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独自ボディに2段リアウイング シエラ XR4i 高性能フォード:欧州での60年(3)

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独自ボディに2段リアウイング シエラ XR4i 高性能フォード:欧州での60年(3)

単なるトリムグレードとは一線を画すXR

1970年代後半に入り、RSを名乗るフォードの高性能モデルは実力を一層向上させていったが、価格も上昇していった。ベーシックなモデルと、モータースポーツ色の強いモデルとのギャップを埋める必要があった。

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1982年にシエラが登場する以前にも、エスコート・メキシコやフィエスタ・スーパースポーツといった、中間に位置する仕様は投入されていたが、散発的だった。そこで投じられた1手が、エクスペリメンタル・レーシング(XR)を名乗る共通グレードだ。

最初に登場したのは、エスコートのXR3。欧州フォードのトップへ就任したボブ・ラッツ氏によって、激しくなる日本車との競争を生き抜くべく、「知覚価値」を加えるために設定されたグレードだった。ゴルフ GTIに対する、フォードの回答でもあった。

ボディキットは控えめで、アルミホイールは上品なテレダイヤル・デザインを採用。オプションのステッカーで飾ることもできた。内装は、フランス人デザイナーのパトリック・ルケマン氏が手掛けたクロスで仕立てられた。

その次に登場したのが、フィエスタ XR2。動力性能ではライバルに及ばなかったエスコート XR3を振り返り、英国へ拠点を置くフォード・スペシャル・ビークル・エンジニアリング(SVE)によって、しっかりチューニングが施されていた。

初代フィエスタでは唯一、排気量の大きい1.6L 4気筒エンジンを搭載し人気を獲得。小さなハッチバックでありながら最高出力は84psとパワフルで、単なるトリムグレードとは一線を画す内容だった。

独自のボディシェルに2段リアウイング

最も売れた時期には、フィエスタの注文の25%近くをXR2が占めた。フォードが得た利益は、ベーシックな1.1Lエンジン仕様の2倍近くあり、追ってSVEがチューニングを加えたXR3iが登場したのも当然といえた。

このフィエスタの成功により、新しいシエラにも当初からXR4iの設定が決定。だが搭載するパワートレインが決まらず、通常のシエラから6か月遅れて投入されている。

最終的に選ばれたのは、上位グレードに積まれていた2.3L V型6気筒ではなく、カプリにも載っていた2.8L V型6気筒エンジン。最高出力は150psを発揮した。

チューニングの内容は、XR2やXR3の比ではなかった。見た目では、ボディの下半分に専用キットが与えられ、路面へ低く構えたスタンスを獲得。ジェリーモールドと呼ばれた滑らかな流線型のフォルムは、凛々しく引き締められていた。

最大の特徴といえたのが、テールゲートに追加された2段リアウイング。リアのサイドガラスには細いストライプがあしらわれ、未来感を醸し出した。同じグラフィックは、XR4iのロゴステッカーにも展開されている。

さらに、ボディシェル自体も独自のものだった。XR4i以外の2ドア・シエラは、サイドガラスが2枚並ぶ4ライトボディだったが、リア側が2枚に分かれた6ライトボディを得ていた。

挑発でテールが流れるエキサイティングさ

一般道を走らせると、コンパクト・ハッチバックのXR2やXR3がヤンチャなホットハッチだったのに対し、XR4iは遥かに洗練されていた。性格付けが大きく違っていた。

サスペンション・スプリングは柔らかく、乗り心地は快適。通常のシエラよりアンチロールバーは強化されていたものの、カーブではボディロールが小さくなかった。

当時は、ソフトなサスペンションが影響し、秀でた操縦性を得ていたXR2やXR3には並べないと評価する人もいた。それでも40年が経過した今では、この5台で最も親しみやすく運転が楽しく感じられる。

2.8L V6ケルン・ユニットは間違いなくスポーティ。低回転域からトルクが太く、より現代的なエスコート RSコスワースから直接乗り換えても、充分に速い。

エンジンは勇ましいサウンドを放ち、欧州製マッスルカーと表現したくなるほど活発。シャシーバランスは素晴らしく、シフトフィールには充足感が伴う。右足で挑発するとテールが流れ、エキサイティングな個性を垣間見せる。

荒れた路面での快適性を備えつつ、フィエスタのようにコーナーでは機敏。ワインディングへ飛び込むことも、高速クルージングで延々と遠くを目指すことも、問題なく受け入れてくれる。大人な高性能フォードだ。

大々的に売りたいというフォードの熱意

今回ご登場願ったレッドのシエラ XR4iは、1984年式。オーナーはアレン・パッチ氏で、5年ほど前にレストアを終え、路上への復活を果たしたという。

XR4iにはふんだんに追加装備が与えられており、シエラを大々的に売りたいという、当時のフォードの熱意を感じる。15インチの7スポーク・アルミホイールは、カプリ 280が履くものとデザインは同じだが、登場はこちらの方が先。インセットも異なる。

ダッシュボードには、赤いピンストライプで縁取られたメーターパネルが据えられる。グリーンに光る、デジタルディスプレイが時代を物語る。手頃な価格でありながら、しっかり細部まで気が配られていることがうれしい。

ホワイトのピンストライプも、XR4i専用のオプション。Injectionの書体が、統一感のあるスタイリングで浮いている。

発売当時はまだカプリ 2.8iが現役で、価格も安く、英国ファンの支持を集め続けていた。シエラ XR4iが、当初は狙い通りの販売数を稼げなかったことが、今では残念に思えてならない。

フォード・シエラ XR4i (1983~1985年/英国仕様)のスペック

英国価格:9170ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約450万円)以下(現在)
販売台数:2万5662台
全長:4531mm
全幅:1727mm
全高:1367mm
最高速度:210km/h
0-97km/h加速:8.4秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1175kg
パワートレイン:V型6気筒2792cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:150ps/5700rpm
最大トルク:21.9g-m/3800rpm
ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)

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みんなのコメント

6件
  • 当時の最新鋭の風貌でフォードにしてはコンパクトな3.8LOHV・・
    中々しぶい車だな
  • パッと見、なんちゃてR30スカイライン(笑)
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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