快適だった季節も終わり、そろそろエアコンが活躍する季節。それにしてもエアコンって、吹き出し口切り替えやら内気循環やらボタンが多くないか。しかしそれには訳がある。夏冬のエアコンの賢い使い方とともに、エアコンのボタンがなくならない訳をお教えしよう!
文/高根英幸、写真/Adobestock、ベストカーWeb編集部
外気導入とか吹き出し切替とか全自動でいいじゃん! エアコンの物理ボタンはなんでなくならないの?
■タッチスクリーンに統合しちゃってもいいと思うのだが
タッチスクリーンの普及が進んだ現在でも、エアコン操作は物理スイッチが多い
今やクルマにエアコンは必須の装備だし、軽自動車にもオートエアコンが当たり前の時代だ。
でもオートエアコンというわりには、いまだに設定温度や風量変更、吹き出し口の切り替え、内気循環といったスイッチがインパネには雑然と並んでいることが多い。「オートエアコンなんだからスイッチをなくすか、タッチパネルとかに統合しちゃえばいいのに……」とお思いの諸兄も少なくないだろう。
その点はメーカーもとっくに承知していて、タッチパネルで操作することも技術的には可能だ。今やディスプレイオーディオが標準化しつつあり、そこでクルマの情報や仕様の設定を切り替えることもできる。エアコンの操作を組み込むこともできるけど、実際にはやらないメーカーが大半なのである。
それはなぜか? 大型モニターであらゆる装備を集中制御することは技術的には可能だが、故障した時にはお手上げ、何も利用することができなくなってしまう可能性が高いからだ。
物理スイッチは耐久試験ができるが、液晶では耐久試験を行なっても、寿命が計りにくい。液晶やメモリなどの半導体は徐々に磨耗したりするのではなく、壊れるときは一気に機能不全に陥るからだ。
部品の寿命が来た場合、スイッチならそれを交換するだけで済むが、液晶モニターはユニットごとの交換になるため高価となるし、15年程度経過したクルマであれば交換部品の供給も終了してしまう。そうなったらエアコンが修理できないために廃車となってしまう可能性すら出てくる。
たとえばテスラのモデルSは、マルチメディアカードのメモリ不足によって書き込み回数の上限が想定より早く訪れてしまい、ダッシュセンターの大型タッチスクリーンによる制御が一切できなくなるというトラブルが発生したことがある(すでにリコール対策済み)。
これは極端な例だが、大型モニターで制御するのはカーナビやオーディオなど、走行や快適性に直接影響のない領域だけにすべき。そう考えるメーカーが多いから、オートエアコンには今もたくさんの物理スイッチが採用されているのだ。
■エアコンを賢く利用する方法とは
ドアをバタバタと開け閉めして空気を追い出すという方法もあるが、車体にダメージが蓄積するし、周囲への安全や騒音にも気を配らなければならないので避けたほうが無難
エアコンは普通に使用しても、車内を快適な温度に保ったり、ウインドウ内側の曇りを防いでくれる。けれども猛暑の時や厳寒時、湿度が高く窓の曇りを急いで解消したい時には、使い方を工夫するとより効率的になる。
まずは真夏、日光の下で駐車しておくと30分も経てば車内は蒸し風呂状態になる。これを素早く冷やすには、車内の空気を早く入れ替えることと、高温になっている内装材を冷やしてやることが効果的だ。
エンジンを始動させてエアコンを作動させ、まずは外気導入で冷房を最強にしてエアコンシステム内を冷却する。ダクト内も温められてしまっているため、冷風にしても吹き出す空気は生暖かい。この状態でドア、あるいはウインドウを全開にして、室内の熱い空気も追い出すのだ。
ちなみに対角線となる窓(前席右と後席左など)を開けて、窓の閉まっているドアをバタバタと開け閉めして空気を追い出すという方法もある。しかしドアを開け閉めできるスペースがある場合に限られるし、周囲への騒音、ドアやガラスへのダメージを考えるとあまりお勧めはできない。
エアコンの冷風が冷えてきたら、前席の窓を閉めて後席の方に冷風が流れるようにすると、前席のシートや室内全体が冷えやすい。後席に乗員がいないなら、この状態でドアを閉めて、走り出してもいい。
エアコンのコンプレッサーはエンジン回転によって稼働率が変わるし、冷媒を冷やすコンデンサーも走行風を当てた方が効率が高まるので、アイドリングで停車しているよりも冷房は強く効くのだ。
こうした作業が面倒なら、外気導入にしていきなり走り出してもいいが、ステアリングやシートが熱いままだと不快だし、万一運転に支障が出れば危険でもある。
■暖房を早く効かせたいならエアコンはオフに
厳寒時に素早く暖房を効かせたいなら、エアコンのコンプレッサーはオフにしておく(EdNurg@AdobeStock)
いっぽう厳寒時に暖房を早く効かせたいなら、まずはエアコンのコンプレッサーはオフにしておくこと。エアコンを作動させると最初に空気を冷やしてしまうので、十分な暖房となりにくいからだ。
数十秒から数分で温風が出るようになるので、足元やお腹周りなどに暖房を送れば寒さを感じにくくなる。そこで窓が曇ってきたら初めてエアコンを入れるようにすれば、視界も確保される。
山間地帯などを走っていると、外気温が低下して急に窓が曇り始めることがある。こうした時にはデフロスターモード(ウインドウの付け根から風が出る設定)の出番だ。
ウインドウのマークに吹き出し口を選択すると、ダッシュボード前端からフロントウインドウに向かって風が出て、エアコンを使用していればあっという間に曇りが解消される。
ちなみに国産車の場合、デフロスターを選択すると、温度設定した温風や冷風がそのまま吹き出されることが多い。暖房時にデフロスターから温風が出ると、ドライバーの顔に当たって頭がノボせてしまうことがある。
欧州車はこれを防ぐため、設定温度に関わらずデフロスターからは冷風しか出ないような設計になっている場合が多い。さらに欧州車の場合は、デフロスターモードにすると送風が全開になるクルマもある。取扱説明書を読んで、自分のクルマの曇り解消機能を知っておくと安全だ。
外気温や湿度、風量などの条件によっては、ヒーターによる温風で窓の曇りを除去することもできる。しかしエアコン標準装備が当たり前となった現在、冬場に窓が曇った際はエアコンを使って曇りを取るのが基本だと覚えておこう。
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今欲しい風、今欲しい冷気!オートには俺の気持ちがわからない、だからオートは嫌いだ。