泡とともにあったモデルライフ
text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)平成バブルとも呼ばれる未曽有のバブル景気は、1986年に始まり1991年まで続いた。
【画像】取材した2代目トヨタ・ソアラ【懐かしのディテール】 全38枚
バブル期を象徴するクルマといえば異常な値上がりを見せたスーパーカーが真っ先に思い浮かぶが、この時期は日本車も全般的に賑やかだった。
好景気の勢いを借りるようにして世界の一流メーカーと対等に渡り合えるような高級車やスポーツカーが登場し、販売台数も大幅にアップしたのである。
中でもスーパーホワイトと呼ばれる真っ白なボディの2代目トヨタ・ソアラは、品の良さを感じさせるスタイリングや、直6エンジンをはじめとする高性能により、クルマ好きの男性だけに留まらない幅広い層に人気を博した。
「ハイソカー」などとも呼ばれたこの高級パーソナルクーペは、最近は聞かなくなった「助手席に乗りたいクルマ」といったランキングがあれば、必ずトップの方に顔出すような1台だったのである、
そもそも日本における高級パーソナルクーペというカテゴリーは、1981年にデビューした初代ソアラによってメジャーになったものである。
「世界にひとつ、日本にソアラ」という堂々としたキャッチコピーは、初代を徹底的に洗練させたようないで立ちの2代目ソアラのために用意されたもの。
そしてこの2代目は、1986年にデビューし、バブル景気と足並みを揃えるようにして一世を風靡し、1991年に生産が終了されたのだった。
4バルブ、エアサス等々、技術の粋が集結
トヨタが最先端技術を惜しみなくつぎ込むと宣言し、「スーパーグランツーリズモ」と銘打ったMZ20型、2代目ソアラ。
用意された2Lと3Lのエンジンがともに直列6気筒ということからも、初代からの高級路線をそのまま引き継いだコンセプトがわかる。
特にフラッグシップモデルである3.0GTリミテッドが搭載する3Lユニット、7M-GTEUは4バルブヘッドを装備した直6インタークーラーターボ・エンジンであり、240psの最高出力を発揮した。
昨今話題のGRヤリスは、2代目ソアラの半分ほどの排気量(1.6L 3気筒ターボ)から272psを叩き出している。そう考えると、ここ30年のガソリン・エンジンの進化の大きさを思い知らされるが、1980年代後半の240psを現在の感覚で表現するならば倍以上に相当すると思われる。
エンジンもすごいが2代目ソアラはアシもすごかった。
前後ともダブルウィッシュボーン形式が採用されたサスペンションには初代ソアラから受け継いだTEMS(電子制御可変ダンパー)も継承されている。
さらに3.0GTリミテッドでは世界初の電子制御エアサスペンションも装備されていたのである。
また複雑なヒンジを使ったイージーアクセスドアや奥行き感のあるデジタル表示のスペースビジョンメーターなど、全身に目新しさが溢れていたのである。
ソアラと言えば2代目! のワケ
ソアラ誕生のヒントとなったのは欧米発祥の高級パーソナルクーペたちである80年代の初頭といえばBMW 6シリーズやジャガーXJS、メルセデスSLCなどがその代表格といえる。
たった2人しか乗れない贅沢なスポーツクーペは、例え技術的な課題をクリアできたとしても、市場にそれを受け入れるだけの余裕がないと成立しないところがあった。
わが国の高級クーペの始祖といえばトヨタ2000GTが有名だが、60年代後半のわが国では打ち上げ花火的な存在にしかなりえなかったのである。
だが2000GTの精神的な後継といえる初代ソアラは、見事にパーソナルクーペを定着させることに成功したのである。
とはいえ現在のトヨタのラインナップに、ソアラの名はない。
ソアラが日本の自動車技術の粋を集め、パーソナルクーペの世界を謳歌したのはこの2代目までだった。1991年にデビューした3代目ソアラは、北米市場を狙って企画されていた。
このためボディは大型化され、V8を積むなどアップグレードされていたが、初代や2代目のような煌めきをまとってはいなかった。
さらに4代目は、2005年に日本でもレクサス・ブランドがスタートしたことを受け、モデルライフ半ばでソアラの名を失ってしまったのだった。
4代に渡るソアラの歴史を振り返ると少し物悲しくもあるが、だからこそ「ソアラといえば2代目!」という記憶がより鮮明なものとして残っていることも確かなのである。
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