どんなクルマ?
text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
【画像】トヨタ・グランエース・プレミアム、G【詳細写真】 全81枚
photo:Keisuke Maeda(前田恵介)
プロモーションビデオではコンサート会場に向かうジャズカルテットの姿が映し出される。楽器は別送か? というのはご愛敬だが、最後までドライバーや前席は映らない。東京モーターショーに参考展示された時からVIP送迎車と思っていたが、まったく以てその通りのPVである。
1BOX型の大きな車体(全長×全幅×全高:5300×1970×1990mm)からすれば、パッケージングの特徴はビッグキャビン。余裕の空間をゆったりと使った「贅」がセールスポイント。
基本線ではそんな感じなのだが、スペース効率を追求したモデルではない。
全長はハイエースのスーパーロングに迫る5.3m。全幅、全高は2m近い。スタイルは絞り込みの少ないボックスデザインであり、ミニバン最上位のアル&ヴェル(アルファード/ヴェルファイア)より文字通り一回り大きい。
数字で見る内装
しかし、室内長はアル&ヴェルより約10cm長いだけ。室内幅はプラス15cmだが、室内高はマイナス11cm。キャビン容量をして圧倒的に広いとは言い難いのだ(プレミアムの室内長/幅/高:3290/1735/1290mm)。
スペース効率が意外と悪いのは車体設計によるもの。駆動方式はFR。エンジンはボンネット内に置かれている。
キャブオーバーレイアウトのハイエースと比較すれば一目瞭然だが、ボンネット長は丸々キャビン長から差し引かれる。
ストレートラダー状にしたフロア骨格とリアリジッドアクスル、大径タイヤなどもスペース効率面ではハンデ。パワートレインはハイエースにも採用されている2.8Lディーゼルと6速AT。これもけっこう嵩張る。
だから車体寸法も大きくなってしまったとも言えるのだが、プロ用途向けのタフな設計と「おもてなし」の高次元での両立を図った結果でもあるのだろう。
ふつうに走れば「ベテランの味」
果たして運転すべきか?。
PVに倣えば運転は運転手さんに任せて、2nd/3rdシートで寛ぐのがグランエースの楽しみ方なのだが、アル&ヴェルからの乗り換えを検討するユーザーなら、やはり視点はドライバーだろう。
意外と悪くない。というか個人的にはけっこう好きなタイプ。誇張ではなく走り出した瞬間に開発意図が分かる。
他人を乗せて走る時はちょっとした挙動にも気を使う。もたつかず穏やかに走る。唐突な走り出しを抑えて加速度上昇を一定に。前後の揺れ返しなど以ての外。グワッとダッシュが利いた発進など、同乗者にすれば不快以外の何物でもないだろう。
グランエースは多少ラフなアクセルワークでも穏やかに走り出す。走行中の加減速も同様で、変速時も含めて急激な加速度変化が抑制されている。
操舵に対する反応も同様だ。ヨーの動きや横Gの変化はとても滑らかであり、後輪を軸にゆったりと回り込むようなコーナリング感覚を維持する。これも揺り返しが極めて少ない。
これが初期応答の鋭いタイプなら揺り返しを抑えるために補正操舵を行うのだが、グランエースには不要。ふつうに運転していればベテランショーファーのような走りになる。
気になる大きさ/ディーゼル音は?
同乗者にとって快適なドライブには気遣いある運転が必要だが、その気遣いはドライバーへのストレスにもなる。
ところがグランエースはそんな神経質にならずとも、同乗者をもてなす走りができてしまう。つまりドライバーにも楽なクルマなのである。
さらに言えば、スペックを見ると身構えてしまうほどの車体寸法だが、高いアイポイントと開口が大きいウインドウグラフィックがもたらす下方視界のよさ、車両感覚を掴みやすいボクシーなスタイル、サイズの割に小さな最小回転半径(5.6m)のお陰で存外に取り回しもいい。
快適性のもう1つの要点、静粛性も好感触。エンジン騒音は商用系を意識させる音質だが、騒音量は低く抑えられ、急加速でも車内の雰囲気を壊すほどでもない。パワートレインが遠くにあるような感覚はエンジンルームからの遮音にこだわった設計の賜だ。
エンジンまわりが静かになれば目立ちやすいロードノイズだが、これは乗用車一般と比較しても静かな部類。サードシート乗員との会話も通りやすく、後席の会話もよく聞こえてくる。
2.7t超の車重と1BOX系最大級のサイズがかなり有利に作用しているにしても、快適性に対する設計陣の熱意を実感させる走りである。
後席へ 「プレミアム」の2/3列目
肝心の後席の居心地だが、高アイポイントと広々した見晴らしのハイデッカーミニバンとでも表したくなる視界は共通するものの、寛ぎの演出については3列6名乗りのプレミアムと4列8名乗りのGでは多少印象が異なる。
プレミアムの2nd/3rdシートは全席がアームレストで独立したキャプテンシート仕様。アル&ヴェルのエクゼクティブラウンジの2ndシート同等の贅沢な造りで、シート幅は多少広く感じられた。
アル&ヴェルと異なるのは左右席シートピッチ。室内幅の広さの違いが表れている。
なお、3rdシートは2ndシートよりも若干内側にレイアウトされる。ホイールハウスの影響だが、真後ろに位置しないのは開放感と前後席の会話しやすさにも好影響。
8人乗り 「G」は?
Gも2ndシートにはこのエクゼクティブパワーシートが採用されるのだが、3rdシートはリラックスキャプテンシート。4thシートは6:4分割チップアップのベンチシート。
3.4m近い室内長とはいえ、均等に座れるようにセットするとレッグスペースの余裕はなくなってしまう。
8名乗車ならアル&ヴェルの2ndベンチ仕様のほうが実用的である。4thシート収納が標準状態で、緊急時には8名にも対応可能程度に考えるべきだろう。
先進安全装備で比べると……
夜間歩行者対応のプリクラッシュセーフティやBSM、自動制動機能を持つRCTAなど安全&運転支援機能は最新仕様。全周俯瞰表示が可能なパノラミックビューモニターやデジタルインナーミラーも標準装着だ。
しかし、ACCは高速対応で約30km/hが作動下限。車線維持は逸脱しそうな時にブレーキによる進路補正を行うものの、自動補正操舵や走行ライン制御機能はない。
最新モデルながらアル&ヴェルと比較するとトヨタ・セーフティセンスは簡易型の印象もある。これはアル&ヴェルとの適応用途の違いの現れでもある。
アル&ヴェルなら高速長距離ツーリングは欠かせない要点の1つである。ACCは渋滞追従可能な全車速型となり、車線維持は前走車追従機能も備えた走行ライン制御型となる。
「買い」か?
さらにオーナードライバーにとってドライビングの満足感も重要だろう。心地よいパワーフィールや操縦感覚、ドライビングのアレンジ領域の広さ等々も大切だ。クルマの価値は「オーナードライバー≧同乗者」であり、その関係は亭主と客に喩えられる。
もちろんアル&ヴェルで送迎されても、かなりもてなされた気分になれるし、VIPカーとして用いられることも多いと聞いている。
ならばVIP送迎用途に特化したモデルを開発したら……、という流れでグランエースなのである。価値は「ドライバー<後席乗員」なのだ。
グランエース・プレミアムの価格は650万円。ミニバンとしては相当高価だが、アルファード・エクゼクティブラウンジ(V6車)はそれを上回る約727万円である。後席4名の寛ぎならアルファード以上なのに80万円も安いのである。
ハイヤー等々の法人需要が大半になると思われるが、大切なゲストをもてなすための費用対効果は極めて高い。
トヨタ・グランエース 試乗車スペック
グランエース・プレミアム
価格:650万円
全長:5300mm
全幅:1970mm
全高:1990mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:10.0km/L(WLTCモード)
CO2排出量:259g/km
車両重量:2740kg
パワートレイン:直列4気筒2754ccターボ
使用燃料:軽油
最高出力:177ps/3400rpm
最大トルク:46.1kg-m/1600-2400rpm
ギアボックス:6速オートマティック
乗車定員:6名
グランエースG(差分のみ)
価格:620万円
乗車定員:8名
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