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わずか108馬力でも最高速は250km/h以上! 空力を極めてル・マンに挑んだ「CDプジョーSP66」というど根性マシン

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わずか108馬力でも最高速は250km/h以上! 空力を極めてル・マンに挑んだ「CDプジョーSP66」というど根性マシン

 この記事をまとめると

◼︎1960年代はド根性で意欲的にレースに参戦するメーカーが多かった

こんなんで公道走っていいのかよ! レーシングカーの「公道用バージョン」がもはや一般人には運転不可能オーラ全開だった

◼︎CDプジョーSP66は1960年代に誕生した空力重視のレーシングカーだ

◼︎100馬力強のエンジンで250km/h以上出す性能をもっていたが結果は芳しくなかった

 異色のレースカーは空力で勝負

 レースの歴史は技術革新と密接につながっていること異論はないでしょう。

「なにがなんでも勝ちたいんや!」

 この気概こそ、新たなアイディアの源となり、また勝利への飽くなきド根性を生み出すに違いありません。とりわけ、1960年代はそんな熱血漢が数多く活躍した時代で、映画やドラマになることもしばしば。加えて、いまでは常識とされているテクノロジーも当時は黎明期であり、周囲からは浮いているとさえ見られた時代でしょう。

 今回ご紹介するCDプジョーSP66もまた、そんなド根性エンジニアが作り上げた最初期の空力マシンにほかなりません。

 プジョーの名前こそついていますが、このレーシングプロトタイプは彼らが製作したものではありません。最初にあるCD、すなわちシャルル・ドイチュ(Charles Deutsch)が、プジョーから非公式にエンジン提供を受け、パナールのシャシーを流用して作り上げたマシンというのが正確なところ。

 ドイチュの名はさほど有名ではないかもしれませんが、フランス人エンジニアで、とくに空力やそれをもとにした性能効率に関するエキスパートです。当初はこれまたフランス人エンジニアのルネ・ボネに師事をうけ、ともにDB(Deutsch et Bonnet)ブランドを立ち上げ、何台かのスポーツプロタイプを製作、ル・マンにもエントリーして性能指数賞を獲得するなどの活躍をしました。

 その後、独立したドイチュは自らのブランド、SERA-CD(Société d’Etudes et de Réalisation Automobiles – Charles Deutsch)を結成してル・マン参戦を目指すことに。これが1962年のことで、当時のル・マンはお馴染みのフェラーリやフォード、あるいはポルシェといった強豪がひしめいていたほか、地元フランスからもアルピーヌやルノー・ゴルディーニ、おまけに師匠だったボネまで参戦するという超激戦レース。

 もっとも、前述のとおりDB時代から総合優勝でなく、小排気量クラスへのエントリー、かつ性能指数賞を狙ったものですから、SERA-CDのような小規模ファクトリーにも十分チャンスがあった時代といえるでしょう。

 CDプジョーSP66は1966年に完成し、ル・マンには3台がエントリーしました。ご覧のとおり車体はぬめっとした曲線だけで構成され、全高が抑えられたほか、リヤにいくに従って細められるという当時の空力思考らしいスタイル。正確なスペックこそ公表されていませんが、ボディが涙滴型になるよう、前輪に比べて後輪は極端なまでにトレッドが絞られているそうです。

 世界最先端の空力テクノロジーを採用

 そして、ル・マン仕様ではリヤエンドにツノのように直立するフィンも見どころのひとつ。当時最先端だったエッフェル航空力学研究所で得た知見に発するアイディアで、ユーノディエールの長いストレートでの安定性を狙ったもの。のちに多くの追随アイディアが生まれたことはご承知のとおり。

 たとえば、アメリカのシャパラルも空力について画期的なマシンを数多く作りましたが、垂直フィンやその取り付け(車軸上に最大応力がかかる位置)など、ドイチュにインスパイアされたものもいくつかあった模様。

 こうした先鋭的なマシンを作ったおかげなのか、プジョーからエンジン供給という援助を得ることになったドイチュ。当時のプジョー204に搭載されていた1.2リッター直4OHVは、ストックで58馬力だったものが、モチュール・モデルネ(Moteur Moderne)なるチューナーによって108馬力にまでパワーアップ! 760kgという軽量も手伝って、ユーノディエールの直線では250km/hの最高速をたたき出しています。

 1970年代の空力的プロトタイプカーよりはるか以前にこれだけのパフォーマンスをもたされたのは、やっぱりドイチュの先見性やド根性といわざるを得ません。

 もっとも、肝心のル・マンでは最初の1966年は3台がすべてメカニカルトラブルでリタイヤ、翌年も2台がエントリーするも、これまた早々にリタイヤという苦いリザルト。結局、CDプジョーSP66は、プジョー博物館に収まるなど、その後のレース活動はすべてキャンセルされてしまったのでした。

 が、ドイチュの空力的な技術力と勝利への貪欲さはレース業界が手放すはずもなく、すぐさまポルシェが自陣営へと誘い込むことに。伝説的な908や917にはドイチュが深くかかわったとされています。その後も、フランスの名門チーム、リジェ(JS11)やアルファロメオ(179)にもCDプジョーSP66に注がれたエアロワークが取り入れられているのです。

 なにがなんでも勝ちたい気もちは、先見性を生み出すのと同時に、普遍的な勝利の方程式まで構築するのかもしれません。なお、ドイチュは1980年にこの世を去っていますが、SERA-CDは現在もテクニカルシンクタンクとして活動を続けています。

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みんなのコメント

2件
  • kmq********
    大昔、上馬の住宅街の空地に駐めてあった
  • malco
    【伝説的な908や917にはドイチュが深くかかわったとされています】

    そんな話は初めて聞いたが、もし本当に深くかかわっていたのだとしたら、917が初期段階でダメダメだったのはこの人のせいだということになる。

    実際問題として、908の様なダウンフォース獲得よりもドラッグ削減を目指したクーペタイプスタイルだとハンドリングに問題が生じ、これが原因で死者まで出ている。

    それが一転、ジョン・ワイヤ・オートモーティヴ・エンジニアリング (JWA) と提携してボディ形状をショートテールのクルツ(K)にした途端に破竹の快進撃で勝利を重ねているから、もし本当にドイチュが深くかかわっていたら"とんだ厄介者"だったとしか言えないと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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