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「押してはいけない」VW新型「ゴルフR」のスイッチとは? プロドライバーが腰を抜かしかけるほどの取扱注意物件でした

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「押してはいけない」VW新型「ゴルフR」のスイッチとは? プロドライバーが腰を抜かしかけるほどの取扱注意物件でした

最新・最強のVW謹製ハッチバックを公道で試す

 フォルクスワーゲンの主力ハッチバック「ゴルフ」は現在第8世代。日本市場では2021年6月にゴルフ8がデビューし、ホットバージョンの「ゴルフGTI」が同年12月に追加された。そして2022年10月に4WDの最強仕様「ゴルフR」がついに上陸。最新にして最強のゴルフの走りを検証していこう。

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第一印象は「どーしちゃったの?」と思えるほどおとなしい

 新型ゴルフRは、ゴルフ史上最強のパワーを誇る。搭載するエンジンは直列4気筒インタークーラーターボであり、最高出力320psと、最大トルク420Nmを絞り出す。先代に比較して10psの馬力と20Nmのトルクを上乗せしている。ハイブリッドなどではなく、純粋な内燃機関。史上最速ということはつまり、超激辛の加速度を披露するのだ。

 だがしかし、ステアリングを握ってゆるゆると走らせると、そんな期待は完全に裏切られる。排気サウンドは、わずかに獰猛な気配がするだけで、ごうごうと唸りをあげることもない。低回転域の図太いサウンドを静かに路面に落とすだけで、過激な気配は皆無なのである。

 乗り心地も優しい。路面の凹凸を優しくいなす。それでも先代に比較して、スタビライザーの剛性を10%高めている。車高を10mm下げている。その数字を聞けば、やる気のホットハッチを連想する。だが予想は完全に裏切られるのだ。

 そういえば、外観も期待するほど過激ではなかった。前後左右の「R」のエンブレムが誇らしげに貼られている以外にR専用の武装は、1インチアップの18インチブレーキがホイールから覗く程度。背後にはR専用の4本出しテールパイプが威圧するものの、それが発するサウンドは紳士的だ。ピアノブラックのディフューザーと、マットカラーのサイドミラーぐらいがRらしいところだろうか。それ以外に過激さは一切ない。

狂乱の加速をいなす「Rパフォーマンストルクベクタリング」

 ただし、本気になってスロットルペダルを床まで踏み込むと、事態は一変する。2Lから320psを絞り出すということはつまり、ターボ過給圧をギリギリまで高めていることを意味する。アイドリング付近の低回転域にわずかなトルクの谷が存在するものの、それが劇的な盛り上がりの序章となる。フル過給が始まると、ドカンとパワーが炸裂するのだ。

 組み合わされるトランスミッションはツインクラッチの7速DSGであり、間髪入れずに電光石火の変速を見舞う。レスポンス遅れはまったくなく、一気呵成に速度を高めていくのだ。

 それでもスタビリティを失わないのは、Rが前後の駆動トルクを自在に配分する「4MOTION」の四輪駆動システムだからだ。さらに新型で採用された「Rパフォーマンストルクベクタリング」ではリアの左右輪のトルク配分をこなす。これは、リアデフの左右にそれぞれ多板クラッチが組み込まれており、たとえば旋回中にアンダーステアを感じたら外輪のトルクを増強させる。テールスライド気味の挙動におちいれば、内輪のトルクを増やして安定性を確保するといった具合である。

 しかもご丁寧に、後輪の駆動配分を高めたレースモードまである。ドリフト旋回するほどではないが、限界域まで追い込むとテールスライド気味の挙動が顔を出す。少なくても頑固なアンダーステアはそれによって補正されるのだ。

禁断の「R」スイッチは取り扱い注意!?

 そんなだから、走りは激辛である。市街地ではあれほど大人しく優しい乗り味だったのに、その気になった瞬間に牙をむく。サーキットのように路面が安定しているステージならば穏やかだが、アンジュレーションのあるワインディングでひとたび鞭をくれると、かなりのジャジャ馬に変貌する。

 アンダーステアとテールスライドが激しく入り乱れる。それを制御するには、それ相応のドライビングテクニックが求められるだろう。

 さらにステアリングスポークの左親指付近には、禁断の「R」スイッチがある。それを押せば瞬時に戦闘モードにセットされる。そのジャジャ馬的な操縦性に叩き込まれるのだから、軽はずみに、禁断のスイッチに触れない方がいいだろう。

 平常心でいるならばゴルフRは極めておとなしい。紳士のハッチバックでありながら、ひとたび戦闘モードに突入すれば獰猛な牙を剥く。その変貌ぶりに腰を抜かしかけた。

 それはつまり、分別ある大人のホットハッチという言い方ができるのかもしれない。

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