2020年を振り返ると、国産コンパクトハッチのビッグネームが一気に新型へとスイッチしたことが思い出される。そのアグレッシブな市場で、ビックマイナーチェンジを行ったコンパクトカーがあったことをご存じだろうか。それは、三菱自動車のコンパクトカー「ミラージュ」だ。
ミラージュは、2000年に主力モデルの生産終了。しかし、2012年に、そのポジションを従来よりも小さなAセグメントに移行し、新時代の世界戦略車として復活。
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同年より日本での販売を開始したが、軽自動車とBセグコンパクトカーの板挟みとなり、気が付けば地味な存在に……。現行型ミラージュは一体どんなクルマなのか、試乗を通して分析してみた。
文、写真/大音安弘
【画像ギャラリー】本文未掲載写真も! Aセグメント車として生まれ変わった三菱 ミラージュのビッグマイナーチェンジをチェック!!
■なんと100万円切り! お手頃な世界戦略車
2012年に復活した6代目三菱ミラージュ。Aセグメントのエントリーカーとして生まれ変わった
2012年8月に復活した6代目となる新型ミラージュは、従来型同様に世界戦略車であることに変わりはなかったが、歴代ミラージュとは少し異なる存在となった。
まずポジションを歴代モデルが担ったBセグメント及びCセグメントから、Aセグメントに変更。経済性を重視したエントリーカーに生まれ変わる。これは急速な経済発展を遂げる新興国での個人向け乗用車ニーズの高まりを組んだものであった。
そのため、これまでの実用から上級、スポーツまでを含めたマルチなグレード展開はなく、「低価格、低燃費、コンパクト」の3点に的を絞り、日本向けを含め、全世界市場向けをタイの新工場で生産するなど、徹底的な合理化が図られた。
なお、世界各地に製造工場を持つ日産マーチ(現行型)も、一足早く新興国ニーズを意識した仕様へと生まれ変わり、2010年より日本仕様の製造をタイで開始していた。
ボディは、5ドアハッチバックに一本化。若々しいグリルレスのフロントマスクを持つシンプルなデザインで、インテリアもシンプルかつコンサバなものに仕上げられていた。
パワートレインは、1.0L 3気筒DOHCエンジンにCVTの組み合わせのみで、装備内容が異なるグレード構成であった。ただポップなカラーも多く揃えるなど、若い世代や女性層にもアピール。しかも価格は、99.8万円からという手頃さであった。
三菱自動車としても、ユーザー拡大を狙い、最も手頃な登録車として積極的なPRを展開。唐沢寿明と本仮屋ユイカを起用したCMでは、舞台を店舗とすることで、親しみやすいお店で買える身近なクルマとして宣伝した。
しかし、新興国ニーズを意識した価格重視の作りとタイ生産の日本車という特徴が、ネガティブに捉えられてしまい、初年度となる2012年度の17990台の国内販売をピークに、下落。元々コスパの高い日本車を厳しい目で選ぶ日本の消費者には、受けなかったのだ。
■テコ入れで実力を高めていったミラージュ
2014年に投入された1.2L直3DOHCエンジン
もちろん、三菱自動車も、その現状を良しとせず、改良を重ねることで、商品力を向上させてきた。大幅進化の第一歩となったのが、2014年12月の1.2L直列3気筒DOHCエンジン車の投入だ。
新グレード「1.2G」は、エンジン性能の向上に加え、15インチタイヤとフロントスタビライザーの追加で、走行安定性を向上させていた。その成果をベースに、翌年となる2015年12月には、フェイスリフトを含む大幅改良を実施。
フロントマスクは、クロームメッキ加飾のグリル付きデザインとなり、質感を向上。さらに衝突被害軽減ブレーキなどの装備面も強化された。それと共に、走りについても大幅なテコ入れが図られたのだ。
まずエンジンを1.2Lに一本化。さらにサスペンションのリセッティングや取付部剛性の向上、電動パワーステアリング制御の見直し、CVT制御の改善などが行うことで走りの質感を高めていた。
■フェイスリフトで原点回帰!?
フェイスリフトで最新の三菱顔、かつ歴代ミラージュの面影を感じさせる顔立ちとなった
その後、大きな改良はなく、2019年11月、生産地であるタイにて、前後マスクを一新したフェイスリフトモデルを発表。2020年4月より日本導入も開始された。
新ミラージュの特徴は、ダイナミックシールドを取り入れたこと。いわゆる最新の三菱顔となったわけだが、同時に歴代ミラージュの面影を感じさせるスポーティかつフレッシュなものとなった。
さらに先進の安全運転支援機能の強化が図られている。しかし、気になるのは、新型ミラージュの乗り味である。そこで新型ミラージュを試乗してみることに……。
試乗したのは、上級グレード「G」だ。最新型もグレードによる差は、限定的だ。基本的には装備のみだが、フロントグリルにスポーティな赤のアクセントが加わるのが、大きな特徴だ。
インテリアはシンプルだが、安全運転支援機能などの基本はしっかりと押さえている
インテリアは、黒を基調とした至ってシンプルなもの。ただタコメーター付きのアナログ2眼メーターやデジタル式オートエアコン、衝突被害軽減ブレーキなどを含むスタンダードな先進安全運転支援機能など基本的な機能はしっかりと押さえている。シートも思ったよりもクッションがしっかりしていると感じた。
エンジンを始動すると、3気筒ということもあり、エンジンサウンドは軽め。可も不可もなしといったところだ。
しかし、走り出してみると、予想よりも走りはずっと良い。エンジン性能は78ps/100Nmしかないが、車重も900kgと軽いため、想像よりもずっと軽快。
ステアリングはキビキビした反応を見せるが、軽薄さもなく、高速走行時も落ち着きある動きを見せる。この辺は、足回りの強化と電動パワステの煮詰めの成果だろう。
CVTのDレンジは、燃費重視のようで、巡行時は改定数が低め。そのために3気筒らしいノイズと微振動が気になるが、レンジをSに切り替えると、常用回転数が高まり、3気筒エンジンは軽快なサウンドを奏で、加速もスムーズに。
気持ち高めの回転の方が気持ちよく走れるエンジンのようだ。だから、積極的にSレンジを使いたくなる。
小気味良いが軽すぎないステアリング反応は強化された足回りによるところも大きい
走行中の車内は、エンジン音が伝わるものの、想像よりもずっと静かであった。もちろん、街中では小さなボディを活かし、ひらりひらりと走ることが出来るので、扱いやすい。正直、もっと安っぽいイメージを持っていたのだが、良い意味で裏切ってくれた。
確かに、最新コンパクトのような便利機能やハイテクとは無縁だが、実直なコンパクトカーだと思う。手頃な足車やシンプルなクルマを求める人には悪くない選択だ。
初期のグリルレスと中期型のメッキグリル仕様のミラージュは、やや地味なデザインであったが、最新のダイナミックシールド顔は、スポーティかつ元気な雰囲気があり、イメージは悪くない。
しかし、コロナ下での新車販売不振もあり、2020年4月~9月の半年間の販売台数も1345台と、かなりレアな存在だ。確かに他社の最新コンパクトと比較すると、価格面以外の優位性が少ないのが正直なところ。
その一方で、シンプルイズベストなところが魅力的とも思える。装備がゴテゴテした最新型車が、肌に合わないというユーザーにも好ましい仕様ではないか。セカンドカーなら、概ね不満のない装備は押さえている。
ただあまりにもPRがないため、フェイスリフトモデルの存在は、お手頃なコンパクトカーを探す人たちにも知られていないはずだ。まずは三菱自動車自身に、もっと新型ミラージュの存在を強くアピールして見て欲しいと望みたい。
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みんなのコメント
いろんな装備を求める人はヤリスを買えば良いです。その分高いだけなので。実際、普通に走る分には大差ありません。リアシートの開放感はヤリスよりミラージュの方があります。コミコミ180万で最上位グレードですから、お買い得感満載ですよ。