「椅子」が走りを変える!
例年恒例となっているマツダの冬季雪上試乗会。今冬も開催されたのだが、毎年12月末に行われることが多かったのに対し今季は2月末という遅い時期の開催となった。それには事情があった。これまでCX-3やCX-5、CX-8もこの冬季雪上試乗会において我々モータージャーナリストにプロトタイプモデルを先行試乗させてくれ、さまざまな意見交換の場としていたのだが、今回は次期「アクセラ改めマツダ3」のプロトタイプモデルが用意されていたからだ。
【幻の国産スーパーカー】ロータリーエンジン搭載の「マツダRX500」
マツダ3の国内登場まではまだ少し時間がある。2018年11月の北米・ロサンゼルスモーターショーでワールドプレミアされ、その斬新なデザインに注目が集まったがたばかりだが、そのプロトタイプモデルに試乗できるとあって心が躍った。
試乗会場は例年どおり北海道旭川北部、士別にある「マツダ剣淵試験場」だ。
会場に入るとテスト車が何台も並べられている。その多くは外装にスクープ対策のカモフラージュ塗装が施されていて「新型マツダ3」なのだとわかる。ルーフ形状からセダンとハッチバックの2タイプが用意されていることも明らかになった。
しかし、エンジンやサスペンションなど車体スペックの詳細は知らされなかった。今回の試乗テストではマツダ3にも採用される新技術を体感させることがメインテーマとなっているという。
その新技術とは 1:新世代車両構造技術(SKYACTIV VEHICLE ARCHITECTURE) 2:新世代車両運動制御((SKYACTIV VEHICLE DYNAMICS) の2本柱によって構築されている「走り」だ。
マツダは1を筋・骨格系、2は神経系として定義している。
1についてはマツダのシャシーダイナミクスを統括する車両開発本部の虫谷泰典さんが解説を行なってくれた。虫谷さん曰く「人間の持つ身体能力を最大限活かせるクルマとの一体化」をマツダ車が標榜する人馬一体の進化で目指すカタチと位置づけているそうだ。その実現のために着目したのが「脊柱のS字カーブが維持できるシート」の採用であり、着座姿勢で骨盤を立てる事の重要性を医学的見地も加味して説いてくれた。
その体験用テストシートが新型マツダ3に装着され、雪上の非常に小さなG変化の中でも従来型シートとの違いを感じられ興味深い。とくにクリープ走行ほどの極低速でも変化が現われるのはマジックかトリックが仕込まれているのかと思えるほどで、この発想から完成されるマツダ3完成車の走りにはますます期待が持てるのだった。
進化した車両姿勢制御技術で新型アクセラは意のままに操れる
次は神経系となるダイナミクスについて、同じく車両開発本部・ヴィークルダイナミクス担当の梅津大輔さんのレクチャーが始まる。
梅津さんは「筋・骨格系」と「神経系」の関係性が重要で、ハードとソフトの両輪で「意のままの走りを実現」すると説く。その実現にはドライバーの操舵に応じたエンジンによる荷重制御(GVC・Gベクタリングコントロール)に加え、AWDによる駆動力配分制御(i-ACTIV AWD)、ブレーキによるモーメント制御(GVC PLUS)によりシステム全体で人馬一体を実現する統合制御へと進化させたという。
車両姿勢をつねにフラットに近づけるサスペンションジオメトリーと駆動力配分、ヨーダンピングの収束を収め車虜安定性が高まるGVCプラスの効果を実際に体感した。それはかつてWRC(世界ラリー選手権)で活躍したマツダ323(ファミリア)4WDターボのグループAラリーマシンを彷彿させるコントロール性の高さで驚かされる。
今回、2パターンで体験した新型マツダ3の高度な基幹技術は他のマツダ車にも拡大採用されるだろう。このことからマツダ3のみならず今後登場あるいは改良されるすべてのマツダ車の走りに大きな期待が持てことになる。
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