この記事をまとめると
■3列目シートを含めてすべての乗員が快適に移動できる国産ミニバンがトヨタ・グランエースだった
日本じゃ地味めのトヨタ・グランエースがインドネシアでは存在感アリアリ! ダイハツ・グランマックスとして売れまくっていた
■ボディが大きく運転しにくく高価であるのに地味だったこともあり人気を獲得できなかった
■トヨタのミニバンで人気の高いハイブリッドを選べないことも販売面で不利になった
本当に3列目が快適に使用できる国産唯一のミニバン
トヨタのアルファードやヴェルファイアは、多人数乗車の快適なミニバンといわれるが、実際に使うと居住性の不満も生じる。2列目はとても快適だが、3列目の座り心地は低下するからだ。
Lサイズミニバンだから、3列目の頭上と足もとの空間は広いが、着座姿勢はよくない。3列目は左右に跳ね上げて格納するため、床と座面の間隔が不足して、足を前側へ投げ出す座り方になる。座り心地のしなやかさは、先代型よりは改善されたが、1/2列目に比べるとボリュームが足りない。長距離を移動する時には席替えが必要だ。
しかし、2019年に発売されたグランエースは違った。6人乗りのプレミアムは、3列目のシートまで含めて、すべての乗員が席替えをせずに移動できる唯一の国産ミニバンだった。3列目にも、2列目と同じ固定式アームレストや電動オットマンを備えたエグゼクティブパワーシートが装着されたからだ。座り心地やシートの調節機能も2列目と共通だ。
3列目を細かく見れば、頭上空間と床から座面までの間隔は2列目に比べて若干足りないが、適度な囲まれ感があってリラックスできた。グランエースプレミアムの3列目は、国産ミニバンでは圧倒的なナンバーワンであった。
それなのにグランエースは、発売から5年後の2024年に生産を終えた。その理由は、もともと販売目標台数が少なく、実際の売れ行きも伸び悩んだからだ。
グランエースは、商用車の海外版ハイエースをベースに開発された経緯もあり、販売目標は1年間に600台(1カ月にわずか50台)だった。そして発売後、2020年までは目標台数をほぼ達成したが、2021年以降は下まわった。グランエースが販売不振だった背景には、複数の理由がある。
まずは大柄なボディだ。全長は5300mm、全幅は1970mm、全高は1990mmだから、自宅の駐車場に入らないことも考えられる。前輪の切れ角が大きな後輪駆動だが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が3210mmに達するため、最小回転半径も5.6mと大まわりだ。混雑した街なかでは運転しにくい。
そして、ボディが大きくプレミアムの価格が672万1000円に達する割に、フロントマスクなどの外観が地味だったことも人気低迷の原因だ。アルファードやヴェルファイアを見ても分かる通り、価格の高いLサイズミニバンには存在感の強いフロントマスクが求められるがグランエースは違った。
トヨタのミニバンで人気の高いハイブリッドを選べないことも販売面で不利になった。グランエースのエンジンは、ミニバンでは珍しい直列4気筒2.8リッタークリーンディーゼルターボだから実用回転域の駆動力が高い。車両重量が2740kg(プレミアム)のボディとは親和性も高かったが、市場の理解は得られなかった。
売れ行きを積極的に増やしたいなら、フロントマスクや内装を派手にアレンジした特別仕様車を設定する方法もあっただろう。2/3列目のシートを取り去ったキャンピングカーなどのベース車両を、コーチビルダーに提供することも考えられた。しかしこれらの工夫は行われていない。
宣伝も不足していた。たとえば6名のグループが新幹線を使って本社と支社を頻繁に移動する場合、グランエースなら1回の移動コストを大幅に抑えられる。6名で東京と大阪を新幹線で往復すると、運賃の合計は18万円に達するが、グランエースなら高速道路料金と軽油価格を合計して3万円だ。1カ月に3回往復すれば、グランエースなら新幹線に比べて45万円を節約できる。1年間なら540万円の差額に拡大する。このように考えると、グランエースは唯一無二の機能を備えた非常に魅力的なミニバンであった。
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