初心者も多く基礎から学べるドラテクレッスン
FIAおよびJAF Women in Motorsport(ウイメン イン モータースポーツ)と連携したイベント、WOMEN IN MOTORSPORT DAYが、5月12日(土)・13日(日)に静岡県・富士スピードウェイで開催された。
ドライビングレッスンは両日とも開催され、12日は女性のみを対象としたドライビングレッスン、13日は男女を対象としたジムカーナレッスンが行われた。今回は13日のジムカーナレッスンを体験してきたので、その様子をリポートしたい。
まずはFIA Women in Motorsportアジア代表委員で、JAF Women in Motorsportアンバサダの井原慶子さんによる座学からスタート。
タイヤのグリップ性能やブレーキングについて、「直進のときとハンドルを切ったときではグリップの限界値が変わることや、アンダーステアが出る感覚などを覚えてほしいですね。急制動ではブレーキペダルが折れるのでは? と思うぐらい思い切り踏んでみて下さい。」と井原さん。また、「運転は全て自己責任なので緊張を伴いますが、だからこそ上手く走れたときに達成感が得られます」とコメントした。
そしてコース説明を受けた後、いよいよ実技がスタート。参加者は3つのグループに分かれてスラローム、定常円、急制動などが体験できるプログラムを順に体験。今回のレッスンではマーチやノートのニスモ仕様やマツダ・ロードスターなどの教習車も用意され、自分のクルマで走ることも、レンタルすることも可能だった。ちなみに午前のプログラムは、教習車でチャレンジすることにした。
初めてジムカーナに挑戦するため少々不安だったが、今回講師を務めていた元全日本ジムカーナチャンピオンの猪爪俊之さんにドライビングポジションから教えていただけることに。コースなども丁寧に教えていただき、初心者の私でも安心して走ることができた。
スラロームを体験してみると、速さのコントロールが想像以上に難しかった。回を追うごとに徐々に感覚はつかめてきたものの、失敗を恐れてあまりスピードを出せなかったのが反省点。
午後はいよいよジムカーナコースでの走行となる。まずはコースを覚えるための完熟歩行をした後、コース確認を含め1人3回ずつ走行した。スラロームや8の字、急制動を含んだ、午前体験したコースを組み合わせたようなコースであったため、前半のプログラムで学んだことを試すにはピッタリのレイアウト。ここでは自分のクルマに乗りかえ、成果を発揮するために全力でアタック!!
やはりクルマを操ることの難しさを感じたのは、コーナリングやスラロームなどのハンドルを切るとき。スピードを出しすぎると曲がらなかったり、タイヤが滑ったりしてしまうが、躊躇しすぎると速くは走れない。クルマの限界を知ることがタイムを縮めるためにはとても重要であり、このようなイベントはそれを学ぶいい機会だと感じた。この経験は街乗りにも生かすことができそうだ。ちなみにタイム計測も行われるため自分のレベルを把握でき、次回の目標も設定しやすいのが嬉しい。
1日を通して、最初はできなかったことが午後にはできるようになって喜びを感じることができ、さらに今の自分の課題も見つけることができた。もっと走りたいと思えるようなプログラムだったので、あっという間の1日だった。
最後は希望者を対象に、講師の運転による同乗走行も! ジムカーナに参戦する飯島克子さんの助手席でプロの走りを体験させていただいたのだが、スピード感やハンドルの切り方、ペダルの使い方など自分の運転とは異次元の走りにただただ圧倒されるばかり。クルマの性能を最大限使ってコースを走ったときの挙動を体感することができ、とても勉強になった。やはりモータースポーツの世界で活躍する女性は格好良い!!
モータースポーツに参加したいと思ってくれる人を増やしたい!
ドライビングレッスン終了後、井原慶子さんにWomen in Motorsportの活動について詳しくお話を伺った。
──Women in Motorsportのイベントは、今回で何回目ですか?
「3回目です。1回目はイオンモール常滑のオープンイベントとして女性だけのカート大会を開催しました。そのときはFIA国際自動車連盟のWomen in Motorsportの議長であるミッシェル・ムートンさんも来日されました。2回目は昨年のL1レースです。女性向けのドライビングレッスンを同時開催しました。2014年まではライセンスホルダーが減る傾向でしたが、JAFがWomen in Motorsportの活動を始めてから毎年ライセンスホルダーが増えていて、それに伴いモータースポーツ参加者も増えています」
「ですが、そういった方々がさまざまな競技に出るようになると、女性は危ないと言われたり、まわりからの理解が得られず参加するのが嫌だと思ってしまう方もいらっしゃいます。そこで女性だからダメだと言われないのは女性だけのレースだと考えました。そしてWOMEN IN MOTORSPORT DAYとして、女性だけのレースやラリーを開催しながらライセンスを取得したり、クルマには興味があるがどうやって参加したらいいかわからないといった人たちに機会を作ろうといった試みが今回のイベントなのです」
──今まで延べ何名ぐらいの方が参加されたのですか?
「950名ぐらいです。18歳から68歳の方まで応募がありました」
──モータースポーツ経験者の方だけでなく、初心者の方もいましたか?
「半分以上が初心者で、これからライセンスを取ろうとしている方ですね」
──それでライセンスが取れるオートテストなども併催し、一緒に楽しくやりましょうということですね。
「そうですね。応募者の履歴書にはだいたい同じことか書いてあり、元々クルマには興味があったが、子育てが忙しかった、会社に反対された、家族に反対されたなど色々な事情があって挑戦できなかったというもの。Women in Motorsportであれば同じような方が集まるので、参加しやすいと思います。またライセンスはどのように取得すればいいかわからない、どういった装備品が必要なのかもわからないといった段階でも少しずつ始められるので、多くの方が参加してくださっています」
──参加された方はその後も自分でモータースポーツなどに参加していますか?
「はい、そういった方がすごく増えています。一度参加された方にはモータースポーツに関する情報をお知らせしています。Women in Motorsport Projectのメンバーは現在1期生~4期生までいますが、全国に散らばっているので、メンバー同士で誘い合って各競技に参加したりしていますね。またレースだけでなくラリーのオフィシャル(公認審判員)、自動車メーカーやタイヤメーカーのエンジニア、自動車の研究所に就職した方などもいて、さまざまな職種で活躍しています」
──訓練生などではなく、未経験者が今回のようなドライビングレッスンに参加した反響はありましたか?
「普通運転免許しか持っていない初心者の方も、やってみたら自分にも乗れることがわかったので競技に参加してみようとか、友達同士でラリーに参加しようという方が増えました。私自身も初めはクルマにまったく興味がなかったのですが、クルマに関わってみたらすごく楽しかったという経験があります。音、スピード、緊張感などは実際に参加しないとわからないので。初心者の心をつかむ要素がモータースポーツにはあると思います」
──今後はどういう人を増やしていきたいですか?
「このWOMEN IN MOTORSPORT DAYの受講者でJAF公認競技、公認レースに出場して3位以内に入った方は約300人います。そういった方が増えてきたので、これからも初心者の方を含めた多くの方を応援していきたいです。1人のトップドライバーを育てるのではなく、グラスルーツの層をもっと厚くしていきたい。層を厚くすれば天才だって出てくると思うので、そういう人にはWEC、F1、WRCなどで活躍してほしいですね」
「またドライバーだけでなく、オフィシャルやメカニックが少ないのが日本の現状です。オフィシャルがいないと競技は成り立たないですし、ただの労働力ではありません。モータースポーツに貢献したいとか、レースに立ち会えて嬉しいとか、そういった生きがいを日本の文化の中でも増やしていきたいです。生きがいを職業にできるきっかけを、レーサーのみならず増やすことが理想です」
──今後この活動を通してやってみたいことを教えて下さい。
「やはりマツダが広めてくださったこのプロジェクトを、たくさんのメーカーや自動車産業に関わる方、メディアの方々にも協力していただいているので、女性が活躍できることが普通になっていってほしいです。あとは女性だけのチームでスーパー耐久というレースに参戦し、入賞できるようになってきたので、いつかル・マン24時間レースに出場することが夢ですね」
富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久の24時間レースにも、女性ドライバー6名で参戦されたとのこと。Women in Motorsportの活動は今後も勢いを増していきそうだ。
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