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初代ボルボXC60はフロンティアスピリットに溢れるジャストサイズなSUVだった【10年ひと昔の新車】

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初代ボルボXC60はフロンティアスピリットに溢れるジャストサイズなSUVだった【10年ひと昔の新車】

2009年、新型クロスオーバーSUV「ボルボXC60」が日本に上陸した。安全性や質実剛健さというボルボらしさ、XC90ゆずりのSUVコンセプトを受け継ぎながら、強力なライバルが待ち受けるコンパクトSUVカテゴリーに参入したのだった。ここでは日本でデビューして間もなくMotor Magazine誌が行った試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年10月号より)

ヨーロッパからの新たなるムーブメント
「そこにマーケットがある」という確固たる実績が得られないと、なかなか行動を起こさない日本のメーカー。一方で、様々な色仕掛けを繰り出して自ら新たな需要を開拓しようと頑張るのが、とくに「プレミアム」をキーワードに謳う多くのヨーロッパブランドのスタンスだ。

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もちろんこれはあくまで一般論。日本のメーカーからも世界の市場に向けたチャレンジを感じさせるモデルがリリースされた過去は少なからず思い当たるし、ヨーロッパメーカーから世に問われたフロンティアスピリットに溢れるニューモデルが、ただの一代限りで見事に玉砕という例もひとつやふたつではない。ただし、そうした積極果敢なイメージこそが、実はヨーロッパ車の魅力だと感じる人は少なくないだろう。

そんなヨーロッパからリリースされるニューモデルに、昨今また新たなるムーブメントが感じられる。これまで幅をきかせてきたフルサイズ級のモデルに対し、ひとつ下のクラスを受け持つ多くのSUVのデビューがそれだ。エンジンは4ないし6気筒で、排気量も上限がせいぜい3.5L程度まで。それが昨今、コンパクトSUVと称されるニューモデルたちに共通して搭載される心臓の特徴的ディメンジョンになる。

もっとも、ここでのコンパクトという形容はあくまでも従来のフルサイズSUVに対する相対的なもの。個人的には、全幅が1.8mを大きくオーバーするモデルに、こうした表現を用いるのは少なからず抵抗感をともなう。

「コンパクト」でも情感たっぷりのフォルム
いずれにしても、今回の企画で主役となるXC60のサイズも、まさにそうしたポジションに収まる印象が強いもの。全長は兄貴分であるXC90比で185mm、ホイールベースは80mmと大幅な短縮。ただし、全幅はわずかに20mmダウンの1890mmに留まるから、やはり日本の環境からすれば、かなり大柄と言わざるをえないのがこのモデルの基本プロポーションでもある。

一方で、「ゆとりの全幅の持ち主であるからこそ、あの情感豊かな表現が可能になった」と、そう納得させられるのがXC60のスタイリングでもある。キャビン後端にかけての強い平面絞りや、それとリンクして実現したステップ状のショルダー処理などはその典型と受け取れる部分。

それを筆頭に、抑揚溢れる各部の造形がXC60のエクステリアの見せどころだ。そして、フロントグリルに収められたかつてなく大きな「アイアンマーク」やフロントバンパーからフードを経由してサイドへと回り込むV字型のライン、さらにはV70/XC70から採用されているブランド名が強調表示されたリアのロゴタイプなど、自らのDNAを強くアピールする姿勢が垣間見られるのも、このモデルのデザインのひとつの特徴と言える。

これまでのボルボ車には考えられない遊び心に溢れたインテリア
かくも大胆で、しかしボルボ車ならではのアイデンティティのアピールも忘れないエクステリアに呼応するかのように、インテリアのデザインにも新しい試みが盛り込まれた。

アイキャッチャー役を受け持つ「センタースタック」は、これまでの各モデルに対してさらにその存在感を強調したデザイン。操作性と視認性を考慮して運転席側へのひねりが与えられ、よりドライバー重視の雰囲気が醸し出されたのも特徴だ。

ナビゲーション用のモニターはこのセンタースタック最上部の見やすい位置にレイアウトされる。サイドビューやリアビューカメラが拾った映像もこのモニター上に映し出されるのもスマートな方法。

だが、残念ながらその操作は別体のリモコンで行わなければならない。実はナビゲーション本体は日本のリプレイス品(アルパイン製)で、それを欧州仕様と同一のモニターに映し出すことを実現させたものの、そのモニターにはそもそもタッチセンサーが組み込まれていないため、画面上での操作が行えないという。

ゆえに操作はすべてリモコンで行うことになるが、そのリモコン本体はコンソールボックスの中に転がされているという状況。そんな状態は安全上も好ましくないし、XC60が目指すクオリティには及んでいない。是非とも一考を望みたい点だ。

ボルボ車ならではの卓越したユーティリティ
もうひとつ日本仕様車で残念なのは、ボルボが世界の先陣を切って採用したドアミラーの死角をカバーする「BLIS」が採用されていないこと。これも、日本固有のレギュレーションに基づいて採用された左ドアミラー下部に搭載のサイドビューカメラと、BLIS用検知部が両立できないことに起因するという。

こうして、この先にリファインして欲しい部分が皆無とは言えないまでも、インテリアの仕上がりがエクスリテア同様に魅力的であることに変わりない。XCというモデルのキャラクターを象徴する「X」の文字をシートバックやクッション部にモチーフとして用いたシートのデザインも、これまでのボルボ車には考えられない遊び心に溢れたもの。

そんなXC60の、フル4シーターモデルとしての居住空間にもちろん不満はない。SUVの常でフロア位置は少々高いものの、「トノカバーの下にゴルフバッグ4セットが横積み可能」というラゲッジスペースは、リアシートをアレンジし、さらにフロントのパッセンジャーシートバックを水平位置にまで前倒しすることで超長尺物の搭載も実現するというボルボ車ならではの特徴ももちろんしっかりと継承してくれた。

実用域での十分なパワーと使いやすさが特徴のエンジン
日本仕様車に搭載されるのは、ヨーロッパ市場ではシリーズ頂点のモデルに積まれる3Lのターボ付き6気筒エンジン。「直列6気筒のユニットを横置き」という世界的にも稀なレイアウトを採用する最大のメリットを、ボルボでは例によって「フロントクラッシャブルゾーンの確保に有利だから」と説明する。

ただし、そんな長いエンジンをさらにトランスミッションと直列配置するため、横方向に必要なスペースが増すことは避けられない。先に述べた「XC90とほとんど変わらぬ全幅」や5.8mと大きい最小回転半径には、そうしたパッケージングからくる固有の事情もあるわけだ。

走り始めてまず印象に残るのは、静粛性が予想していたよりもはるかに高いこと。とくに、外界のノイズから遮断される感覚は圧巻で、これがこのモデルの静けさの大きな要因になっている。ただし、テスト車はオプション設定の「ラミネーテッドガラス」を装着。パノラマルーフを含めたすべてのガラスに装備されたこのアイテムは、防音性と保安性に効果を発揮するというから、その分ここでは割り増しの評価ということになる。一方で、そんなラミネート処理を施されたサイドガラスを通しての風景にはわずかな像の歪みが発生。横方向の眺めに、わずかな違和感を覚える人がいるかも知れない。

そんなXC60の加速の印象は、必ずしも強力とは思えなかった。それでもいざ全力加速となれば0→100km/h加速を7.5秒でクリアするという実力ゆえ、日常シーンで不足を感じることは皆無だし、意識しない間に効果を発揮し始めるターボブーストにサポートされた加速感も悪くない。

先に静粛性を褒めたばかりだが、反面でアイドリング時からうなりを発するエアコン用コンプレッサーのノイズは意外に耳障りだ。音関係で言えば、なぜか左ドアスピーカーから発せられるナビゲーションの案内音声も、機能面からすれば疑問を感じさせられる。

ATのプログラミングが日本の街乗りシーンでもまったく不自然さをともなわないのは、古くからのボルボ各車に共通する美点のひとつ。シフトパドルの類はオプションとしても用意されないが、エンジンブレーキ力のコントロールなどを考えるとここも今後の検討課題だろう。18インチのサマーシューズ(テスト車はピレリPゼロ・ロッソ)自体は路面凹凸を細かく拾いがちだが、サスペンションの動きは滑らかだ。

ハンドリングは俊敏な感覚が控えめで、シャープな身のこなしを好む人には「これではちょっと物足りない」と思わせる可能性を否定することができないが、こうしてある種おっとりとした動きを感じさせるのが「ボルボの流儀」というべきセッティングなのかも知れない。

先進の「シティセーフティ」は時代を変える安全装備だ
ところで、そんなXC60で避けては通れない話題が、「衝突事故のおよそ75%が30km/h以下で発生し、その約半数は衝突の瞬間までまったくブレーキ操作をしていない」という自らの調査結果に基づいて採用となった「シティセーフティ」。

赤外線レーザーセンサーによって常に約6m前方をサーチし、30km/h以下で追突が避けられないと判断するとブレーキを自動的に作動させてそれを回避、または被害を軽減させるというその効用もさることながら、真に評価すべきはメーカーとインポーターが一体になってそれを許認可省に認めさせ、日本でも標準装備化を実現した点にある。

これがXC60の魅力度をさらに高めるアイテムであることは疑いない。さらに、「今後デビューの各車にも標準化」ということにでもなれば、それは今後のボルボというブランド力自体を大きく引き上げる、重要な原動力ともなるだろう。(文:河村康彦/写真:原田 淳)

ボルボ XC60 T6 SE AWD 主要諸元
●全長×全幅×全高:4625×1890×1715mm
●ホイールベース:2775mm
●車両重量:1930kg
●エンジン:直6DOHCターボ
●排気量:2953cc
●最高出力:210kW(285ps)/5600rpm
●最大トルク:400Nm/1500-4800rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●10・15モード燃費:7.8km/L
●タイヤサイズ:235/60R18
●車両価格:599万円(2009年当時)

[ アルバム : ボルボXC60 T6 SE AWD はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

3件
  • D4に乗ってます。
    このクルマとの相性はディーゼルが抜群に良いと思う。
    ボルボはディーゼルやめたのはもったいなかった。
  • 今見てもカッコいい!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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