■搭載技術によって自動運転レベルが設定される
自動車が誕生してから100年以上が過ぎたいま、文字通り「自動」で動くクルマが現実になりつつあります。最近では『自動運転』という名称はテレビから普通に聞くことがあるほど、一般的に使われています。自動車メーカーや、IT企業、ベンチャー企業、大学など、完全自動運転を目指して研究や実証実験が行なわれていますが、実用化にはまだまだ越えなければならないハードルがいくつもあるようです。
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まず、自動運転とは「レベル1」から「レベル5」までの5段階に分類したものの総称です。それぞれのレベル分けは下記の通りです。
【運転者が一部又は全ての動的運転タスクを実行】
・レベル0(運転自動化なし):運転者が全ての動的運転タスクを実行する。(安全運転に係る監視、対応主体は運転者)
・レベル1(運転支援):システムが縦方向または横方向のいずれかの車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行する。(安全運転に係る監視、対応主体は運転者)
・レベル2(部分運転自動化):システムが縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行する。(安全運転に係る監視、対応主体は運転者)
【自動運転システムが(作動時は)全ての動的運転タスクを実行】
・レベル3(条件付運転自動化):システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行。作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に適切に応答する。(安全運転に係る監視、対応主体はシステム[作動継続が困難な場合は運転者])
・レベル4(高度運転自動化):システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行する。(安全運転に係る監視、対応主体はシステム)
・レベル5(完全運転自動化):システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を無制限に(すなわち、限定領域内ではない)実行する。(安全運転に係る監視、対応主体はシステム)
※出典:「官民 ITS 構想・ロードマップ 2018」
具体的には、自動ブレーキが搭載されているクルマは「レベル1」。車間距離を一定に保ちつつ、定速走行を車が自動でやってくれる機能のACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が搭載されているクルマはレベル2です。このレベルまでは、基本的に運転者による監視が必要です。
日本では、自主規制の関係もありシステムに運転を任せることはできませんが、「テスラ」など一部のモデルではレベル3の自動運転が技術的には可能とされています。日本政府は2020年までに限定地域での「レベル4」実用化を目指していますが、まだ市販化を実現しているメーカーはありません。
直近の話題では、「レベル3」を実現できていると話題になった新型アウディ「A8」が先ごろ発売されましたが、アウディ ジャパン株式会社のフィリップ・ノアック社長が「レベル3の機能でもある『トラフィックジャムパイロット』は、国際的な技術認証や道路交通法の改正の関係で、まだ各国の市場に導入されてはいません。新型『A8』は、世界で初めてレベル3の条件付き自動運転システムを可能にすべく開発されました。そのなかで今回、日本で発売する新型『A8』は、洗練されたレベル2の運転支援システムを提供しています(2018年9月5日の新型A8発表会にて)」と述べています。
つまり、アウディは技術的には「レベル3」を実用化できているものの、国際条約や法整備が整ってない現状では、まだ公道で「レベル3」の自動運転ができないというのが実情です。
■自動運転「レベル3」の壁
自動ブレーキやACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が搭載されているクルマが該当する、「レベル1からレベル2」は、運転支援機能という意味合いが強いです。
その上の「レベル3」以上は、システムが運転を肩代わりするので、実際に普及するとなるとさまざまな問題が生じます。とくに、『自動運転による事故は誰の責任になるのか』という問題をはじめとする議論は、国連で行なわれる国際基準の制定や、自動運転車の認証などの事案について日本が主導する形で進めています。
運転支援機能がメインとなる「レベル1」と「レベル2」の自動運転であれば、万が一の事故の際には運転者が責任を負うというのは自然です。しかし、「レベル3」以上で、運転をシステムに任せた上で事故が起きてしまった場合、運転者が『運転』しているのかが争点になります。
自動運転のシステムの提供者(自動車メーカー)が、責任を追うべきという考え方もありますが、あらゆるシチュエーションが想定される自動車という乗り物について、自動車メーカーがすべて責任を負うというのは難しく、また仮にそうなってしまうとリスクが多すぎて自動車メーカーが自動運転車両を開発するメリットが少なくなります。
現在の大きな方向性としては、これまで『運転者』として捉えていたものを、『遠隔管理者』として捉え直すという考え方となりつつあります。
完全自動運転車両における『運転者』は、必ずしも運転席に座っておらず、場合によっては自動車以外の場所にいることも踏まえると、『遠隔管理者』という表現で管理責任を問うということです。
この考え方は、現状の自動車と運転者の関係と同様であり、一見わかりやすいように見えます。しかし、この『遠隔管理者』には運転免許が必要なのか、『遠隔管理』とは具体的にどのような行為なのか、不透明な部分が多くまだまだ議論の余地があります。
今後、責任の所存や関連する法律が明確にならなければ、自動運転をはじめとする新技術の発達はありません。実際に、自動車を運転するユーザー自身も『自動運転』に対する正しい認識を持つことが重要といえます。
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