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ロータリーによる再発明 マツダMX-30 R-EVへ英国試乗 幅広い人の選択肢へ加える価値アリ

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ロータリーによる再発明 マツダMX-30 R-EVへ英国試乗 幅広い人の選択肢へ加える価値アリ

830ccのロータリーエンジンは発電機

マツダMX-30 EVの弱点といえたのが、カタログ値でも199kmしかない航続距離だった。英国編集部での全体的な評価は低くなかったものの、控えめな動力性能と相まって、都市部を超えた利用が難しいことは明らかだった。

【画像】ロータリーエンジンによる再発明 マツダMX-30 R-EV 競合クラスのクロスオーバーと比較 全143枚

そんな、セカンドカー的な位置づけの解決手段として選ばれたのが、発電機として稼働する830ccのロータリーエンジン。シリーズ式ハイブリッドへ改められたといえ、従来の純粋なバッテリーEV版も並行して店頭に並ぶ。

駆動用バッテリーの容量は17.8kWhで、駆動用モーターがフロントアクスルを動かす。1度の充電と給油で、650km程度は走れるという。価格は、英国では比較的お手頃といえる3万1250ポンド(約565万円)からに設定された。

ボディサイズは従来と変わらず、全長が4395mm、全幅が1795mmで、全高は1555mm。スタイリングは、マツダCX-30の「魂動デザイン」からの自然な発展形として描き出されたという。

トヨタC-HRより落ち着いているが、しっかりマツダらしい個性が備わる。観音開きのサイドドアが大きな特長で、背が高めのスクエアなプロポーションに、存在感のあるフロントとリアの表情が与えられている。

アルミホイールは、18インチが標準。お高めのグレードを選ぶと、ダイヤモンドカット仕上げになる。それでも、R-EVのエンブレムを見なければ、これまでのEV版と見分けはつかないだろう。

試乗車はセラミック・グレーに塗られ、ルーフとドアミラーはブラックでコーディネートされていた。オプションではあるが。

高級感が漂い好印象なインテリア

インテリアはミニマリズムが意識されているが、エアコンやオーディオなどに、実際に押せるハードスイッチも残されている。ステアリングホイールもシンプルで上品だ。

インフォテインメント・システムは、設計に優れ直感的。ラジオ選曲などにも対応する、ロータリーダイヤルが備わる点もうれしい。タッチモニターは7.0インチと、近年のモデルとしては小さめ。

シフトレバーの奥、低い位置にもタッチモニターが据えられる。ここでもエアコンなどの操作は可能だが、両側に並ぶハードスイッチの方が手っ取り早いかもしれない。

内装には高級感が漂う。センターコンソールにはコルクが貼られ、普段は手に触れないような場所でも、しっかり素材は選ばれている。ボタン類のタッチは上質で、パワーウインドウは殆ど無音で開閉する。

シートも上質で好ましい。持続可能性へ配慮した素材を用いているという。クッションは硬めで、横方向のサポート性は今ひとつ。長距離は疲れるかもしれない。

観音開きのドアを開き、リアシートへ座ってみると、前後長は充分。身長が190cmを超える筆者の場合、少し身をかがめないと天井に頭が触れてしまった。

試乗車はミドルグレードのエクスクルーシブ・ライン。パーキングセンサーにトルクベクタリング機能、パワーシートなどが備わる。

1つ下のプライム・ラインが装備も充実し、英国仕様のベストチョイスかもしれない。ヘッドアップ・ディスプレイにブラインドスポット・モニター、アップルカープレイ、バックカメラなどが備わる。

印象的な60km/hから110km/hまでの加速

英国の一般道を走らせてみると、注意深く耳を傾けない限り、シリーズ式ハイブリッドの働きを感じ取ることは難しい。駆動用モーターは170psと26.3kg-mを発揮し、数字として目立つものではないものの、流れの速い道でも不満を感じさせることはない。

印象的だったのが、60km/hから110km/hまでの加速。内燃エンジンと電気モーターが協働しているとは思えないほど、スムーズに走ってみせた。

ドライブモードには、チャージ、ノーマル、EVの3種類がある。チャージ・モードでは駆動用バッテリーを温存し、ロータリーエンジンを積極的に回して充電量を保てる。

ノーマル・モード時は、駆動用バッテリーの充電量が43%を下回るか、アクセルペダルを深く踏み込まない限り、エンジンは始動しない。バッテリーEVのように静かに走る。

充電量が減ると、40km/h程度の低速でもエンジンは始動する。それまでの車内が静かなだけに、電気ドリルのような音が少し目立っていた。主に、2300rpmから4500rpmの間で回転するようだ。

EVモードは、充電量が尽きるまで電気の力だけで走る。車内は静かで、高速道路でもタイヤの転がり音が聞こえてくる程度。その後は、エンジンが介入する。

燃費は、郊外や都市部などを複合的に160kmほど運転した状況で、平均17.0km/L。電費は6.1km/kWhと、悪くない数字が得られた。ちなみにカタログ値は、100.0km/Lがうたわれる。

快適性は同クラスのレクサスUXへ並ぶ

アクセルペダルは適度な重み付けで、ブレーキペダルの反応は漸進的。ステアリングホイールの反応に若干の癖があるものの、慣れれば望んだ通りにMX-30 R-EVを操れる。

マツダらしいのが、ワインディングを爽快に走りたいと思わせる、運転の楽しさが備わること。多くのクロスオーバーとは一線を画す。

サスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット式で、リアがマルチリンク式。英国のように荒れた路面でも、巧みに衝撃がなだめられていた。ボディロールは少し大きめといえるが、快適性でいえば同クラスのレクサスUXへ並ぶだろう。

ただし、ステアリングホイールへ伝わる感触は薄い。エコタイヤの影響か、湿った路面ではアンダーステアも強くなるようだった。

確かに、低速域で洗練性に水を差すロータリーエンジンのノイズや、淡白なステアリングフィールなど、MX-30 R-EVで気になる点はゼロではない。それでも、完成度の高いパッケージングだといえる。

一度の給油で走れる距離が長く、クロスオーバーというクルマを楽しむ範囲にも余裕が生まれている。幅広い人の選択肢へ加える価値があると、お伝えできるようになった。

運転する時間が長くなるほど、魅力的に思えてくる。スタイリングは美しく、インテリアの品質も高い。パワートレインも、充分に魅力的だといえる。本当に優れたクルマとして、MX-30が再発明されたといっていいだろう。

◯:ハードスイッチが残る好印象なインテリア 運転を楽しめる操縦性 他にはないドライブトレイン
△:狭い空間では観音開きは乗りにくい 競合モデルに劣るエネルギー効率 低速域で少し目立つエンジンノイズ

マツダMX-30 R-EV エクスクルーシブ・ライン(欧州仕様)のスペック

英国価格:3万3150ポンド(約600万円)
全長:4395mm
全幅:1795mm
全高:1555mm
最高速度:140km/h
0-100km/h加速:9.1秒
燃費:100.0km/L
CO2排出量:21g/km
車両重量:1780kg
パワートレイン:永久磁石モーター+シングルローター830cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:17.8kWh
最高出力:170ps
最大トルク:26.3kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

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みんなのコメント

18件
  • furima-jirosan
    今から25年も前(1998年)に一人のモータージャーナリストが
    「ハイブリッドの考え方・電動モーターとロータリーエンジンの組み合わせ」
    と題するコラムを「自動車ジャーナル・わ」という専門誌で発表しました。

    当時話題となった世界初のハイブリッド車トヨタプリウスを題材に、発電用の
    レシプロエンジンをコンパクトで振動が少なくかつ回転が滑らかなREに置き
    換えるという構想、一方低速トルクに難のあるREを電気モーターによる駆動で
    補完するという構想を、このMX30R-EVが世に出る25年も前に考えていた方が
    いらっしゃったとは驚きです。

    しかも氏が提唱したそのRE-HVのエンジン構想図面には、発電用として何と
    1ローターのREが描かれておりました。
    これはまさしくMX-30R-EVの基本メカニズムそのもの!

    この執筆者殿がこのMX-30R-EVをご覧になったら、果たしてどんなご感想を
    持たれたことでしょうか…
  • ine
    温暖化に対して何かしたいけれど、BEVでは渋滞などでストレスを感じそう、と手が出なかった方に向けて今のマツダの最適解だと感じます。
    充電80%と考えても普通充電を自然エネルギー由来で行えばサステナに貢献できるし、急用で遠くに出かける必要があるときにもバッテリー残量を気にせずに安心してロータリー頼りで出掛けられます。
    この安心感と環境への配慮を両立している点は評価に値すると思います。

    マイルドハイブリッドMX-30を3年間乗り、この12月にロータリーEVが納車され入れ替え予定です。かなり楽しみにしています。自宅に普通充電設備も備えました。
    残念なのは発表後3年を迎えるMX-30として、目新しい改良点がほぼ無いことです。
    せめてセンターモニターを8.8インチにしてスマホやUSBメモリーを接続する端子をタイプCにして欲しかったです。ロータリーに触発されたボディカラーがあっても良かった。でも楽しみです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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