見た目は普通でもエンジンは高性能
現代のクルマ選びでは「環境」と「安全」がキーワードになっている。しかし、かつてクルマはパフォーマンスが最重視されていた。とにかく強力なエンジンを載せてほしいという市場からの要求が確実にあった。そうしたニーズに応えるべく、ファミリーカーにさえスポーツエンジンを搭載することがあったのだ。そんな、スポーツエンジンを載せているとは思えない、懐かしいクルマを思い出してみることにしよう。
自動車のハイパワー化は悪だった「馬力規制で飛躍した昭和のクルマたち」
トヨタ・カローラフィールダー×2ZZ-GE
20世紀の最後、2000年にカロゴンの愛称で呼ばれていたカローラワゴンは「カローラフィールダー」と少々勇ましい名前に変わった。とはいえ、そのフロントマスクはカローラ(当時はアクシオのサブネームはなかった)と同じで、ファミリーワゴンといった雰囲気ではあった。
しかし、そのトップグレードには1.8リッターのスポーツツインカムエンジン「2ZZ-GE」と6速MTを組み合わせたパワートレインが設定されていたのだから驚く。2ZZ-GEエンジンといえば、のちにロータスにも供給されたほどのスポーツユニットで、ヤマハ発動機が開発・生産を担当したことでも知られている。その特徴は、可変バルブタイミング&可変リフト機構である「VVTL-i」を与えられていることだった。
6000rpmあたりを境にハイカムに切り替わると8000rpmまで気持ちよくふけ上がった。それがカローラのコクピットで味わえるのだから、このコンビネーションは意外性もあって注目を集めたものだ。
三菱シャリオ×4G63インタークーラーターボ
1990年代は、まだバブル景気の余韻が残って、イケイケの空気があった。そうした空気感の中で生まれたのが、三菱の最強エンジンともいえる「4G63インタークーラーターボ」を搭載したミニバン、シャリオ・リゾートランナーGTだ。
ハイトワゴン系シルエットのミニバンに、ランサーエボリューションのパワートレインをそのまま載せたといえる成り立ちの7シーターモデルは、ファミリーカー史上最強のポテンシャルを有しているといえるのではないだろうか。4速ATのほか5速MTも用意された、このシャリオ・エボと呼ぶに相応しいリゾートランナーGTは、探しても見つからないほどのレア車だが、ハイパワーミニバンというトレンドに先鞭をつけた存在だ。
日産プレーリーリバティ×SR20DET
「パパ・ママ リバティ」というCMコピーが記憶に残る日産のスライドドア・ミニバン、プレーリーリバティ(後期型はリバティ)は2リッターエンジンだけのグレード構成というラインナップ。1998年11月~2001年5月に販売されていた仕様では、その時代にからわかるように、言わずと知れた「SR20DE」ユニットを積んでいた(写真は標準モデル)。
もちろんDOHCヘッドで、レギュラーガソリン仕様ながら最高出力は140馬力を誇った。さらに最上級グレードとして用意された「ハイウェイスターGT4」にはハイオク仕様の『SR20DET』ターボエンジンを搭載。最高出力230馬力、最大トルク28.0kg-mというパフォーマンスは、スライドドアのミニバンには過剰と思えるが、駆動方式は4WDだけとするなど、しっかりとハイパワーを受け止めるシャシーとして鍛え上げていた。ちなみにトランスミッションは4速ATだった。
マツダMPV×L3-VDT
スポーツカーのテイストをミニバンにプラスするというトレンドの終着点ともいえるのが、マツダのスライドドア・ミニバン「MPV」だ。2006年2月デビュー当初の3代目モデルにラインナップされていた最強グレードとなる23Tに搭載されたのは、2.3リッターのガソリン直噴ターボ「MZR DISI」エンジンだった。エンジン型式では「L3-VDT」となるDISIターボの最高出力は245馬力、最大トルクは350Nmで、トランスミッションは6速AT。
サスペンションはフロントがストラット、リアはマルチリンクで、タイヤは215/55R18サイズとなっていた。デビュー時にマツダ自身が走りのメカニズムについて『スポーツカーの発想で革新した走りの性能と、ミニバンらしい室内スペースの両立』と説明していたが、まさしくスポーツカーとして生み出されたミニバンにふさわしい強心臓だった。いまやミニバンからは卒業してしまったマツダが、最後に残した隠れた名車だ。
ダイハツ・ストーリア×JC-DET
さて、最後に紹介するのはガチのモータースポーツ用マシン。リッターカーであるストーリアのボディに、713ccの「JC-DET」エンジンを与えたのが「ストーリアX4(クロスフォー)」だ。全日本ラリーやダートトライアルでの勝利を目指したモータースポーツベース車両である。
このエンジンは軽自動車のミラターボ・アバンツァートRに搭載されていた4気筒ツインカムターボ「JB-JL」エンジンをスープアップしたものだが、カタログスペックでは120馬力を発生していた。軽自動車の自主規制である64馬力の倍近い数値だ。さらにいえば、モータースポーツの現場ではブースト圧を高めることで、カタログ値を軽く凌駕するほどのパワーを絞り出していたという。
軽自動車用の4気筒エンジンをストロークアップしたJC-DETを誇示するように、化粧っ気のないストーリアの背景にクランクシャフトを置くというカタログ(といってもA4一枚)が用意されたことが印象深い。
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