最新ディーゼルエンジンを搭載するCセグメントモデルの新型ゴルフTDIにとって、ライバルとはどんなモデルか。そう考えてみるも、車両価格を勘案すると直接的なライバルを特定するのは容易ではない。そこでここでは興味本位的なライバルとして、MINI 5ドアのディーゼル仕様、そしてゴルフのガソリン仕様を想定した。(Motor Magazine 2022年3月号より)
明確な個性があるMINI。元気に走らせると楽しい
新型ゴルフTDIのライバルとして、身内のゴルフeTSIとMINIクーパーD5ドアだと聞かされて、最初は自分の頭の中にクエスチョンマークが浮かんだ。日本でゴルフTDIをジャンル分けするならば、輸入Cセグメントディーゼル車となる。どう考えてもそれほどニッチなマーケットには思えないが、具体的な車種を挙げるとなると意外に難しい。
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たとえばメルセデス・ベンツにはA200dが、そしてBMWには118dがあるものの、どちらもプレミアムブランドだけあって前者は468万円、後者は436万円と少々値が張る。ちなみにゴルフTDIは、装備が充実した取材車のアクティブ アドバンスで398万9000円、基本グレードとなるTDIベーシック アクティブなら344万4000円の設定。やはりメルセデス・ベンツとBMWは、ひとクラス違うようだ。
今回連れ出したMINIも本来はプレミアムブランドだが、MINI 5ドアはBセグメントとCセグメントの中間的存在ということもあり、クーパーD 5ドアの価格は359万円と、ゴルフTDIよりむしろお買い得。本当は、新型プジョー308があればかなり興味深い戦いになったはずだが、残念ながら日本ではまだ正式発表前だ。というわけで、前述のゴルフ eTSIを含めた3台での比較テストを行うことにした。
まずは、個性的なMINI クーパーD 5ドアの印象から記そう。2021年5月にマイナーチェンジを受けたMINIは、内外装がリファインされるとともに、ストップ&ゴー機能付きアダプティブクルーズコントロールやレーンデパーチャーウォーニングなどの安全装備が充実し、コネテクティビティも機能強化が図られた。
これまで、MINIのスタイリングといえば「MINIらしさ」を最優先しつつ、その中で新たなディテールを提案するといった手法に終始してきた。だが今回のフェイスリフトではフロントバンパーの中央部だけを切り取ってその周囲をブラックとクロームのパーツで縁取りしたり、ルーフにはオプションながら前から後に向けて色が徐々に変化するという凝った塗装「マルチトーンルーフ」が設定されることになった。
このルーフペイントは「もしも、塗装ラインで前を流れるクルマの塗料が後のクルマの塗料に混じったら、どんな色になるだろうか?」という発想から誕生したものだという。というわけで、もともと特徴的な出で立ちのMINIが、今回のフェイスリフトでさらに個性的に生まれ変わったが、試乗した印象も、その外観と同じで極めて個性的であった。
直列3気筒1.5Lのディーゼルターボエンジンは、始動時にエンジンがブルブルと揺れたり、低回転域では軽いこもり音が発生したりと、やや古くさい印象がなきにしもあらず。だが、ペースを上げるとエキゾーストサウンドは抜けのいい音色に変わり、ドライバーの感性を心地良く刺激し始める。
こんな調子で、とにかくMINIは元気に走らせたほうが楽しく、そして魅力が増していく。その最高出力と最大トルクは116psと270Nmで、2Lディーゼルターボエンジンを搭載するゴルフTDIには明確に引き離されている。だが、パワーバンドに入った途端にいきなり活気づくその特性はなかなかドラマチックで、スポーティな走りが好きなドライバーにぴったり。反対に、のんびり走りたいドライバーには忙(せわ)しなく、またやや扱いにくいエンジンと言えるかもしれない。
足まわりの仕上がりにも似たところがあり、低速域ではゴツゴツという振動が路面から遠慮なく伝わってくる。このため、ヘッドレストに頭を軽く預けておくと、クルマが前後へ揺れるたびに後頭部が跳ね上げられて、かなり煩わしい思いをすることになる。
ところが、ワインディングロードに挑む際のハンドリングは正確で、ロール角を最小限に留めたまま俊敏にコーナーを駆け抜けて行ける。しかも、そんな時でもリアのスタビリティは良好なので、安心感は強い。つまり、パワートレーンにしてもシャシにしても、元気に走ることを前提にしているのがMINIなのだ。
インテリアの作りは凝っているし、シートに使われているオプション設定のレザー素材もこのクラスとしては実に上質。そんなこだわりのデザインと活発な走りこそが、MINIの真骨頂と言っていいだろう。
未来感のあるゴルフeTSIその新鮮な感覚こそが魅力
もう1台のゴルフeTSIアクティブは、MINIとは対極にあるクルマと言っていい。エンジンは、3台の中で最小となる1L直列3気筒ターボ。ただし48Vのマイルドハイブリッドシステムによる意外なほど強力な電動パワーにより、身軽に発進してストレスを感じさせない。
それと同時に、内燃機関とは明らかに異なる電気モーターによるパワーの立ち上がり方が独特で、電気自動車に乗っているときと同じような未来感が味わえる。この新鮮な感覚こそ、ゴルフeTSIを象徴しているものかもしれない。そして、発進直後はモーターの力が勝っているものの、その後はエンジンの占める比率が徐々に高くなっていくことはご想像のとおり。
そんな時には3気筒エンジン特有の軽いビート感も響いてくるが、全体的な騒音レベルはまずまず低い。いっぽうで、高速域での加速感は「1Lなりのレベル」で特別に力強いことはないものの、これが高効率の原動力であることも事実だ。
足まわりは、快適性重視のソフトなセッティング。それでもコーナリング性能は十分に高いが、ロールもそれなりに大きく、荒れた路面ではボディが軽く煽られることもあった。大入力時にボディに残る微振動が気になるのは、前項で述べたとおり。重大な欠点ではないが、私がゴルフに寄せる信頼が少し揺らいだことは事実だ。
ディスプレイへのタッチ操作が多用されたコクピットまわりは、スッキリとしているうえに新鮮だ。ただし、操作性に関しては煮詰められていない部分もあり、正直、現状ではまだまだ扱いにくい。ナビの目的地検索などは本来、音声認識を主体としたシステム構成なのだろうが、その肝心の音声認識の認識率が決して高くないのは残念で、改良を望みたい部分だ。
快適性を重視しつつ安定。ゴルフTDIの優れた質感
この2台に対して、ゴルフTDIはコンパクトカーの王道とも言える立ち位置にいる。足まわりは快適性重視ながらハンドリングも良好で、荒れた路面や高速道路でもピシッと安定している。そして、ボディは巌のように頑丈で安心感と優れた質感が滲み出ている。2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンは十分に静かでスムーズなうえに、常用域での力強さは抜群。
しかも実用燃費は良好で、しばしば20km/Lを越えた。デジタル中心の操作系が煮詰め不足なことはゴルフeTSIで述べたとおりだが、室内は広々として使いやすい。まさに、ファミリーカーのお手本と言っていい仕上がりだ。
したがって私は、3台の中では断然、ゴルフTDIに惹かれる。(文:大谷達也/写真:井上雅行、永元秀和)
フォルクスワーゲン ゴルフ TDIアクティブ アドバンス 主要諸元
●全長×全幅×全高:4295×1790×1475mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1460kg
●エンジン:直4 DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1968cc
●最高出力:110kW(150ps)/3000-4200rpm
●最大トルク:360Nm/1600-2750rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:軽油・51L
●WLTCモード燃費:20.0km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●車両価格(税込):398万9000円
フォルクスワーゲン ゴルフ eTSIアクティブ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4295×1790×1475mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1310kg
●エンジン:直3 DOHCターボ+モーター
●総排気量:999cc
●最高出力:81kW(110ps)/5500rpm
●最大トルク:200Nm/2000-3000rpm
●モーター最高出力:9.4kw(13ps)
●モーター最大トルク:62Nm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・47L
●WLTCモード燃費:18.6km/L
●タイヤサイズ:205/55R16
●車両価格(税込):317万1000円
MINI クーパーD 5ドア 主要諸元
●全長×全幅×全高:4025×1725×1445mm
●ホイールベース:2565mm
●車両重量:1290kg
●エンジン:直3 DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1496cc
●最高出力:85kW(116ps)/4000rpm
●最大トルク:270Nm/1750-2250rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:軽油・44L
●WLTCモード燃費:19.5km/L
●タイヤサイズ:175/65R15
●車両価格(税込):373万円
[ アルバム : ゴルフTDIとライバル比較 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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