長い間、日本でもっとも熱い心を持つファンに愛されていると言われていた自動車メーカーは、日産だった。
ここ最近「熱心なファン」というとスバルやマツダのイメージが強いが、それでもクラシックカーのイベントを覗くと、スカイラインやフェアレディZに代表される日産車が数多く参加している。旧車系のイベントによっては日産車の割合が50%を超えることも珍しくはない。
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そのいっぽうで、ここ最近「ブランド復活」が日本新車市場でひとつのトレンドを形成している。トヨタはスープラを復活させたし、ホンダもインサイトを再登場させた。
だからこそ強く思う。ブランドや車名を復活させるなら、日産こそやってくれないか、と。
デトロイトショーのプレスカンファレンスでトヨタの豊田章男社長が高らかに「Supra is back!!(スープラが帰ってきた!!)」と宣言した。日産もぜひ、今こそ「Back!!」を宣言してほしい。
以下、そんな今こそ復活を検討してほしい車種を選んでみました。
文:片岡英明
■テラノ 1986~2002年
タフなダットサントラックのメカニズムを用いた都会派のSUVがテラノだ。1986年に登場したが、メカニズムだけでなくカリフォルニア発信の粋なデザインも話題をまいている。
ストレート基調の力強いフォルムの2ドアステーションワゴンで、3年後には4ドアモデルも登場した。
パワーユニットも多彩だ。ディーゼルターボに加え、上質なパワーフィールのV6エンジンも設定している。初代モデルは副変速機付きのパートタイム4WDだった。
その2代目は1995年に登場し、駆動方式は電子制御トルクスプリット4WDのオールモード4×4に進化している。エクストレイルの販売が好調だったため、日本では2002年8月に生産を終了した。
が、いまやプレミアム志向のクロスオーバーSUVが人気だからテラノを復活すればヒット作になるだろう。不安定なイギリス工場をたたみ、新世代のテラノを日本で生産するのである。エクストレイルの上級仕様として設定し、ノートやセレナで大成功しているe-POWERを搭載すれば、地球にもやさしいSUVが誕生するはずだ。
■ラシーン 1994~2000年
1993年の東京モーターショーにプロトタイプが出品され、絶大な人気を集めて市販されることとなったラシーン。スクエアなボディとクロスカントリー風な味付け、サニーベースのコンパクトサイズながら全車4WDで背面タイヤやグリルガードを装着するグレードが用意されるなど、独特な存在感で現在でも根強いファンを持っている。
いまならユニセックスなイメージと素材感がにじむデザイン、そこはかとなく香る「無印良品っぽさ」が若者にうけるはず。
なにしろ世界的なクロスオーバーSUVブームだけに、海外でのヒットも狙える。ラシーンの新車価格は1999年時点の最廉価グレードで169万7000円(1.5L、5MT)。これ、このまま復刻すればかなり売れると思います。
■レパード 1980~1999年
プレミアムスペシャルティカーの先駆けとなったレパードは1980年秋に登場した。初代は個性的なデザインの2ドア&4ドアハードトップで、兄弟車のレパードTR-X(トライエックス)も発売されている。ラグジュアリーな仕立てのインテリアも自慢だ。ドライブコンピューターなどをいち早く採用し、オートレベライザーなど、メカニズムも凝っていた。その後、数奇な運命をたどり、2代目は2ドアクーペに、3代目ではJフェリーを名乗って個性的な4ドアセダンとなる。
が、Jフェリーは日産ファンからも敬遠され、販売は低迷した。そこで4代目レパードは、再びプレミアムスポーツセダンの路線へと舵を切っている。今、中古車市場では2代目のF31レパードが人気だ。500万円を超える販売価格を付ける中古車さえある。だから復活させる意味はあると思う。
だが、多くのファンを取り込むには流行りの4ドアクーペがいい。ベンツ製のプラットフォームに上質な直列6気筒、そして翔んだデザインなら目をひくはずだ。
■プリメーラ 1990~2008年
プリメーラはバブル真っ只中の1990年にデビューした。日本だけでなくヨーロッパ市場もターゲットにしたスポーティ指向のファミリーカーで、気持ちいい走りにこだわっている。
プリメーラは、スペイン語で第一級の意味だ。その車名のように新しいパッケージングを提案し、走りなどの実力も際立って高かった。2代目はキープコンセプトだったが、2001年に登場した3代目ではデザインを大きく変えている。歴代のプリメーラは廉価モデルでも気持ちいい走りを見せ、走行性能だけでなく快適性も高いレベルにあった。
この感動を再び味わいたい、と思っているファンは少なくないはずだ。プリメーラは革新的なセダンとワゴンだったから、新世代のプリメーラには洗練されたデザインと痛快な走りを期待したい。となるとリーフの上級に位置するプレミアムEVというポジションが最適だろう。
テスラのような刺激的な走り、ヨーロッパ車のような軽快なハンドリング、どの席でも快適なパッケージングと仕立てのよさを売りにする上質なスポーツセダンを期待したい。
■サニー 1966~2004年
カローラとともに日本のモータリゼーションを牽引したジャストサイズのファミリーカーがサニーだ。
初代が誕生したのは1966年春だった。1981年10月には日産のFF化計画の第2弾として5代目のB11サニーがFF車になっている。これに続く6代目は「トラッドサニー」のニックネームで愛された。4ドアセダンが主役だが、ファッショナブルな3ドアのクーペとワゴンのカリフォルニアも多くの人に愛されている。だが、日本では10代目の登場を待つことなく2004年に生産を打ち切った。
1000万台を超える生産を記録し、37年も売っていたのだから、ティーダは知らなくてもサニーを知っている日本人は多い。子供の頃、サニーと一緒に撮った写真をアルバムに保存している人もいるはずだ。愛着という点ではカローラに勝るとも劣らない日本人好みのファミリーカーなのである。
コンパクトサイズのセダンとワゴンを設定してサニーと名付けて発売すれば、団塊の世代を中心にヒットするのではないか。日産が推し進める安全技術パッケージの「プロパイロット」も、この世代に普及してこそ真価を発揮するはず。
車格はノートと同格だから、こちらもe-POWERを搭載すれば文句はでないだろう。最新のプラットフォームを採用すれば、上質な走りも期待できる。電子制御4WDを採用したワゴンのカリフォルニアも復活させてほしい。
■シルビア 1965~2002年
鼻先が軽い4気筒エンジンを積んで小気味よい走りを見せたスペシャルティカーがシルビアだ。誕生したのは1965年で、初代モデルは「クリスプカット」と呼ばれた美しいデザインを持ち、フェアレディと兄弟関係にあった。
多くの人がイメージしているシルビアは5代目のS13だろう。走りの実力だけでなく、デザインもエレガントかつスポーティである。研ぎ澄まされたファッション感覚とセンスのよさが受け、今もファンが多い。2ドアクーペだけでなく爽快なコンバーチブルも魅力的だった。
2002年、7代目のS15を最後にシルビアは姿を消している。が、日産がファンの期待に応えないクルマづくりをしている今、復活を望む声が大きくなってきた。現代はスポーツモデルであっても主役はFF車である。だが、操って楽しいのは後輪駆動のFR車だ。トヨタの86マツダのロードスターも後輪駆動だから人気がある。シルビアがFRスポークーペとして再登場すればハンドリングにこだわるクルマ好きは飛びつくだろう。ポイントは安さだ。
20年前の1999年、シルビアは最高級グレードの「スペックR」でも2Lターボデ256万円(6MT)だった。安全技術や走行安定性を考えると、そんな簡単な話ではないと重々承知ではあるが、なんとかこのくらいで出してほしい。
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