラス面の表面温度は・・・。57.6℃!!まで上昇。これまで本体に一切触れないようにしてきたが、液晶の動きが少しおかしく感じる(照度は落ちたようだ)。
そしてテスト開始から6時間17分、冒頭に述べた“Caution(注意)”も出ないまま・・・スマホ沈黙!! ここでテストはまず終了である。
最終的にガラス面ではなく、本体背面の温度を測定したが、何と61.2℃まで上がっていた。当然のことながら本体はかなり熱く、素手では持ちたくない。
そして帰宅後、カバーからスマホを取り外してさらに驚いた。バッテリー肥大化して背面パネルが浮き上がっているではないか!
このスマホは購入時から約2年経っていたこともあり、経年変化は否めない。ゆえに引退(売却)を考えていたのだが、重要なテストに付き合ってくれてその役割を終えた。本当にお疲れ様・・・。
スマホの管理はよりシビアに
今回のテストを行って感じたことは冒頭にも述べたようにスマホの高性能化(または経年劣化)に伴い、車内での利用にはよりシビアであるべきという点だ。
誤解の無いように言うと、筆者はスマホアプリ反対派ではなく、逆に肯定派だ。実際、日々スマホアプリをテストしながら使っており、その利便性の高さには感謝している。
ただ、問題はそのスマホ本体の管理方法だろう。例えば帰省や長距離ドライブなどでSA/PAで休憩した際にはスマホをクレードルから外してクールダウンしてあげる位の配慮が必要だということを言いたいのである。
またこれは余談だが前述した(2)のエアコン吹き出し口に取り付ける場合、「これならば直接冷気をスマホに当てるのでクールダウンできて理想的じゃないの?」という意見もあるだろう。ただ、これは正しくもあり、間違いでもある。
確かにクールダウンの効果はある。しかし同時に急激な温度変化により結露が発生することでスマホへの影響も懸念される。外観上は大丈夫でも内部で結露が起きれば故障のリスクも増える。
スマホアプリ自体は日々進化しているが、スマホ自体の性能は個体差の部分が大きい。自分のスマホの特性や能力を理解した上で、この夏を乗り切って欲しい。
最後に、今回のテストはあくまでも自己責任において、周囲に迷惑がかからないように広大な場所で行った。また最悪の場合に備えて電気火災用の消化器(クラスC)等も用意した。ゆえに安易な考えでテストすることは絶対NGだ。ちなみに筆者は電気工事士(二種)と消防設備士(乙種第6類)の国家資格を所有しているので、一般的な消化器の扱いに関しての基本知識は一通り理解している。
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みんなのコメント
十分な日除け措置を施したうえで、人もバッテリー類も極力車外に退避させるべし。