2018年の発売以来、人気が沸騰している、スズキの小型オフローダー、ジムニー/ジムニーシエラ。
しかし、いまや日本のみならず、ジムニーシエラを「SUZUKI JIMNY」の名で販売している欧州でも人気が沸騰しており、コンパクトなボディサイズと特有のキャラクターで、高く評価されている。
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しかしながら、ハイブリッド仕様などを持たなかったジムニーは、2021年に強化されたCAFÉ規制の影響を受け、(欧州では)生産終了に追い込まれ、現在は在庫販売のみとなっている。
「欧州でのジムニーは、ここで終わってしまうのか…」と思いきや、スズキは、欧州にジムニーを残すため、2020年9月、欧州ジムニーを「2人乗りの小型商用車」としたのだ。
ハイブリッドや電動モデルのないジムニーの場合、多く売れるほど、CAFÉ規制によるCO2排出量の企業平均値を押し上げてしまう。2021年以降の規制値は、乗用車が95g/km、であるのに対し、商用車では147g/kmまで認められている。
欧州ジムニーのCO2排出量は138g/km(NEDC:欧州新燃費測定方法)。商用車基準であれば、何とかクリアするレベルだ。しかし、これは、あくまで暫定措置。
実は今回、欧州ジムニーが48Vマイルドハイブリッド化し、ふたたび販売されることが示唆されたのだ。
本稿ではこの欧州向けに商用車となった新モデルをご紹介するとともに、欧州ジムニーの電動化について、そして日本のジムニーシエラも電動化されるのか、考察していく。
文/吉川賢一 写真/SUZUKI
【画像ギャラリー】日本未導入!? 欧州で発売中の商用ジムニーとRAV4 PHEV OEM車 アクロスを見る
欧州ではむしろ大歓迎!? のジムニー商用車化
写真はCAFÉ規制を受けて2020年9月に登場したジムニーの2シーター商用仕様。1.5Lエンジン&5MTを採用
本格的なオフロード性能を求めるユーザーから絶大な支持を集める、スズキ ジムニー。欧州でもそれは同じで、本格的なオフローダーを手に入れようとすると高価格なモデルしかないなか、魅力的な価格で提供された欧州ジムニーは、瞬く間に人気車となった。
荒れ地や山、泥地、悪路など、ハードな使い方にも耐えられるラダーフレーム構造による耐久性の高さによって、「ちょっと特殊なユーザー」に熱狂的に好まれ、2019年は約8000台、2020年は1万台もが売れた。
さて、商用車化された欧州ジムニーは、「ちょっと特殊なユーザー」のニーズに特化するため、荷室はフラットなフロアとし、前席と荷室エリアの間には、巨大なパーティションを備えた。後席を排除したことで、車体の軽量化と、使い勝手が格段に向上。
商用ジムニーの定員は、従来型と違い、2人乗りとなった。荷室が広がり、863Lの大容量となった。後席を無くしたことにより、軽量化と使い勝手が良くなった
荷室は、863Lの大容量となり、乗用車モデルの後席を倒したときよりも33Lも広がった。ちなみに、ラダーフレーム構造や、リンクリジッドアクスルサス、パートタイム4WDなどの主要アイテムは、乗用車モデルのままだ。
スズキとしては「苦肉の策」であっただろうが、ユーザーによっては、むしろ大歓迎の「商用車化」だったかもしれない。
いよいよジムニーも電動化!! 欧州に続き、国内モデルも!?
欧州地域で販売されているスイフトスポーツハイブリッド。48Vマイルドハイブリッドが標準搭載されている
ハイブリッドシステムに関しては、現時点スズキが国内モデルで採用しているのは、12Vマイルドハイブリッドのシステムのみ。しかし実は、欧州地域で販売されているスイフトスポーツには、48Vマイルドハイブリッド(HV)が標準搭載されている。
スイフトスポーツ マイルドHVに採用されている、1.4L直4ブースタージェットターボエンジン(K14D型)と6速MTとを組み合わせた新型のパワーユニットは、最新の排ガス基準「EURO6d」に対応する環境型エンジンだ。最高出力は129ps(95kW)/5500rpm、最大トルクは235Nm/2000rpmを発揮。
さらに、モーター「IGS」は最高出力13ps(10kW)を発生。12Vマイルドハイブリッドのモーター出力は2.3kWなので、およそ5倍のパワーアップがなされたことになる。
これにより、発進時には力強い加速が可能となり、WLTP複合条件でのCO2排出量は127g/km、燃費は5.7L/100km(≒17.5km/L)だ。この48Vマイルドハイブリッドシステムが、ジムニーにも採用される、ということであろう。
スズキアクロスは、トヨタRAV4 PHVのOEM車である。2020年7月に欧州スズキとトヨタとの業務提携の一環として誕生した
このパワートレインがジムニーにつけば、CO2排出量の基準値(商用車)をさらに過達することになり、スズキにとっては嬉しいことになる。現時点、CAFÉ規制基準値の達成目途があるのは、世界的に見てもトヨタのみ。
スズキの戦略としては、このように48Vマイルドハイブリッドモデルを順次増やしながら、トヨタからOEMによってストロングハイブリッド車を販売していく計画であろう。
欧州ジムニーが生産されているのは、スズキの主力工場でもある静岡県の湖西工場ただひとつ。ここで、ジムニー/ジムニーシエラが同じラインで製造され、日本国内はじめ、世界へ輸出されていく。
同じ工場、同じラインで製造されているのに、日本向けのジムニーシエラと、欧州ジムニーで、エンジンをわけることは、大いに無駄。ということは、国内ジムニーシエラも、早いタイミングで48Vのマイルドハイブリッドに切り替わる、という予想ができる。
2020年まで販売されていた欧州仕様のジムニー。ジムニーシエラと同じ製造ラインで生産されているため、将来的には日本仕様も48Vマイルドハイブリッド搭載になる可能性は高い
そして、将来的には、欧州ジムニー(=ジムニーシエラ)は、トヨタ ヤリスハイブリッド用の1.5L直列3気筒エンジンのTHS-IIを積むのではないか、と筆者は予想している。
ヤリスハイブリッド(欧州仕様車)は、NEDC(新欧州サイクル)が複合モード燃費34.5km/L、CO2排出量64g/km、WLTPだと複合モード燃費27km/L、CO2排出量85g/kmと公表されている。
この数値は驚異的だ。スズキとしても、喉から手が出るほどに欲しいユニットだろう。こんなジムニーが誕生すれば、ジムニー人気がさらに加速するのは間違いない。
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