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“ランエボ”のDNAが注ぎ込まれたSUV──新型三菱エクリプス クロスPHEV試乗記

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“ランエボ”のDNAが注ぎ込まれたSUV──新型三菱エクリプス クロスPHEV試乗記

三菱自動車のコンパクトなクロスオーバーSUV「エクリプス クロス」にくわわったPHEV(プラグ・イン・ハイブリッド)モデルに小川フミオが試乗した。同カテゴリーでは、ほとんどライバルがない希少なPHEVモデルの魅力とは。

内外装も一部変更

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三菱自動車が2020年12月4日に発売したプラグ・イン・ハイブリッドモデルのエクリプス クロスPHEVは、スポーティなルックスと、外観のイメージを損なわないドライブフィールが特徴だ。外観は若々しいいっぽう、室内の質感は高く、おとなもじゅうぶん楽しめる。

外部充電式の比較的大きな駆動用バッテリーを備えたプラグ・イン・ハイブリッドは、このところ数が出てきた。ネックは価格がまだ高い(バッテリーの価格しだい)ところであるものの、一般的にハイブリッド車よりEVモードでの航続距離が長いうえに、パワーもあって、魅力は大きい。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiそんななかで、三菱のエクリプス クロスPHEVは”キャラだち”している。ドライブしての楽しさが追求されているのだ。とりわけワインディングロードを駆けぬけるときの楽しさが命、などと開発陣が言うぐらいで、かつてランエボ(高性能のランサーエボリューション)で鳴らした同社のDNAが注ぎ込まれているのかもしれない。

スタイリングは、2017年に発売されたクロスオーバーSUV、エクリプス クロスと共通だ。今回、マイナーチェンジが施され、併売されるガソリンモデルと同様、フロントマスクの一部やリアウインドウのデザインに手が入った。そこにアウトランダーPHEVの心臓部を移植している。

Hiromitsu YasuiアウトランダーPHEVの登場が2012年だから、三菱はこの分野でながい経験を積んでいる。基本的におなじパワーユニットを使いながら、アウトランダーはファミリーユースでも使えるように、いっぽう、エクリプス クロスは「外観からイメージされる期待を裏切らないように」(三菱自動車プロジェクト開発マネジメント部の水野恵介主任談)と、モデルごとの味つけを大きく変えている。

こんなにスポーティでいいんでしょうか!?

エクリプス クロスPHEVを楽しめる場面のひとつは、ワインディングロードだ。もちろん市街地ではスムーズで、乗り心地も悪くない。とはいえ、車両運動統合制御システムであるS-AWC(Super All Wheel Control)で「ターマック」を選択したときに、本領を発揮するのだ。

Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiターマックとは、自動車競技であるラリーで”舗装路”を意味する。ダートや砂利道に対する概念で、箱根や日光など、自動車用の山岳路のほとんどはターマックだ。くねくねと屈曲する舗装路を走るためのモードがエクリプス クロスPHEVのターマックなのだ。

ターマックを選ぶと、パワープラントの出力特性が変わる。ガラリといっきに、というかんじで大きく変わる。アクセルペダルの踏みこみには敏感に反応。飛び出すように加速する。

Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui同時に、「AYC(アクティブヨーコントロール)」機構がより積極的に各ブレーキを制御することで、ステアリング・ホイールを切ったときのボディの動きをより機敏にしている。たとえばカーブを曲がるときは、内輪側にブレーキをかけ、積極的に車両のノーズが内側を向くようにしているという具合だ。

サスペンション・システムはダンパーもスプリングも、電子制御はいっさいなし。にもかかわらず加速とブレーキの制御だけで、前後左右の荷重コントロールまでうまくおこない、結果「こんなにスポーティでいいんでしょうか!?」と、驚くほどのハンドリングを味わえるのである。こうして、キャラクターがきちんと確立されているのだ。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui自慢のオーディオ

メカニカルレイアウトは、2.4リッター直列4気筒ガソリンエンジンにくわえ、フロントとリアにモーターを1基ずつ搭載。三菱名づけるところの「ツインモーター4WD」だ。

ピュアEVとして満充電時は57.3km(メーカー発表値)走行可能だ。駆動用バッテリーの残量が既定量を下まわれば、エンジンが始動する。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiエンジンとモーターの制御モードは3種類。ひとつはEVモード(モーターのみで走行)、それからエンジンが充電のために動くシリーズ走行モード、そして急な追い越し加速時などはエンジン主体のパラレル走行モードだ。

「距離にもよりますが、通勤使用などの場合、多くの人はほぼEV走行でこなせると思います」(EVパワートレイン技術開発本部の半田和功担当部長)という。エンジンとモーター併用時の燃費もリッター16.4kmと、高効率だ。

インテリアの質感も高い。走行中にブラインドタッチできるような機能的な操作類のデザインと、試乗車のオフホワイトのレザーシートは、ともに納得できる質感だった。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiくわえて、「自慢はオーディオ」と、前出の水野氏が言うように、たしかに音楽もかなりいい音質で楽しめる。外部メーカー製を採用しているのではなく、自社内開発のオーディオシステムという。

室内の静粛性は高いので、ベートーベンのような高音から低音までのダイナミズムが広い楽曲も受け付けるし、もちろん、昨今のドゥア・リパの迫力あるニューディスコサウンドだろうと、ブラッド・メルダウの繊細なピアノジャズだろうと、よく鳴る。

開発側は、少しだけトレブル(高音域)をあげた設定にしたそうで、きれいな高音部分を味わってもらいたいとのこと。たしかに、英国のジョージャ・スミスのジャズボーカルなどは最高で、クルマを駐めたあとも聴いていたくなった。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui室内にいると、(ターマックモードを選ばないかぎり)まことにおとなっぽいクルマを操っている印象だ。全長4545mmのボディは扱いやすいサイズで、2670mmのホイールベースはじゅうぶんな室内スペースを提供してくれている。おとなもゆったり後席に乗っていられる。

「ダイナミックシールド」と名づけられた三菱車独自のクロームの加飾をはじめ、外観の印象が若々しいので、これにやや抵抗感をおぼえるひとがいるかもしれない。白状すると、私もそうでした。

Hiromitsu Yasuiでもまぁ、ドライブの楽しみを求めてエクリスプス クロスPHEV(384万8900円~)を買うひとには、乗る前からヤル気にさせてくれるスタイリングであることはたしかだ。

ワインディングロードを走るのが好きなら、いちど試してみてほしい。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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