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見捨てられた…? いやいや超熟成!! いまこそ再評価したいエルグランドの魅力と将来

掲載 更新 25
見捨てられた…? いやいや超熟成!! いまこそ再評価したいエルグランドの魅力と将来

 日産のフラッグシップミニバン「エルグランド」。現行型は2010年8月にデビューしたE52型だ。かつては月販1万台を超える売り上げを誇ったエルグランドだが、2021年の新車登録台数は3,513台、絶賛爆売れ中のアルファードに比べれば、およそ10分の1以下の規模ではあるが、それでも、毎月200~300台程度は売れている状況だ。

 ラージサイズミニバン界において、猫も杓子もアルファードに流れていくなか、エルグランドの魅力も知ってほしい!! ということで、今回は登場から12年経過しても色あせない、エルグランドの魅力についてご紹介しよう。

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文:吉川賢一
写真:NISSAN

初代登場当時から「走り」にこだわったモデル

 「大人数が快適に移動できる空間」というコンセプトがヒットした初代エルグランド(E50型、1997年~)。乗員や荷物をたっぷりと荷室に積み込んでもトラクションがしっかりと得られるよう、後輪駆動をベースとし、リアにはマルチリンクサスペンションをおごるなど贅沢なつくりとなっていた点は、当時の評論家やクルマ好きから好評を得た。

 続く2代目のエルグランド(E51型、2002年~)では、FRと4WDの2種類の駆動方式を踏襲しながら、リアにはV35スカイラインや初代フーガにも採用した、高性能なマルチリンク式サスペンションを採用。リア入力時の乗心地とリアの安定性を高次元で両立し、「走りへの強いこだわり」を誇示。ミニバン離れした俊敏な身のこなしで、大きなボディを、3.5リッターもしくは2.5リッターのV6エンジンでグイグイ引っ張っていく、非常に優秀なミニバンであった。

 2世代に渡って「走りのミニバン」をウリにして成功したことで、現行である3代目エルグランド(E52型、2010年~)も走りに拘ったモデルで登場。コスト低減のため駆動方式をFFベースへと切り替え、3.5リッターV6エンジンは継続し、2.5リッターはV6エンジンから直4エンジンへと置き換えられた。

 また、低重心化をするために、全高は2代目の1910mmから1815mmへと大きく下げた。当時の2代目アルファードの全高は1915mm(3代目となる現行アルファードは1950mm)であるから、アルファードと比べると、明らかに低く見え、純正車高ながら地面にへばりついたような低いスタイリングのエルグランドは、優れた走りを予感させるものだった。

 実際、その走りは秀逸で、高速走行からワインディングまで得意とする、快速ミニバンに仕上がっている。アルファードのような背の高いミニバンでは味わえない、乗用車ライクな走行性能と高い直進安定性(横風耐性も高く感じる)、どっしりと安定した乗り心地に加え、サスペンションのストロークがしっかりと確保されているので、その辺のシャコタンミニバンとは比較にならないほど、走りの質感は高い。この走行性能の高さは、登場から12年経っても色あせない、現行エルグランドだけがもつ長所だ。

V6エンジンのパワーとサウンドは満足感高し!!

 現行エルグランドは、2019年10月のビッグマイナーチェンジでフェイスリフトを伴う大変更をしている。前方衝突予測警報や後方衝突防止支援システム、後退時車両検知警報などの安全装備の充実に加え、フロントグリルのデザインを一新し、内装も10インチの大型ディスプレイを採用するなど、流行を取り入れ、各所がアップデートされた。クルーズコントロールの設定上限も120km/hへと変更されている。

 このマイチェン当時、テレビCMでは、峠道をハイペースで走るエルグランドが登場した。やはりエルグランドは、流行を取り入れたマイチェン後であっても「走り」こそがウリであり、日産もそこをなんとかアピールしたかったのだろう。

 V型6気筒NAガソリンは、8.7km/L(WLTCモード)という燃費の悪さだが、エルグランドの巨大を怒涛のパワーでグイグイ引っ張る。高速道路でフル加速をして、日産車特有の「クォー」というV6サウンドを聞けば、一瞬にしてその日の疲れなんて吹き飛んでいく(ほど気持ちいい)。2.5リッター直列4気筒エンジンの方(の燃費)は10.0km/Lだが、走りの質感や満足感は、V6の方が圧倒的に高い。

 また、エルグランドAUTECH(478万円~、250ハイウェイスターS)も2020年10月に登場している。本革シートやダッシュボード、ステアリングに入ったブルーのアクセントカラーは、この上なくカッコ良く、ラージミニバンを検討するならばぜひお薦めしたいモデルだ。

 これまでは、車重2トン以上のエルグランドをカバーできるe-POWERはなかったが、欧州日産の「キャッシュカイ」の新型で採用されることが発表されている「e-POWERターボ」ならば、エルグランドのパワートレインとしても十分に活躍してくれるだろう。

 この「e-POWERターボ」を2年前のマイチェンのタイミングで投入できていたら、いまのアルファード独り勝ち状態を回避できていたかもしれないが、いまからでも、エルグランド復活の切り札として、搭載されることを期待したい。

2019年にマイナーチェンジをした3代目エルグランド。アルファードに負けないほどのオラオラ顔となった

「お色直し」で新型を!!

 2019年に生産終了したトヨタの天才タマゴ「エスティマ」、2021年12月で生産終了となったホンダの名ミニバン「オデッセイ」。エルグランドもその後を追うように消えてしまう、というのが大勢の意見だが、筆者は、エルグランドが生き残る道はまだ残っていると考える。

 型式が「Z34」のままデザインを一新した新型フェアレディZ。このお色直しが大成功だったことが大きなヒントになりそうだ。同じ型式でも、あれほど見栄えを変えたことで、世界的に話題となり、アピールできる。

 もし、新型エルグランドがあるならば、プラットフォームはそのままの「E52」の型式のままでよいので、「デザイン修正と背丈を上げ(やはり高身長が似合う)、同時にパワートレインも、e-POWERターボやプラグインハイブリッド、バッテリーEVなどへ見直して欲しい。

 現行エルグランドオーナーが、再び買い変えたくなるほどに変化すれば、息を吹き返すことは不可能ではないはずだ。日産車販売に詳しいクルマの流通関係者によると、現エルグランドのオーナーは、乗り換え先がなくて困っているそう。セレナでは(車格的に)物足りず、アルファードは皆が乗っているので選びにくいそうだ。

 一度消えた火を再びつけることは容易ではない。日産の事情もよく分かるが、エルグランドにも、もう一度チャンスを与えてあげてほしい。

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