e-tron受賞の理由はプレミアムでハイテックなこと
カーオブザイヤーといえば、日本だけでなく世界中でメディアやジャーナリストが中心となって開催されている自動車業界のお祭り的なアワードです。
2020-2021日本・カー・オブ・ザ・イヤーは「スバル レヴォーグ」となったのは記憶に新しいところだと思いますが、「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」に「アウディ e-tron スポーツバック」が選ばれたのはお気づきでしょうか。受賞理由として、プレミアムなEVであることと、カメラを使ったバーチャルエクステリアミラーの設定が高く評価されています。
95kWhの大容量バッテリーを積み、前後に積んだモーターが最大時に300kWもの出力を発揮するというハイパフォーマンス、WLTCモードで405kmの航続距離を実現というスペックには文句の付けどころはありません。強いて言えばバーチャルエクステリアミラー仕様では1346万円という庶民には手の届かない価格設定が残念に思うくらいですが、それはこちら側の都合の問題です。
10ベストにも選ばれなかったホンダe
ところで、プレミアムなEVで、ドアミラーをカメラとモニターに置き換えた点がアウディe-tronの評価ポイントだとすれば、同様のメカニズムをもつクルマがほかにあると思い浮かぶのではないでしょうか。ホンダの電気自動車「Honda e」です。バッテリー総電力量はアウディe-tronの1/3程度(35.5kWh)でモーターの最高出力も1/3程度(100~113kW)と、まともに比べるものではないという見方もあるかもしれませんが、コンパクトなボディで451万円~という価格設定は十分にプレミアムといえます。
しかし、日本のカーオブザイヤーではHonda eは事実上の最終選考といえる10ベストにも残りませんでしたし、テクノロジー面でもアウディのほうが優れているという評価でした。
ドイツのCOTYではホンダeが部門賞と大賞のダブル受賞
その一方で、ドイツではまったく違う結果になっています。結論からいえば、ドイツ・カーオブザイヤーでは、Honda eはニューエナジー部門で受賞し、さらに今年のイヤーカーに選ばれました。これは日本車としては初の快挙といえます。日本では、ある意味で箸にも棒にもひっかからなかったHonda eはドイツのモータージャーナリストからは高い評価を受けたというわけです。
市街地での小回り性能を求めて、専用のリア駆動プラットフォームを開発したり、ライフサイクルアセスメントに影響する製造時のCO2排出量を考慮してバッテリー搭載量を最小に抑えたりといったロジカルの設計思想。その反面、初代シビックを思わせる愛車にしたくなるキュートなルックスというスタイリングのコンセプトはインパクトがありますからドイツでの高い評価もむべなるかなといえます。
理由は自国のメーカーにないものねだりをしているから?
筆者は、カーオブザイヤーを選ぶような一流のモータージャーナリストの世界にはまったく縁がないので、その理由については、いち自動車コラムニストとして外野から想像するほかないのですが、それぞれ自国のメーカーにないものねだりをしているのかも、そんな気がしてなりません。
それでも、この2台の電気自動車が日独カーオブザイヤーで対照的な評価を受けたというのは、電動化が進む2020年に開催されたカーオブザイヤーの結果としては非常に印象的です。
ちなみに日本カーオブザイヤーで電気自動車がイヤーカーに選ばれたのは2011-2012の「日産 リーフ」という例があります。思えば、電気自動車の登場は早かった日本市場。それから10年近く経って、プレミアムな電気自動車が評価されるようになったというのは市場の成熟ということなのでしょうか。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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みんなのコメント
盛り上がってんのは業界だけ。消費者は完全に冷めた目で見てる。市場の成熟って何が?(笑)。
田舎では間違いなく需要がない。